ワインの産地では、夏から秋に掛けて「ワイン祭り」が開かれる。醸造所や村が主催する小さなものから、幾つかの街が合同で開催する様な大きな祭りまで、その規模は様々である。
今回は、毎年9月最後の週末にオッフェンブルクで催される「オルテナウァー・ヴァインフェスト(Ortenauer Weinfest)」と、ブドウの収穫後の短期間だけに飲むことができる「ノイヤー・ヴァイン(Neuer Wein)」について紹介する。
「このワイン祭りの様な祭りは他にはない(Kein Fest ist wie das Weinfest)」というのは、地元の新聞 Offenburger Tageblattが数年前に使用していたタイトルであるが、オッフェンブルク市民が、我が街の「ワイン祭り」を誇りに思っていることを非常に良く表現している。
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「オルテナウァー・ヴァインフェスト」の開催時期は決まっていて、毎年9月の最後の週末である。オッフェンブルクは観光地でも学園都市でもない中規模の街だが、秋の見本市の日程と重なることもあって、毎年多くの人達で賑わう。因みに2007年は第49回目で、開催時期は9月28日(金)から10月1日(月)までだった。
オッフェンブルクは、南北に細長いバーデン地方(Baden)の真ん中に位置するオルテナウ(Ortenau)と呼ばれる地域に属する。周辺の街や村でも、盛んにワイン用のブドウが栽培され、多くの種類のワインが醸造されている。
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ワイン祭り2005年 土曜日の夜
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★オルテナウァー・ヴァインプリンツェシン(Ortenauer Weinprinzessin)
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中央が新「ワインプリンセス」の Veronika Kohler 右端は、オッフェンブルク市長の Edith Schreiner 左側は、バーデン地方のワインの女王と プリンセス達 |
ワインの女王(Weinkönigin:ヴァインケーニギン)やワインのプリンセス(Weinprinzessin:ヴァインプリンツェシン)は、ワインの栽培、製造、販売などに関わる女性の中から選考される。オルテナウァー・ヴァインプリンツェシンは、ワイン祭りの初日の開会式で任命され、王冠を前任者から受け取る。任期は1年で、次のワイン祭りまでの間、地元ワインの販売促進のために、様々な行事に参加する。
新プリンセスは、現在は別の職業に就いているが、ブドウ栽培農家の娘である。
旧プリンセスは、21歳という若さにもかかわらず、既にワイン協同組合での職歴が6年になる。今年の7月にはバーデン地方のヴァインプリンツェシンにも選ばれ、この秋まで2つのプリンセスの仕事を兼任していた。
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★ワイン業者(Winzergenossenschaften und Weingüter :
ヴィンツァーゲノッセンシャフテン ウント ヴァインギューター)
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ワイン業者は、それぞれ赤や緑、白のテントを張ったり、木造の小屋を建てている。移動販売車の場合もあり、そのカウンターの周りに人々は集う。Winzer(ヴィンツァー)とはブドウ栽培兼ワイン醸造業者、Winzergenossenschaft(ヴィンツァーゲノッセンシャフト)とはワイン醸造共同組合、ブドウ栽培農業協同組合のこと。そしてWeingut(ヴァイングート)とは比較的規模の大きなブドウ農園である。
今年参加したワイン業者は、11のヴィンツァーゲノッセンシャフト(協同組合)と、11のヴァイングート(個人経営)の22社で、200種類以上のワインがこの祭りのために用意された。
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ワイン祭り2006年 日曜日の午後
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地元の新聞の報告によると、2007年にワイン祭りを訪れた延べ人数は約53000人。初日(金曜日の夕方)は、開会宣言直後に生憎の雨に見舞われたために出足が鈍ったものの、残り3日間で記録を伸ばした。この4日間に、約15000個のグラスが売れたそうである。
ブドウの品種や等級、味のタイプ、収穫年などの違うワインを、それぞれの業者が10~15種類ずつ取り揃えている。等級別では、「Q.b.A.」と呼ばれる生産地限定上級ワインと、 生産地限定格付上級ワインの一番下に格付けされた「カビネット(Kabinett)」が多く、「シュペートレーゼ(Spätlese)」や「アウスレーゼ(Auslese)」は少ない。収穫年は2005~2006年の殆どだが、2003や2004年のワインもある。販売単位は、グラスとビンで、0,1リットル入りのグラス1杯が1,00~2,50ユーロ。
リストの中で一番多い品種は、白ワイン用の「リースリング(Riesling)」で、地元オルテナウでは、「クリンゲルベルガー(Klingelberger)」の名前でも親しまれている。「シュペートブルグンダー(Spätburgunder)」を使用した赤ワインやロゼも、大抵どの業者でも等級や味のタイプが違うものを数種類扱っている。その他、白ワイン用品種の「グラウブルグンダー(Grauburgunder)」や「ヴァイスブルグンダー (Weißburgunder)」、「ミュラー=トゥルガウ(Müller-Thurgau)」や「シャドネイ(Chardonnay)」、「ショイレーベ(Scheurebe)」、「ゲヴゥルツトラミーナ (Gewürztraminer)」などが揃っていて、数え上げると際限がない。
大規模なワインの試飲会(Weinprobe:ヴァインプローベ)さながらである。余程の大酒飲み(!!)でもなければ、4日間通い詰めても、全てのワインを飲み比べることはできないと思われる。
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ワイン祭り2007年 日曜日の午後
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★ワイングラス(Weinglas:ヴァイングラス)
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エコロジー先進国のドイツでは、屋台で飲み物や食べ物を販売する際に、使い捨ての容器を使うことは少ない(以前と比べると使用率が多少増えた様に思うが・・・)。良く見掛けるのは、焼きソーセージ(Bratwurst:ブラートヴルスト)やフライドポテト(Pommes frites:ポム・フリッ)をのせるための四角い紙皿(再生紙使用)である。ではそれ以外の場合はどうするのかというと、グラスや皿、ナイフ、フォークなどを全て貸し出しするのである。注文した品を受け取る時に貸し出し料(Pfand:プファント)を取られるが、飲食の後、元の店に持って行けば払い戻して貰えるシステムである。紛失や破損もこれによって随分と防がれているのではないかと思う。殆どの屋台や移動販売車は、食器洗浄機を持っているので、食器を使い回すことができるし、大量にプラスティックなどの「燃えないゴミ」を出すこともない。
但しワイン祭りの場合は少し違っている。どの屋台でもワインの種類を書いた用紙の一番下に、同様の文章が書いてある。
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ワインのビンは返却できるが、グラスは不可能なのである。何処かの屋台で最初にグラス付でワインを買い、飲み干したらそのグラスを持って別の屋台に移動。再度そのグラスを使用する。それを繰り返して、最終的に家路につく時には持って帰ることになる。もしもワイングラスを買うのを節約しようと思うのであれば、以前に買ったグラスを持参することもできる。但し規格があるので、どのグラスでも良いという訳ではない。ワイン祭りでは、0,1リットルのメモリの付いた物に限られる。
以前は右側の小型のグラスが主流だったが、2000年以降、近隣のワイン祭りでは足付きのグラスのみが販売されている。ワインを味わうという点においては、現在の足付きグラスが勝っているが、小さいグラスは胸ポケットに納めることができたので、携帯に便利だった。
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★新ワイン(Neuer Wein :ノイヤー・ヴァイン)
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新ワインは、一般的には「フェーダーヴァイサー(Federweißer)」と呼ばれている。ブドウを収穫する季節だけの飲み物で、天候にも左右されるが、早熟タイプのブドウの収穫が始まる8月下旬頃から市場に出回る。これは、ブドウの絞り汁を発酵させる途中の段階の飲み物で、白濁していて甘酸っぱい。酵母、乳酸菌の他、ビタミンB1、B2、B6も豊富である。
白ワイン用のブドウを使ったものが多いが、「フェーダーローター(Federroter)」と呼ばれる赤いタイプもある。
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左:ワイン祭り2006年土曜日の夜 右:ワイン祭り2007年 日曜日の午後
1/4リットルの新ワインの値段は1,80ユーロ |
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アルコール含有量4%から出荷可能となるが、発酵を止めていないので、どんどん変化し続ける。最終的にはアルコール度数が10%前後まで増え、味も辛口に変化する。常時炭酸が発生しているので、容器を密閉すると破裂する恐れがある。蓋を緩く閉めて、発酵速度を遅らせるために冷蔵するが、長期の保存には向いていない。
地方によって「ビッツラー(Bitzler)」、「ザウザー(Sauser)」、または「ラウシャー(Raushcer)」などの異名がある。隣国オーストリアでは「シュトゥルム(Sturm)」と呼ばれている。
新ワイン用のグラスは、他のワインを飲むのに使えない(一杯分の分量も違うため)ので、注文した店に返却できるシステムを取っていた。
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★玉葱のパイ(Zwiebelkuchen :ツヴィーベルク-ヒェン)
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赤ワイン用のブドウを使用した新ワインと
自家製のツヴィーベルク-ヒェン。 知人の経営する「Gasthof zur Blume」にて
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新ワインと組み合わされる伝統的な食べ物といえば、玉葱とベーコンのパイである。 家庭でも作られるが、パン屋や菓子屋で買ったり、喫茶店や大衆的なレストランで、新ワインと共に味わったりすることもできる。 「ツヴィーベルク-ヒェン」が焼かれるのは、基本的に新ワインの出回る時期のみである。
季節を問わず何処の祭りでも見掛けるのは、焼きソーセージの屋台である。フライドポテトも定番のひとつ。
この地方で好まれているのは、極薄く伸ばした生地の上に、味付けしたサワークリーム
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フラーメンク-ヒェンの屋台 |
を薄く塗り、玉葱の微塵切りとベーコンの薄切りを少し散らして高温で焼き上げた「フラーメンク-ヒェン(Flammenkuchen)」。薄い木の板か、大きめの紙皿の上で大雑把に切り分けてくれる。どの祭りでも焼き立てを頬張っている人が多く、屋台の前にはいつも長い列ができている。
「フラムク-ヒェン(Flammkuchen)」や「ラームク-ヒェン(Rahmkuchen)」とも呼ばれる。
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市庁舎前のオブジェが
ワイン祭りのポスターのマスコットの正体。
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