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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
海老で鯛を釣る
海老で鯛を釣る 海老で鯛を釣る
解説

 「海老で鯛を釣る」(略して「海老で鯛」)
わずかな元手で多くの利益を得る。また、わずかな贈り物をして多大な返礼を受けることのたとえ。
 実際に、鯛は海老などの甲殻類をよく食べていて、その甲殻類の旨味が鯛の旨味にもなっているので、「鯛が好き」という人には「海老も好き」という人が多い。

 また、鯛の桜の花にも似たピンク色の体は、海老などの甲殻類が持っている色素と同系のアスタキサンチンという色素によるものである。以前、ある人に養殖の鯛を見せたところ、黒鯛かと言われたことがある。本来、天然の鯛は、水深30〜50mの所に住んでいるため、太陽の光はほとんど当たらなくピンク色をしているが、養殖の鯛は浅いいけすで育てられているために日焼けして、せっかくのピンク色が黒ずんでしまっている。これは、天然と養殖の鯛とを見分けるポイントの一つである。しかし、40年も生きることがあるという天然の鯛も、歳をとれば黒っぽく変化していく。

 もう一つ、天然と養殖の鯛の違いは顔つき、体つきである。養殖の鯛は限られた広さの生け簀の中で、外敵もなくのんびりと泳いでいさえすれば、毎日決まった時間にえさをもらえるのに対し、天然の鯛は広い海の中で、外敵に用心しながら自分でえさを確保しなければならない。つまり、養殖の鯛は箱入り息子のお坊っちゃまであり、天然の鯛は天涯孤独の一匹狼という違いである。天然の鯛は、精悍(せいかん)な顔つきでスマートな体つきをしているのに比べて、どうしても養殖の鯛は、どこかのんびりとした顔つきで、丸みを帯びた体つきをしている。養殖の鯛の味がいまひとつなのは、このように運動不足で体に余分な脂肪がついていたり、えさの主体が安いいわしで、旨味のもとであるタウリンの豊富な海老をあまり食べさせてもらっていないためである。

 鯛は、「めでたい」という言葉の語呂合わせと、体の色から祝い事には必ず使われ、いわゆる「魚の王様」として重宝されている。もともと、中国では「魚の王様」といえば、河や滝を登って登竜門まで到達すれば龍になって、天に登るといわれるこいであり、日本でも古くからの伝統や風習、料理の歴史をみれば、包丁式や端午の節句の鯉のぼりをはじめ鯉を多く用いていた。しかし、江戸時代になって、徳川家康が鯛好きだったこともあり、魚のスーパースターは鯉から鯛へと移っていった。

 鯛は、生で造りにしても、煮ても、焼いても美味しい魚だが、身だけでなく頭や骨までも美味しく味わっていただきたい。頭や骨は、あら炊き(かぶと煮)、潮(うしお)汁、骨蒸し、かぶと焼きなどにして骨の髄まで味わいつくすことができる。特に鯛の頬(ほお)肉は、胴の2倍ぐらいの脂が含まれている上に、しかもえらの周りで筋肉がよく動いているため、頬肉の味わいをいっそう深くしている。

 今回は、この魚の王様である鯛の造りを、魚のスーパーモデルのようにゴージャスでエレガントなサラダ風に変身させます。鯛をドレスアップするラインナップとしては、今が旬である京都の朝掘りたけのこ、鳴門の新わかめをはじめ新鮮なレタスやプティトマト、あさつきを配し、頭には女王様のティアラをイメージした揚げた春巻きの皮を散らします。もちろんドレッシングも和風にアレンジして、野菜たっぷりでとてもヘルシーな昨今流行の創作料理風に仕上げています。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 鯛サラダ造り

タイ語の話せる日カレのおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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