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これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
閉店法(Ladenschlussgesetz : ラーデンシュルスゲゼッツ)
ドイツでは、日本のように24時間いつでも買い物をすることはできない。営業時間枠が「閉店法」で厳しく決められているからである。この法律は1956年に制定され、1989年と1996年に一部規制緩和されている。法律制定当時には、平日は
18:30、土曜日には14:00に閉店することが義務付けられていた(!)。最終規制緩和後(2003年6月)、平日・土曜日は6:00から20:00まで営業可能となっている。日曜日と祝日には、飲食店、キオスクやガソリンスタンド、駅や空港でのなど、一部の許可されている店以外は、閉店しなくてはならないことになっている。例外として認められているのは、年に数回(大抵春と秋に1回ずつ)の日曜日の午後のみである。
*実はこの原稿の執筆途中で、「閉店法」についての新たな規制緩和が発表された。それぞれの州に権限が委ねられることになるので、平日ならば24時間営業も可能となる(但し日・祝日については現行通り)。
実際の営業時間は「閉店法」の枠内で、それぞれの店が決めているので、当然一律ではない。法律改正以前の慣習のためだろうか、従業員数の少ない小売店の場合、平日は18:00、土曜日には13:00頃に閉店してしまう店が多い。中には、毎日一定の昼休みを取ったり、水曜日の午後休業したりする店もある。デパートや大きな店は、閉店法の枠内で、かなり遅くまで営業している。
専門店(Fachgesch
ft : ファッハゲシェフト)
商品についての知識が豊富で、色々と相談に乗ってもらえる。食料品を扱う場合、カウンター(Theke:テーケ)を挟んでの対面販売の店が多い。カウンターの前で長時間悩む人は稀で、皆驚く程決断が早い。勝手に品物を手にとって選ぶことが許されていないためか、数や量を指示する際に、希望の品の条件や状態について、細かく説明する客が多いようである。
今回紹介するのは、「パン屋(B
ckerei:ベッケライ)」と「菓子屋(Konditorei:コンディトライ)」である。この2つを、完全に切り離して説明することは困難である。何故ならば、ドイツで一番多く見掛けるのは「パン屋」でも「菓子屋」でもなく、その複合型の「パン・菓子屋(B
ckerei-Konditorei)」だからである。
パン屋(B
ckerei : ベッケライ)
パン屋は「閉店法」の例外として、日曜日の営業を認められている数少ないひとつである(但し3時間のみ)。平日も他の店より30分早めの5:30からの営業開始を許可されている。
日本ではセルフサービスの店が多いが、ドイツでは対面販売が一般的である。最近、日本のセルフサービスの形式に近い、フランチャイズのパン屋を見掛けるようになってきている。
パンは勿論のこと、サンドイッチや飲み物も販売する。店によっては、ジャムやハチミツの他、卵や乾燥麺類なども扱っている。
食事用のパンを大きく分類すると、大型パン(Brot:ブロート)と小型パン(Br
tchen:ブレートヒェン)に分けられる。興味深いことに、大型パンを表すドイツ語はドイツ全土何処でも「Brot」と決まっているのに、小型パンを表現するための単語は、地方によってかなりの数に上る。例えば、ハンブルクの辺りではルントシュトゥック(Rundst
ck)、ベルリンとその周辺ではシュリッペン(Schrippen)と呼ぶ。また、ドイツ南西部ではヴェック(Weck)、バイエルン州や隣国のオーストリアではゼンメルまたはセンメル(Semmel)と呼ばれている。Offenburgの辺りでは、「ヴェック」の使用率が高い。
大型食事パンの種類は300以上と言われていて、
その約半分が小麦とライ麦を合わせて作ったミッシュブロート(Mischbrot)である。穀物や植物の種子をパン生地に加えたり、表面に付けたりした種類が多いのも、ドイツ語圏のパンの特徴である。焼き上がり重量が250g単位になるように調整されているのは、500g(Pfund:プフント)が基準となっているためである。大型のパンは、専用の機械で切ってもらうこともできる。通常、小麦粉の割合が多いパンは厚めに、ライ麦粉や穀物類の多い(色の濃い)パンは薄めに切り、切り口からの乾燥を防ぐために、数箇所穴の開いたビニール袋に入れる。丸ごと買う場合には紙袋に入れるが、ゴミ減量と資源節約のために、
洗濯可能なパン専用の布袋を持参する人もいる。
菓子パンの種類も多い。大型の菓子パンの代表は、編みパン(Zopf:ツォプフ)で、祝日の前日や土曜日には、この切り分けて食べるタイプの菓子パンがたくさん販売される。
小型の菓子パンでは、「カタツムリ」の名を持つシュネッケ(Schnecke)や折り込み生地を使ったプルンダー(Plundergeb
ck:プルンダーゲベック)などがある。
菓子屋(Konditorei : コンディトライ)
生菓子や焼き菓子、チョコレート(Schokolade:ショコラーデ)や、アイスクリーム(Eis:アイス)などを扱う。喫茶室が併設されている場合には、「カフェ・コンディトライ(Caf
-Konditorei)」と呼ばれる。
ドイツのケーキが大きいことについては、日本でも既に良く知られている。
円形の生菓子(Torte:トルテ)の直径は26〜30pもあり、12〜16等分にすることが多い。
ドーム型(Kuppel:クッペル)や長方形(Schnitten:シュニッテン)のケーキもあり、売り場の担当者が、店頭で注文分だけ切り分ける。この時には、大き目のセロファンを底と両側の切り口の部分に当てるだけ。日本やフランスのように、一人前ずつ小型に仕上げ、カットを必要としないタイプのケーキは稀である。
ドイツでは、手作り・市販にかかわらず、ケーキを訪問の際の手土産にする習慣はない。殆どの人達は、近所の馴染みの店で、自分達自身のために買っていく。そのため、美しい箱や装飾、ドライアイスなどは必要ないので、包装は非常に簡単である。少しだけ縁の部分が高くなっている長方形の紙皿(Pappteller:パップテラー)の上にケーキを乗せ、紙でくるくると巻いて、両端を折り返すだけ。これを底の広い紙袋に入れてもらえる場合もあるが、買い物カゴの一番上に乗せて持ち帰る人が多い。中には、リュックサックに入れてしまう(!)大胆な人もいる。例外は1台丸ごと買う場合で、専用の箱にきちんと詰めてもらえる。
お土産やプレゼントに使ったりするのは、専らマジパン(Marzipan:マルツィパン)やトリュフ(Tr
ffel:トリュッフェル)、チョコレートボンボン(Praline:プラリーネ)の類である。
これらはその旨を告げれば、
美しく包装してもらうことができる。
【Caf
Kochs(Zellerstr.27 Offenburg)】
コラム担当
Kimiko Kochs
キミコ・コッホス
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