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辻調の日本料理の先生たちにも、調理師一年生の時代がありました。どんなに教え上手の先生も、一年生の時には分からないことだらけで、失敗もたくさんしたのです。そんな時代を振り返り、「日本料理一年生」のみなさんに、できるだけ分かりやすく、本物の日本料理について解説してみようと思い立ちました。「こんなにおいしいものが自分で作れるのか!」という新しい発見と喜びがきっとあるはずです。
朝食メニュー第2弾は「けんちん汁」をご紹介しましょう。「けんちん」とは聞きなれない言葉でしょうか?漢字で書くと「巻繊」ですが、小学館の『国語大辞典』で調べると次のように記されています。
けんちん【巻繊】
鶏肉にけんちんの具材を巻いて、
焼いた「けんちん焼き」
(「ちん」は「繊」の唐宋音)中国から伝わって日本 料理化した普茶(ふちゃ)料理。けんちゃん。
1 (1)大豆のもやしを炒めて湯葉で巻き、煮びたしにしたもの。(2)せん切りの大根、椎茸、きくらげ、ささが きごぼう、崩した豆腐などを油で炒め、酒、みりん、醤油で調味し、湯葉か油揚げで巻いて揚げたもの。
2 「けんちんじる(巻繊汁)」の略。
Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition)
Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988
江戸時代初期に中国の僧侶、隠元(いんげん豆を日本に伝えたといわれる人物)が、京都の宇治に黄檗山万福寺を開きました。布教の際に、中国風の精進料理である「普茶(ふちゃ)料理」も広めたようで、本来「けんちん」は、この普茶料理の巻繊(けんちゃん)から変化したものと考えられます。「普茶」とは広く大衆に茶を供するという意味で、僧侶が茶を飲みながら協議する茶礼の後に出される食事のことです。精進料理ですから、魚介類や肉類は使いませんが、野菜を主材料に、植物油を巧みに使い、魚介類や肉類を使ったように見せる擬製料理が多く見られます。
せん切りは、「千切り」と書かれることが多いですが、本来は「繊切り」のようです。必ず繊維に沿って刻まないと、加熱した時くずれるので注意しなければいけません。『国語大辞典』の説明から考えると、せん切りにした野菜類やくずした豆腐を油で炒め、湯葉や油揚げで巻き、揚げたり蒸したりして味つけただし汁をかけたものが「けんちん」で、現在の春巻きのようなものではないかと考えられます。この「けんちん」の中に入る野菜や豆腐の具料で作った、実だくさんの醤油仕立ての汁物が「けんちん汁」ということです。
また、鎌倉五山の一つ
するめ烏賊にけんちんの具材を
詰め込んで蒸した「けんちん蒸し」
建長寺の修行僧が料理を作る時に豆腐をくずしてしまい、捨てるにはもったいないので、せん切りにした野菜とともに炒めて醤油仕立ての汁物を作りました。建長寺の汁ということで「建長汁(けんちょうじる)」と呼んでいたのがなまって「けんちん汁」になったという説もあります。
さらに日本料理では、けんちんの具材を魚や肉に包み込んで焼いた「けんちん焼き」や、蒸した「けんちん蒸し」などとバリエーションが増えていったようです。
今回、松島先生が紹介している「けんちん汁」は、ごく一般的なもので、せん切りにした野菜とくずした豆腐を香りのよいごま油で炒め、だし汁を加えて醤油味で仕上げてあります。ぜひ一度試してみてください。
このコラムのレシピ
コラム担当
けんちん汁
タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
小谷 良孝
辻調の御言持(みことも)ち
重松 麻希
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