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連載コラム 独逸見聞録
これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
シャウムヴァインとグラス 〜発泡ワイン(其の壱)〜
   誕生日や結婚式、記念日や試験合格などの祝いの席に、欠かすことができないのがゼクト(Sekt)やシャウムヴァイン(Schaumwein)などの「発泡ワイン」。大晦日から新年に掛けてのパーティーでも、カウントダウン後の乾杯時に、大きな存在感を示している。ドイツでは祝い事の象徴として、ゼクトの瓶やグラスの画像が、カードに多用されている。
    今回はシャウムヴァインの種類と、専用のグラスについて紹介する。

★発泡ワイン

   日本では厳格な決まりがないために、その呼称が「発泡ワイン」の総称として使われる場合が多いが、シャンパン(Champagner:シャンパーニャー)と名乗ることができるのは、フランスのシャンパーニュ地方産で、原産地呼称統制の規格に則って製造された発泡ワインのみである。ドイツでもシャンパーニュは販売されているが、他の発泡ワインと比べると、かなり高価である。
   ドイツの発泡ワインの総称は、「シャウムヴァイン(Schaumwein)」。ブドウの産地や製法、アルコール含有量や炭酸による圧力など、様々な必須条件によって分類されている。発泡ワインの製造方式には、トラディショネル方式(瓶内二次発酵)、シャルマ方式(タンク内二次発酵)、トランスファ方式、炭酸ガス注入方式がある。

★発泡ワインの種類

◆ゼクト(Sekt)
   別名、クヴァリテーツシャウムヴァイン(Qualitätsschaumwein)。最低でも10%のアルコールを含み、3,5バール(気圧の単位)以上の炭酸ガスを含有することが規定されている。二次発酵が義務付けられていて、タンク内発酵の場合には最低6ヶ月、瓶内発酵の場合には、更に長い9ヶ月以上の熟成期間が必要とされる。
   「ドイチャー・ゼクト(Deutscher Sekt)」を名乗るためには、ドイツ産のブドウを使用したワインを元に、ドイツ国内で製造されなくてはならない。
瓶内で二次発酵させる伝統的な製法で造られたゼクト(Sekt)

瓶内で二次発酵させる伝統的な製法で
造られたゼクト(Sekt)

   「 Sekt b. A. (ゼクト・ベー・アー)」と省略して呼ばれる、
Qualitätsschaumwein bestimmter Anbaugebieteは、指定栽培地域のクヴァリテーツヴァインのみから造られていて、生産地域の特徴を持ったゼクトであることを意味している。更に、公的機関の検査に合格し、その検査番号である(A.P.-Nr.)を表示することも義務付けられている。 ラベルに、地域名を表示する場合は、その地域で栽培されたブドウを100%使用しなければならない。また、地区や品種名、ヴィンテージなどを表示する場合は、それぞれ85%以上を満たすことが必要である。

◆ヴィンツァーゼクト(Winzersekt)
リースリング種のブドウで造ったヴィンツァーゼクト(WinzerSekt)

リースリング種のブドウで造った
ヴィンツァーゼクト(WinzerSekt)

   Winzer(ヴィンツァー)とはブドウ栽培兼ワイン醸造業者のこと。ゼクトの元になるワインが一箇所のワイン醸造所産であり、独自にもしくは生産者組合によって生産されている。殆どの場合は、指定された栽培地域(ドイツには13箇所ある)で造られている。
   「最低でも10%のアルコールを含み、3,5バール(気圧の単位)以上の炭酸ガスを含有する」というのは上記のゼクトと同様だが、ヴィンツァーゼクトは、伝統的な瓶内発酵で造られることが規定されている。

◆シャウムヴァイン(Schaumwein)
   シャウムヴァイン(Schaumwein)は、発泡のワインの総称でもあるが、品質・等級を表す場合には、最低でも9,5%のアルコール、3バール以上の炭酸ガスを含有することが条件となっている。
   炭酸注入法は、「クヴァリテーツシャウムヴァイン(Qualitätsschaumweinen)」では許可されておらず、一次もしくは二次発酵によって炭酸を生産することが前提となっている。普通のシャウムヴァインには、人工的に炭酸を注入された物もあり、この場合には、「Schaumwein mit zugesetzter Kohlensäure」とラベルに表記しなければならない。

◆ペーァルヴァイン(Perlwein)
   含有する炭酸が1〜2,5気圧と低めの微炭酸(弱発泡性)ワインは、ペーァルヴァイン(Perlwein)と呼ばれ、最低でも8,5%のアルコールを含むことが義務付けられている。大抵は人工的に注入された外生の炭酸であるが、一次発酵による炭酸(内生)の場合もある。

セッコ(Secco)

セッコ(Secco)

セッコ(Secco)
   セッコは軽いタイプの弱発泡ワインで、規定上はペーァルヴァインに分類される。
   ドイツでは、1990年代からイタリアの弱発泡ワインの消費量が伸びていて、ドイツ国内で生産されたペーァルヴァインが、「Secco(セッコ)」の名称で販売され、気軽に楽しまれている。
   なるべく若くて新鮮な状態で味わった方が良く、長期保存には向かない。

★ゼクトの適切な温度
   一般的に、熟成期間の短い若いシャウムヴァインは、熟成されたものよりも冷たくして飲むと良い。但し、冷やし過ぎると風味を損なう。
   ゼクトの種類によって、最適な温度は少しずつ異なる。白いゼクトは5〜7℃、ロゼは6〜8℃、そして赤は9〜11℃が適温である。

★ゼクト専用グラス
   ゼクトやシャウムヴァイン、ペーァルヴァインなどの「発泡(または弱発泡)ワイン」を楽しむには、「Sektglas(ゼクトグラース)」を用いる。
   姿形の美しさは勿論、機能的にも優れていなくてはならない。例えば、ゼクトの色を楽しむためには、無色透明なグラスが相応しい。また、発泡ワインの温度を一定に保ったり、状態の良い泡を形成したりするには、充分な容量と高さも必要である。長い取手の部分は、手で触れることによってゼクトが温まるのを防いでいる。

◆ゼクトシャーレ(Sektschale:クープ型グラス)
   グラスの口が大きく開いているために、液体の表面積が広くなり、アロマが消え去るのが非常に早い。また、細かく美しい気泡を立ち上らせ、保つためには平ら過ぎる。幸運なことに、この不適合な形のグラスの流行は、ほぼ廃れてしまった。
   グラスを何段にも積み重ねて、最上段から静かに注いだ、通称「シャンパンピラミッド(Champagner-Pyramide)を作るには、安定感のあるこのグラスが適している。

◆ゼクトフレーテ(Sektflöte:フルート型グラス)
   細身で背の高いフルート型グラスは、下に向かって円錐形を成し、縁が軽く外側に向かって反っている。この名前は、フルートを連想させる形状からきている。
   このグラスは、エレガントであると同時に、機能性も高い。
   グラスの一番細くなっている部分から、数珠繋ぎになって細かい泡が立ち上る様子を楽しむことができる。

◆ゼクトトゥルーペン(Sekttulpe:チューリップ型グラス)
   泡立ちと香りの両方の点に関して、理想的なのはチューリップ型である。
   グラスの上方が軽く窄まっているので、空気が接触する面積が小さく、炭酸ガスの発散を抑える。また、アロマを逃がさず、香りや味を長持ちさせる。
   気泡の上昇については、フルート型の方が優れているが、グラスの窪んでいる中央に「Moussierpunkt(ムーシァープンクト)」と呼ばれる、人工的に付けた僅かな疵によって、肌理の細かい泡を、美しい一つの直線として立ち昇らせることができる。

   グラスの種類だけでなく、注ぎ方も重要である。香気が良い状態で広がる様に、グラスを軽く斜めに倒し、少量ずつグラスの3分の2まで注ぐ。手の熱で発泡ワインの状態を損なわない様に、グラスの脚の部分を持つ。

   グラスの洗浄には熱い湯を使用する。食器用洗剤は、発泡ワインの泡立ちを妨げるので使用せず、澄んだ湯で良く濯ぐ。油脂などの汚れは勿論、少量でも洗剤が残っていると細かな泡が立つのを妨げることになる。

 

コラム担当

Kimiko Kochs
人物 キミコ・コッホス
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