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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな
秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな 秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな
解説

「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」
さまざまな解釈があるが、「秋茄子はとてもおいしいので、嫁には食べさせたくない」という意味で、姑の嫁いびりとする説が一般的。「秋茄子はからだを冷やす」とか「秋茄子は種が少ないので、子供ができない」と姑が嫁のからだをいたわる気持ちとする解釈もある。
 秋茄子はなぜお嫁さんに食べさせてはいけないのだろうか?同様のことわざに、「秋かます(かます)は嫁に食わすな」や「秋鯖(さば)嫁に食わすな」というのもあり、嫁という立場はおいしいものがそれほど制限されてしまうのかと思うと気の毒になる。

秋茄子 「秋茄子嫁に食わすな」はもともと、「秋なすび 早酒(わささ)の粕(かす)に つきまぜて 棚におくとも 嫁に食わすな」という和歌に基づいているという。この和歌の中の「早酒」とは新酒を指し、「嫁」は「嫁が君(きみ)」の略でネズミをいう忌詞(いみことば)である。
 忌詞とは、信仰上または特定の場面などで、不吉な意味の語を連想させるとして、使うのを避ける言葉である。たとえば、結婚式の挨拶で「去る」や「切る」という言葉を使ってはいけないように、伊勢の斎宮(さいぐう)では神に奉仕するために、「仏」、「経」、「僧」などの仏教に関する語や、「死」などの不浄な意味の語は避けて、「仏」を「中子(なかご)」、「経」を「染め紙」、「僧」を「髪長(かみなが)」、また「死」を「なほる」に言い換えている。また、正月の三が日の間は「坊主」や「ねずみ」などといった不吉なことを連想させる言葉は口にしないという昔からの風習があったり、我々が普段使う言葉でも「すり鉢」を「あたり鉢」、「葦(あし)」を「よし」、「梨(なし)」を「ありの実」というのはこのためである。
 話はそれたが、「嫁」をネズミとしてこの和歌を直訳すると、「新酒の酒粕に漬けた秋茄子を棚の上に置いて、ネズミに食べられないように注意しなさい」といった意味になる。つまり、「秋茄子はネズミに食わすな」ということである。それが後世、「嫁」を姑に対する嫁とした解釈に変わってしまった。そして、「秋の茄子はおいしいものだから、憎い嫁には食べさせるな」という世代が変わっても決してなくならない、嫁と姑の争いが背景にあるような意味となってしまったのである。

 ところが一方では、「秋茄子は体に毒だから、大切な嫁に食べさせてはいけない」という全く逆のとらえ方もある。つまり、秋茄子は発汗や利尿を促すことによって体を冷やす働きがあるため、姑が嫁を気遣っていった言葉というわけである。やはり、このように姑の気遣いから生まれたとしておく方が、家庭内はうまくおさまって平穏でよいともいえる。 さらに、「秋茄子には種が少ないので、子宝に恵まれないと困るから」という縁起を担ぐ解釈まであり、これなどは姑の気遣いの最たるものといえる。

 中国の明(みん)王朝の時代に書かれた薬草の解説書にも、「茄子は多く食べれば必ず腹痛や下痢を起こし、秋に入り毒を持ってくる」と示されており、この本を参考にして書かれた江戸時代の書物にも同様の記述があることから、昔から秋茄子は体によくないという考えがあったのだろう。また、同じナス科のほおずきには堕胎作用があるといわれていたり、たばこや朝鮮朝顔などの毒性を持つ植物にはナス科のものが多いことも確かで、このような同じナス科の仲間のよくないイメージが植えつけられて、茄子にも毒があるといわれたのかもしれないし、茄子のアクの強さがそう思わせたのかもしれない。もしくは、当時の茄子は今よりもずっとアクが多く、本当に食べ過ぎは体によくなかったのかもしれない。いずれにしろ、現在の茄子には全く毒性がなく、あくまでも昔の話である。

秋茄子 さて、正月に初夢で見ると縁起がよい順は、昔から「一 富士、二 鷹(たか)、三 茄子」といわれている。富士山と鷹が縁起がよいとされるのは何となくわかるが、なぜ三番目に茄子がくるのかが理解できないという人は多いと思われる。
 そこで、「一 富士、二 鷹、三 茄子」について巷にあふれる情報をまとめてみると・・・・・
 (一)江戸幕府を開いた徳川家康の隠居地である駿河の名物を並べたという説。茄子の次に、「四 扇(せん)、五 煙草、六 座頭」まで続く。
 (二)日本三大仇討ちから由来しているという説。「富士」は、曾我兄弟が富士の裾野で本懐をとげたことから、「鷹」は、忠臣蔵で有名な赤穂浪士の討ち入り事件で、主人であった浅野匠頭の家紋が「違い鷹の羽」だったことから、そして「茄子」は、荒木又右衛門が伊賀上野の鍵屋の辻で、義弟である渡辺数馬に助太刀して三十六人斬りをして有名になったという「名を成す(なす)」の語呂合わせからきている。
 (三)「富士」の山は日本一、崇高なもの、立派なものであり、「鷹」は王鳥といわれ、鋭い爪でものをしっかりつかみ取る力がある。そして、「茄子」は「成す(なす)」こと、すなわち物事が実現して成功することを意味するという説。
 (四)単に「無事(富士)」に「高(鷹)き事を」を「成す(茄子)」の語呂合わせであるとの説。
 このように諸説があるが、どれをとっても江戸期に広まった、今でいうコピーのようなものである。おそらく洒落のきいた講談などで広まったのだろうが、当時のコピーが現在までいい伝えられていると考えると驚きである。

 茄子にまつわる話はつきないが、茄子は調理法も幅広く、焼く、揚げる、煮る、漬けるなどさまざまな方法でそのおいしさを生かすことができる。その中でも今回は、揚げてからさらに煮る「揚げ煮」を選んだ。茄子は油と相性がよく、素揚げしてから煮物にすると、淡白な茄子の味に油脂のこくが加わり、大変おいしく感じられる。また、揚げることで、茄子の皮の「なす紺」ともいわれる濃い紫色を鮮やかに仕上げることができる。皮の紫色を呈するナスニンという色素は水に溶けやすく、長く煮ると色素が煮汁に溶け出して、茄子の色があせてしまうのである。そこで、茄子をあらかじめ揚げ、表面に油の膜を作っておくと、色素が溶け出すのを防ぐことができ、色よく仕上がるのである。揚げたときにかなり火が通るので、煮る時間も短縮され、煮崩れを防ぐこともできる。揚げ煮のポイントは、茄子を揚げた後の「油抜き」。茄子にたっぷりの熱湯をまんべんなくかけて、余分な油を抜いてから煮るので、油っぽさがなく、味がしみ込みやすくなる。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ なす揚げ煮

タイ語の話せる日カレのおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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