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中国料理TOPへ好吃(ハオチー)!中国料理! コラム一覧へ
連載コラム 好吃(ハオチー)!中国料理!
北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
すいかゼリーのアンズ風味
杏露西瓜凍


すいかゼリーのアンズ風味

   
   前回に続いて瓜を食べる話である。
   瓜類の多くは、夏に最盛期を迎えるが、亜熱帯性気候の中国南部では春節の
胡蘆瓜
胡蘆瓜。日本では干瓢(カンピョウ)の原料となる丸ユウガオの変種。
広東省東莞市で94年撮影。
頃から晩秋近くまで出回わる。主なものに、冬瓜(トウガン)、節瓜(早生のトウガン)、黄瓜(キュウリ)、老黄瓜(完熟したキュウリ)、苦瓜(ニガウリ)、絲瓜(ヘチマ)、越瓜(シロウリ)、南瓜(カボチャ)、佛手瓜(ハヤトウリ)、胡蘆瓜(ヒョウタンの一種)などのほか、生食が中心の西瓜(スイカ)、甜瓜(マクワウリ)、哈蜜瓜(ハミウリ)などがある。中国の人々が瓜類を好んで食べる理由は、単に旬のもの、素材の美味しさだけでなく、医食同源の考え方に基づいた食療(食養生)の功能を求めるからである。特に、暑さが厳しく、湿度の高い広東、香港、台湾では、熱気に負けないように体内の水分を調整する、いわゆる暑気払いの食べ物として人口に膾炙している。

冬瓜
冬瓜。若いうちは表皮に産毛が生えているが、完熟すると真っ白な粉を吹く。
東莞で94年撮影。
   例えば、冬瓜には「消暑散熱」、「利尿止渇」の作用があり、その成分はほとんどが水分で、ダイエットにもお奨めの食材といえる。苦瓜は「清熱解渇」があり、熱毒病症に効果があるといわれる。栄養成分では、特にビタミンCが豊富とされる。広東では、気候の変化に応じて体調を整えるためのものとしてポウ湯(薬膳スープ)が食卓に欠かせないが、夏は瓜類を加えて作るものが少なくない。このように昔から瓜類は中国人の健康増進に一役買ってきたといえよう。
   話は逸れるが、ポウ湯といえば広東省東莞市の青木瓜(青パパイヤ)を思い出す。その経緯は、十数年前に夏休みを利用し、広東の郷土料理を研究する目的の旅をしたが、東莞には香港の友人の実家があり、今は誰も住んでいないので好きなように使って下さいといわれ、言葉に甘えて一週間ほど滞在したことがある。そのときに東莞郊外で養鳩場を営む知人と一緒に敷地内に自生していた青木瓜でポウ湯を作った。
   青木瓜は、木瓜(パパイヤ)の未熟果で、若いうちは野菜として扱われ、細く切って炒めてもよいが、サラダ風に生食することもできる。青木瓜の皮を厚くむいてぶつ切りにし、野鶏(キジ。孵化して半年ほどたったもの)と一緒に入れ、隠し味に皮付きのピーナッツを少々加え、水から二、三時間ほど煮込んで白湯のようにする。スープは非常に淡白ではあるが、仕上げに好みで塩を入れると旨味が引き立ってくる。

青木瓜   青木瓜のポウ湯
青木瓜。未熟果には蛋白質
分解酵素(パパイン)が多く含まれる。
因みに、木瓜は瓜科ではない。
  青木瓜のポウ湯。
ポウ湯は一般的にスープだけを食す。
青木瓜は繊維質が強く、食べられない。

節瓜
節瓜。値札にある「新界」は広東省の近く、香港郊外にある地名のこと。香港の街市(公設市場)で撮影。
   さて、紙面に限りはあるが、いくつかの瓜を紹介したい。
   まず、節瓜は毛瓜ともいわれ、新鮮なものは表面に産毛が密集し、上部には黄色い花をつける。旬は二月から七月頃で、小さいもの(一個250g前後)は非常にやわらかく、広東料理では煮込みのほか詰め物をして蒸すのもよい。大きなもの(一個500g前後)は、主に煮込み、ポウ湯に使われる。節瓜には微妙な青臭さに、さっくりとした歯応えがあり、冬瓜とは違った味わいを持つが、蝦米(干しエビ)や干貝(干し貝柱)などを加えると、風味は格別になる。

   広東、香港の絲瓜は、一般的に細長くて稜角のある、日本でいう「トカドヘチマ」を指す。絲瓜の若いうちは歯ざわりがよく、さっぱりとした甘みがあり、味は日本のキュウリにも似ている。料理名には「勝瓜」と書くが、その所以は「絲」の発音が「輸(勝負に負ける)」に聞こえるので、その逆になるように願ったものだと、香港の友人から聞いた。因みに、上海、蘇州などでは表面に縦溝があり、日本でも見られる円筒型のものが普通で、広東では水瓜と呼んでいる。絲瓜は中国全土で食されているが、上海の「小南国」で味わった「絲瓜麺筋蕃茄」も秀逸だった。

香港の絲瓜   絲瓜麺筋蕃茄
香港の絲瓜。「トカドヘチマ」の稜角は、どれも丁度、10個を数える。
街市(公設市場)で撮影。
  絲瓜麺筋蕃茄。
絲瓜の色が飛ばないように煮込む。
麺筋は生麩を油で揚げたもの。


苦瓜
苦瓜。その形から茘枝(レイシ)の名も付けられる。
台北で撮影。
    苦瓜(ニガウリ)は、いわゆる「長れいし」ではなく、ずんぐりとしていて表面の凸凹は平滑で、緑色と白色がある。小さく切って炒めるほか、形のままで素揚げし、トウチ風味で煮込むなど、幅広く使われる。「苦」の文字は好ましくないので、広東では「涼瓜」というが、実際に食べると涼しくなるという感覚も含まれている。



哈蜜瓜
哈蜜瓜。マクワウリに似た食感がある。
日本では余り手に入らない。
07年日本で撮影。
    個人的には、哈蜜瓜(ハミウリ)の美味しさに心を惹かれる。哈蜜瓜は遠く新疆ウィグル自治区から運ばれてくるが、昔の香港  では裏通りに数多ある士多(雑貨屋)でも売られていた。フットボール形(一個2〜3kg)で、果肉は淡い紅色と青色の二種類があり、紅色のほうが上質といわれる。水分は少なく、シャキシャキした歯ざわりがあり、上品な甘さと香りは夕張メロンやハネデューメロンにも似ている。中国を訪れる機会があれば是非、哈蜜瓜も味わっていただきたい。   

    最後に、西瓜を使った夏のデザートを紹介しよう。このデザートは、やや外れの西瓜(味の落ちるもの)でもできるので、是非試していただきたい。また、アクセントとして冬瓜で作った擬製の海ツバメの巣を添えてみた。本物と見間違う透明感と不思議な食感があるので、こちらも併せて楽しんで下さい。
 

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コラム担当

レシピ すいかゼリーのアンズ風味

中華の伝道師
人物 松本秀夫
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