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連載コラム 独逸見聞録
これから度々話の舞台となるのはオッフェンブルク(Offenburg)。ドイツの西南部のバーデン・ヴュルテンベルク州でも西の端、ライン河とシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中間に位置する街です。この街に在住している辻調グループ校の卒業生(そして元職員)が、独断と偏見(?)を時に交えながら、食文化を中心とした情報をお届けします。
ヴァインショルレとグリューヴァイン 〜ワイン(其の参)〜
   今回は、ワインの番外編として、「ヴァインショルレ(Weinschorle)」と「グリューヴァイン(Glühwein)」について紹介する。
    「ヴァインショルレ」はワインの水割りで、特に夏場に「清涼飲料」として好んで飲まれている。寒い時期に好まれる「グリューヴァイン」は香辛料入りの温かいワインで、クリスマスマーケットやスキー場などで良く見掛けられる。

ドイツのクリスマスマーケットで見掛けられる「グリューヴァイン」の看板。専門店は勿論のこと、焼きソーセージやクレープを販売している屋台でも供されている。   ドイツのクリスマスマーケットで見掛けられる「グリューヴァイン」の看板。専門店は勿論のこと、焼きソーセージやクレープを販売している屋台でも供されている。

ドイツのクリスマスマーケットで見掛けられる「Glühwein(グリューヴァイン)」の看板。専門店は勿論のこと、焼きソーセージやクレープを販売している屋台でも供されている。


★ヴァインショルレ(Weinschorle)

   ワイン(Wein:ヴァイン)をミネラルウォーター(Mineralwasser:ミネラルヴァッサー)で割った混合飲料で、レストランやカフェの品書きにも載っている。ドイツでは、喉の渇きを潤す目的で、夏場に「清涼飲料(Erfrischungsgetränk:エァフリッシュングスゲトレンク)」として好んで飲まれるが、手頃な値段でワインを楽しむことが難しい日本では、勿体無くてなかなか実行に移し難いかも知れない。

   白ワインの水割りであれば、ヴァイスヴァインショルレ(Weißweinschorle)、赤ワインの場合はロートヴァインショルレ(Rotweinschorle)と呼ぶ。フルーティーで酸味のあるタイプの白ワイン、タンニンが少なめの(苦味が少ない)赤ワインなどが合うといわれている。また、普通の炭酸水で割った場合はザウアー(Sauer)、レモネードのように甘味の付いたものはジュース(süß)と分類される。すっきりとした味の「ザウアー」は男性、甘口の「ジュース」は女性に好まれているという。
大衆的なレストランや居酒屋では、レーマーと呼ばれるグラスで供されることが多い。

大衆的なレストランや居酒屋では、レーマー(Römer)と呼ばれるグラスで供されることが多い。

   ドイツのミネラルウォーターは炭酸ガス入りが多く、しかもフランスやイタリア産のものと比べるとかなりきつく感じられる。「ヴァインショルレ」を作る際には、ワインの風味を損なわないために、塩分の少ない炭酸水を選ぶと良い。
   基本的な混合率は、ワインと水が1対1であるが、夏場には「Sommerschorle(ゾマーショルレ)」と呼ばれる炭酸水の割合が高い(故に薄い)ものが好まれる。
   隣国のオーストリアでは、「ワインが50%以上、水が50%以下」ということが法律で定められている。アルコール含有量についても、4,5%vol.という最低基準が設けられている。
   「Gespritzter(ゲシュプリッツター)」や「Spritzer(シュプリッツァー)」などとも呼ばれるが、全てが同じ物を指しているという訳ではないという。地域によって、混ぜ合わせる飲み物やその割合などが微妙に異なる場合があるので、注意が必要である。

★グリューヴァイン(Glühwein)

   香辛料入りの温かい(熱い)ワインで、主に寒い時期に、クリスマスマーケット(Weihnachtsmarkt:ヴァイナハツマルクト)や謝肉祭の屋台、スキー場などで良く見掛けられる。グリューヴァインの専門店は勿論のこと、焼きソーセージやクレープなどを販売している屋台でも供されている。

   日本でも「グリューワイン」の名前で、少しずつ知名度が高くなりつつあるのだろうか・・・。ただ気になるのは、独英混合の外来語となっていることである。良く使われる「ホットワイン」も和製英語で、英語圏では「Mulled wine」、フランスでは「Vin chaud」と呼ばれている。
   赤ワインを使ったものが主流だが、白ワインを使ったグリューヴァインもある。例えば、イタリア北部では
「グリューフィクス」の原材料は、乾燥させたオレンジの皮、シナモンとクローブで、使い易いティーバッグ状になっている。750mlのワイン1本に対して1パックを使用する

「Glühfix(グリューフィクス)」の原材料は、乾燥させたオレンジの皮、シナモンとクローブで、使い易いティーバッグ状になっている。750mlのワイン1本に対して1パックを使用する。

白ワインのグリューヴァインが、そしてオーストリアでは赤と白の両方が愛飲されている。

   主材料は、赤ワインと甘味を付けるための砂糖または蜂蜜、そしてオレンジやレモンの表皮や果汁である。
   主な香辛料は、シナモン(Zimt:ツィムト)とクローブ(Nelken:ネルケン)で、大抵どのレシピにも載っている。
   また、アニス(Anis:アニス)やスターアニス(Sternanis:シュテルンアニス)、カルダモン(Kardamom:カールダモン)やジンジャー(Ingwer:イングヴァー)、それにヴァニラ(Vanille:ヴァニレ)などを好みに合わせて加えても良い。

スーパーマーケットなどで手に入る既製のグリューヴァイン。温めるだけで手軽に楽しめる。

スーパーマーケットなどで手に入る既製のグリューヴァイン。温めるだけで手軽に楽しめる。

   スーパーマーケットなどで手に入るビンやテトラパック入りの市販品は、温めるだけで手軽にグリューヴァインを楽しむことができる。既製・自家製に限らず、「グリューヴァイン」はゆっくりと時間を掛けて温めることが肝心で、絶対に沸騰させてはならない。
   クリスマスマーケットや謝肉祭の屋台で見掛けたのが、大小のグリューヴァイン加熱・保温用の器械である。屋台の中央に置かれたそれは、「グリューヴァイントップフ
(Glühweintopf)」または、「グリューヴァインヴェァマー
(Glühweinwärmer)」と呼ばれる。自動温度調節式の寸胴鍋で、下の方に蛇口が付いている。

   クリスマスマーケットのように、長期間(場合によっては数週間)に渡って営業を続ける屋台では、耐熱性のティーグラス(Teeglas:テーグラス)や磁器のマグカップ(Becher:ベッヒャー)などで供されることが多い。
この場合には、注文した品を受け取る時に貸し出し料(Pfand:プファント)を取られるが、飲み終わった後、元の店に持って行けば払い戻して貰えるシステムである。
   グリューヴァイン用のカップは、地域や年によって色や形などデザインが異なるので、コレクションしている人も多い。
   残念ながら、短期間(例えば週末のみなど)しか営業しない場合には、使い捨て用のカップを使うスタンドが少しずつ増えているようである。

 

コラム担当

Kimiko Kochs
人物 キミコ・コッホス
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