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連載コラム 独逸見聞録
これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
市場 〜食料品の買い物(其の壱)〜
 ドイツで食料品の買い物に出掛ける場合には、幾つか選択肢がある。  
 営業時間が一番長くて、何でも一度に揃う「スーパーマーケット(Supermarkt:ズッパーマルクト)」。対面販売の形式のパン屋、菓子屋、肉屋などの「専門店(Fachgeschaft:ファッハゲシェフト)」。そして、常設もしくは週に何度か決まった場所で開かれる「市場(Markt:マルクト)」など・・・。それぞれ長所や短所があるが、客は、好みや懐具合、営業時間などによって、買い物をする場所を選んでいる様である。勿論、買い求める品物によって、複数の店に出掛けることもある。
 今回は、この中から週末の「市場」の様子を紹介する 。

市場(Markt : マルクト)

 市場と一口に言っても色々な種類があるが、ここでは毎週一定の曜日に開かれるWochenmarkt(ヴォッヒェンマルクト)と呼ばれるものを取り上げる。野菜・果物の屋台大抵は週に2〜3回程である。
 市が開かれる場所は、街の中心部。本通り(Hauptstrase:ハウプトシュトラーセ)や中央広場(Marktplatz:マルクトプラッツ)などで、歩行者天国になっている場合も多い。中央広場は市庁舎(Rathaus:ラートハウス)や教会(Kirche:キルヒェ)などの前方にある、市場や祭りのための場所である。古い街では石畳のところが多く、近くに泉や噴水などもある。

 オッフェンブルクでは、毎週火曜日と土曜日の午前中に青空市場が立つ。その場所は、リンデンプラッツ(Lindenplatz)からハウプトシュトラーセ(Hauptstrase)の市庁舎前まで。それを繋ぐシュタインシュトラーセ(Steinstrase)、フィッシュマルクト(Fischmarkt)に大小の屋台が軒を連ねる。

チーズの移動販売車 野菜や果物、キノコ、肉やソーセージ、魚や卵、チーズやパン、蜂蜜、香辛料、野菜の苗や花、ハーブなどの屋台・売店(Stand:シュタント)又は移動販売の車が、朝一番にやって来る。
 販売形態は様々だが、肉やソーセージ、魚やチーズを扱う場合には、冷蔵設備を義務付けられているために、移動販売車を使用することが多い。
 屋台を持たずに、道の上に直接シートを広げたり、簡易ベンチの上に品物を並べたりしている場合もある。野菜の苗とハーブの屋台
 これは大抵近隣の農家の人達で、種類は少ないものの、朝畑から取ってきたばかりの新鮮な旬の野菜や果物ばかりである。春には白と緑のアスパラガス(Spargel:シュパーゲル)、初夏から夏にかけてはイチゴ(Erdbeere:エーァトベーレ)や数種類のベリー類、サクランボ(Kirsch:キルシュ)やプラムなどが店先を彩る。

キノコの屋台 この野菜や果物のほとんどが、ばら荷の状態で、計り売りされている。例外はイチゴやベリー類で、500gずつ入る容器(再生紙かプラスティック製)に、既に分けられていることが多い。
 キノコは、種類別に紙の袋に入れるが、鉢植えの花やハーブ、野菜の苗などは、古新聞で簡単に巻くだけで手渡される。
 自家製のジャムや蒸留酒などを、野菜や花と一緒に並べている屋台もある。

 BIOの野菜や大豆を使用した健康食品、炒飯や春巻きなどの中華惣菜、羊のチーズや各種オリーブを扱う屋台にも固定客がいる。
中華惣菜の屋台 オリーブの屋台
 同じ曜日には、同じ場所に同じ屋台が並んでいることを客の側も心得ていて、それぞれ顔馴染みの店に足を運ぶ。

花の屋台 「市場」では、売り手と買い手のコミュニケーションが上手く図られていると感じる。「Guten Morgen(おはよう)」の挨拶から始まり、世間話をしながら品物を選ぶ。その後、「Vielen Dank」や「Danke schon(どうもありがとう)」とお互いに礼を言い合ってその場を立ち去るまで、親密で和やかな雰囲気が漂っている。それに、果物の味見をさせて貰えたり、合計金額の端数を切り捨てたりと、「市場」では少しばかりの「オマケ」もある。
 買い物の合間には、屋台設置のために、いつもよりも狭くなっている路上で、通行人の邪魔をしながら知人と立ち話(1週間の出来事の報告など)をしたり、屋台の焼きソーセージを頬張ったり・・・。  
 天気の良い日には、カフェの前の路上に並べられたテーブル席に着き、行き交う人々を眺めながらコーヒーを飲んで休憩している人も多い 。

買い物カゴ(Einkaufskorb : アインカウフスコルプ)

買い物カゴを持つ男性 写真を見ても分かる様に、日本ではすっかり見掛けなくなってしまった買い物カゴが、エコロジー先進国のドイツでは、今も健在である。このカゴを持つのは、女性ばかりではない。男性も買い物カゴ片手に、颯爽と(?)街を歩いている。恥ずかしげな素振りは、微塵も見て取れない。
 この他、網や布製の手提げ袋を持参する人もいるし、自転車利用者は、リュックサックの場合もある。

 買い物カゴを扱う「専門店」もある。容量の大きな口の広がったカゴ、取手の部分が皮製や布製の物、内側に布が張ってある物、買い物カゴ様々な色、形、大きさのカゴがある。壁や天井から吊るされたり、床や窓辺に並べられたりしている。
【撮影協力(買い物カゴ) : Korb - Welzel
( Langestr.46 Offenburg )】
Korb - Welzel 買い物カゴ


コラム担当

Kimiko Kochs
人物 キミコ・コッホス
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