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辻調の日本料理の先生たちにも、調理師一年生の時代がありました。どんなに教え上手の先生も、一年生の時には分からないことだらけで、失敗もたくさんしたのです。そんな時代を振り返り、「日本料理一年生」のみなさんに、できるだけ分かりやすく、本物の日本料理について解説してみようと思い立ちました。「こんなにおいしいものが自分で作れるのか!」という新しい発見と喜びがきっとあるはずです。 |
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今回は女の子必見ですよ。若い男の子が彼女に作ってもらいたい料理のナンバーワンが「肉じゃが」だそうです。
「肉じゃが」は、明治時代、海軍の東郷平八郎がイギリスに留学したときに食べた「ビーフ・シチュー」の味が忘れられず、当時肉食を奨励していた海軍の軍隊食として取り入れられないかと、部下に命令したところ、ドミグラスソースの代わりに砂糖、味醂、醤油といった調味料で味付けして作ったのが「肉じゃが」だといわれています。最近、東郷元帥が着任した京都府舞鶴市と広島県呉市でこの「肉じゃが発祥の地」をめぐって熱くバトルしていると、マスコミが報道していました。明治時代、海軍は何日もの船上生活のため脚気を患う人が多数出たそうですが、それを改善するためにビタミンB1を多く含み、ある程度保存可能なじゃがいもを使った「肉じゃが」は重宝されたようです。
ちなみに「肉じゃが」の主役の肉は、関西では牛肉なのに、関東では豚肉を使うことが多いようです。関西では肉といえば牛肉をさします。関東でいわれる「肉まん」は、豚肉が入っているので関西では「豚まん」なのです。これは、関西はブランド牛といわれる産地(神戸牛、但馬牛、近江牛、伊賀牛、松阪牛など)が近くにあること。さらに、トラクターがまだ行き渡っていない我々の子供の頃は、農耕にも関西では主に牛が使われており(関東では馬が多かったそうです)、この牛が年老いて働けなくなったら、食用に回されたのだろうと考えられます。
「肉じゃが」のもう一つの主役は、じゃがいもです。みなさんよくご存知のじゃがいもには、さまざまな種類があって、大きく分けて「男爵薯」に代表される粉質と、「メークイン」に代表される粘質がありますが、どちらを使うかは好みです。「ちょっと煮くずれていてもホクホクしたじゃがいもがいい」という人は「男爵薯」を、「煮くずれが少なく、シャキッとしたじゃがいもがいい」という人は「メークイン」を選ぶとよいでしょう。これは、「男爵薯」のでんぷん含有量が約15%で「メークイン」のでんぷん含有量が約14.6%と、含まれるでんぷんの量が多いほどホクホク感が強くなるようです。最近よく耳にする「キタアカリ」には約17%、「インカのめざめ」には約18%もでんぷんが含まれているため、「ホクホク」が好きな方にはおすすめです。
今回は「炒め煮」です。材料を、まず油でいためてから煮ることによって、料理にコクが加わります。さらに、20時間目でお話したように、砂糖、味醂といった甘味の調味料を加えてしばらく煮てから、薄口醤油、濃口醤油といった塩分を持つ調味料を加えて煮ましょう。
最後に「肉じゃが」をちょっと変化させる方法をお話します。煮上がった「肉じゃが」にバターをひとかけら加え、全体にバターの風味が行き渡るように鍋を返します。さらに、盛り付けた後、黒胡椒を少々振りかけます。いつもの「肉じゃが」がより濃厚に仕上がりますよ。
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