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連載コラム 独逸見聞録
これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
ビールの種類 〜ビール(其の弐)〜

  ドイツでは、「ビール純粋令」で認められた原材料(麦芽、ホップ、水、酵母)のみを使用しながら、多種類のビールが醸造されている。ピルスナーの様にドイツ全土に広まっているものや、販売や消費の地域が限定されているケルシュなど様々である。それぞれのビールによって注文の際の単位、グラス(Glas:グラス)やジョッキ(Krug:クルーク)も異なる。
  今回はビールの種類と、それぞれに合ったグラスについて紹介する。



★ビールの種類(Sorten : ゾルテン)

◆アルトビーァ(Altbier)

分布・地域: 主にデュッセルドルフとニーダーライン地方
等 級: フォルビーァ
麦汁濃度: 平均11,5%
アルコール度: 4,8%前後
発酵による分類: 上面発酵
特 徴: 濃い琥珀色で、ホップが強調されたビール。
理想的な温度: 8〜10℃
グラスと飲み方:
背の低い筒状のグラス、アルトビーァ・ベッヒャー(Altbier -Becher)で飲まれる。サービスされる単位は0,2リットルで、(ビンではなく)樽から注がれる場合が多い。
   
その他: デュッセルドルフのアルトシュタット(旧市街)で飲まれるビールとして有名。アルトとはドイツ語で「古い」と言う意味だが、ここでは、昔ながらの醸造方法を指している。

◆ベルリーナー・ヴァイセ(Berliner Weiße)

分布・地域: ベルリンとその周辺
等 級: シャンクビーァ
麦汁濃度: 7〜8%
アルコール度: 2,8%
発酵による分類: 上面発酵
特 徴: 辛口で酸味が強く、少し酵母の濁りのある金黄色のビール。
理想的な温度: 8〜10℃
グラスと飲み方: 酸味が強いこともあって、このビールをストレートで飲むことは少ない。昔はキュンメル(Kümmel)やコルン(Korn)などのシュナップスと共に飲まれていたが、現在では、クルマバ草(Waldmeister:ヴァルトマイスター)、または木イチゴ(Himbeere:ヒムベーレ)のシロップを加える。ベルリーナー・ヴァイセ・ポカール(Berliner Weiße-Pokal)と呼ばれるトロフィー状の高脚杯に入れ、ストローで飲む。特に夏に好まれる。
その他:
右:ヴァルトマイスター(緑)、左:ヒムベーレ(赤)のシロップ

右:ヴァルトマイスター(緑)、
左:ヒムベーレ(赤)のシロップ

ドイツ2大小麦ビールのひとつ。小麦麦芽と大麦麦芽を混ぜて使用するが、小麦の比率は低めである。また醗酵の際に、上面発酵用酵母だけでなく、乳酸菌を併用することによって独特の酸味を持つ。

◆ケルシュ(Kölsch)

分布・地域: ケルン、ボンとその近郊
等 級: フォルビーァ
麦汁濃度: 平均11,3%
アルコール度: 約4,8%
発酵による分類: 上面発酵
特 徴: 透き通った淡黄色のすっきりとした飲み口の辛口ビール。
理想的な温度: 8〜10℃
グラスと飲み方:
ケルシュシュタンゲ(Kölschstange)と呼ばれる0,2リットルの筒状の細長いグラスに注ぐ。
   
その他:
874年からの長い伝統がある。1986年3月に調印された「ケルシュ協定」によって「地理的生産地名称」として保護されている。ケルンとその周辺の24のビール醸造所だけしか、「ケルシュ」の名称を使用することを許されておらず、その殆どが地元で消費される。

◆ピルスナー(Pilsner)

分布・地域: ドイツ全土
等 級: フォルビーァ
麦汁濃度: 最低でも11,0%
アルコール度: 約4,8%
発酵による分類: 下面発酵
特 徴: ホップの効いた爽快な苦味の淡い黄金色の色ビールで、泡がきめ細かい。
理想的な温度: 8℃
グラスと飲み方: ピルスナーは、背が高くて細いチューリップ状のピルストゥールペ(Pilstulpe)、またはトゥールペよりも小さくて胴の部分の膨らんだ、ピルスポカール(Pilspokal)で楽しまれることが多い。
その他:
ドイツでは「ピルス(Pils)」と略して呼ぶことが多い。
最初に醸造された場所、ボヘミアの「Pilsen」の街の名に由来するが、下面発酵の製法を用いて醸造したのは、バイエルン出身者のJosef Groll(ヨーゼフ・グロル)である。
ピルスナーを美味しく注ぐには、7分掛かると言われているが、実際は3分前後が適切である。最初の泡が沈むのを待ち、グラスの縁から泡が盛り上がる様に、数回に分けて注ぎ足す。

◆ヴァイツェンビーァ(Weizenbier)

分布・地域: ドイツ南部、特にバイエルン地方
等 級: フォルビーァ
麦汁濃度: 11,0〜14.0%
アルコール度: 約5,4%
発酵による分類: 上面発酵
特 徴: 琥珀色から褐色まで様々。濁りのあるものや濾過によって澄んだものがある。苦味は弱く、爽やかな酸味と甘味がある。
理想的な温度: 8〜10℃
グラスと飲み方:
ヴァイスビーァグラス(Weißbierglas)は、通常0,5リットル入りビン1本分の容量のある背が高くて大きなグラスで、上に向って弓形に広がっている。
 
その他:
左:ドゥンケル(濁った褐色)、右:クリスタルヴァイツェン(澄んだ淡色)

左:ドゥンケル(濁った褐色)、
右:クリスタルヴァイツェン(澄んだ淡色)

「Weizen」とは小麦のこと。ヴァイツェンビーァは小麦麦芽から造られるビールの総称で、ヴァイスビーァ(Weißbier)とも呼ばれる。小麦麦芽の使用率は50%以上で、残りは大麦麦芽を使用している。酵母入りで濁っているヘーフェヴァイツェン(Hefeweizen)やナトゥーアトリューベス(Naturtrubes)、濁りの無いクリスタルヴァイツェン(Kristallweizen)などの種類がある。

参照)ビールの等級分類表

  等 級 分 類 麦汁エキス濃度
Einfachbiere アインファッハビーァ 1,5 〜 6,9%
Schankbiere シャンクビーァ 7,0 〜 10,9%
Vollbiere フォルビーァ 11,0 〜 15,9%
Starkbiere シュタルクビーァ 16,0以上


コラム担当

Kimiko Kochs
人物 キミコ・コッホス
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