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まずは人間の「酔っぱらい」の話です。台湾に研修に行った8年前のことです。研修先の福華大飯店・餐飲部厨芸中心主任(当時)の廖清池さんに誘われて料理長の簡さんと僕の三人は北の端、基隆へ行き、北都大飯店で開かれた「教育功労者の表彰祝賀会」に出席したのです。円卓が15、6卓も並んでいましたが、僕の座ったのは、台湾李錦記の社長や亜都飯店(ザ・リッツホテル)の料理長と同じテーブル、いわばVIP席でした。宴会が始まり、最初はビール、紹興酒で乾杯、続いてブラン デーが運ばれてきました。皆で乾杯。ここからが難しいのです。
グラスを置いて一息ついて顔を上げると、また乾杯です。台湾では目を合わすと、目の合ったもの同士が乾杯するという習慣があるのです。目が合うたびに「乾杯」。飲み干さないと相手はじっと待っているのですよ。ごまかそうと思っていても、「飲み干してください。」というかのように、向こうは空になったグラスをこれみよがしに挙げて待っているのです。同席の方は皆さん日本語が達者で宴は盛り上がり、遠来の客だからと、さらに酒を勧められる。もう何杯飲んだのか分からない。その日は廖さんと簡料理長に支えられてようやく宿舎に帰り着いたようです。熊の掌、ツバメの巣、フカヒレ、ナマコ、魚の浮き袋などの珍味がでてきたことまでは憶えているのですが、どうして帰ったかは全く思い出せません。不始末をしていなければよいのですが・・・。 |
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次に「酔っぱらい」を作る酒の話。台湾ではジョニ赤そっくりの瓶に詰められた台湾紹興酒(アルコール度17.5%)が作られていますが、紹興産とそんなに違いはありません。強いていえば、少しライトかな?紹興産に比べて、癖が少なく色も薄いようです。「江南春」では、糯米と紅麹で作る「紅露酒(アルコール分16%)」に鶏を漬けていましたが、この酒の味は台湾紹興酒と似通っていました。 |
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松坂慶子、宇崎竜堂の出演した『上海バンスキング』という映画が1984年に公開されました。魔都と呼ばれた1930年代の上海を描いていたのですが、台湾産の紹興酒が画面に現われて話題になりました。瓶の形が異なるので、紹興産か台湾産かが分かったのですね。 |
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研修先の福華大飯店の江浙料理店「江南春」で最初に食べたのがこの料理です。といっても始めのポジションが前菜で、つまみ食いをした訳です。鶏自体に味があり、塩味が程よく効いていて、酒が充分に染み込んでいて、何ともいえずふくよかな味わいでした。さらに、漬け汁に当帰の薄切りが入っていて、その成分がアルコールに抽出され、土の香りというか、漢方の味が鶏にも溶け込んでいたようです。不安と期待の入り混じった研修初日の忘れられない味です。 |
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