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「『古典』と『和菓子』だって?もう、いや!」と逃げ出さないでください。想像とおいしさとちょっぴり恋の世界を味わって頂きたいだけですから。百人一首の和歌を読んで私たちなりに解釈し、イメージを膨らませて作ったのがここにご紹介するお菓子です。和菓子の世界には、和歌や物語を元にして想像力を働かせ、作品に表現するという楽しさや遊びがあるのです。このページを通して、日本の良さを見直して頂けたらうれしく思います。 |
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鹿は秋を代表する動物で、別名を「紅葉鳥」といいます。雄鹿は、雌鹿を求めて「ピーッ」と高く長く強い声で鳴くようで、昔の人は、そこに遠く離れた妻や恋人を恋い慕う感情を重ねています。今回は薯蕷生地に三温糖や麦焦がしを使い、鹿の色合いや茶色の毛並みを表現し、全体として、人里はなれた奥山で見つけた雌鹿に、そっとよりそって歩く雄鹿の様子を表現しました。
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5 猿丸大夫(さるまるたいふ)
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平安時代の歌人といわれるのですが、生まれた年も亡くなった年もはっきりわからず、どういう人だったのか、記録もほとんどありません。歌でさえ、確実にこの人物が作ったといわれるものは残っていません。「猿丸大夫」がある人物の別名だという説もありますが、伝説上の人物だという説が有力です。この歌は『猿丸大夫集』という歌集に載っていますが、この歌集自体、作者不明の古い歌を集めたもののようです。
さて、歌の方ですが、
寂しい奥山で、紅葉を踏み分けて妻を慕って鳴く鹿の声を聞くと、その時こそ、秋の物悲しさがつくづく感じられることだ。
というような意味です。
農民にとって実りの秋は、喜びの季節のはずで、物悲しさを感じるこの歌は、貴族の感覚から生まれたものだという説があります。確かにそうかもしれません。ただ、厳しい暑さの続く夏の夕暮れに、ひんやりとした風が吹くと、どことなく物悲しさを感じるものです。今年最初に秋風を感じたら、その時の気持ちは嬉しさなのか、悲しさなのか、心待ちにしておくのも、楽しい夏の過ごし方かもしれません。
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