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連載コラム 今日は何飲む?
いろんな出会いがあります。意外な出会い、運命的な出会い。出会いからは何かが生まれます。このコラムはそんな“出会い”の話です。出会いを求めている主人公はワインや日本酒などのアルコール飲料。相手は料理、時としてフレンチ、イタリアンあるいは日本料理かも知れません。どんな巧妙な出会いが料理人の手で演出されるか。ぜひ楽しみにしてください。
みな都(前編)
「食いだおれ」大阪、中でも「南」といえば市内でも最も大阪らしい繁華街として有名です。歴史ある商店街心斎橋筋から清水通りを少し東に向かえば、ネオン街のビルの1階に『和食と器 みな都』があります。カウンター7席と座卓8席という小じんまりとした店内にはジャズが流れ、穏やかな空気が漂っています。店名にもあるように「美味しい料理(料理)をより美味しそうに盛り付けて(器)」食べさせてくれる店です。店主で料理長の湊谷芳弘さんは、辻調理師専門学校の卒業生で、高級料亭の代表格『吉兆』で仕事をされた後、辻調グループ校の職員となり、その後、複数の業態の日本料理店で料理長を務めた方。この経験豊富な料理長の作り出す料理と選ばれた日本酒の相性は?


主人公

滝水流(純米酒)三重県 瀧自慢酒造
三重県の山岳部伊賀盆地にある蔵元。酒米は地元で契約栽培される山田錦が中心。水は赤目四十八瀧からの伏流水(軟水)を使用。大量生産ではないこだわりの銘柄を造り出している。『はやせ』と読むこの銘柄は、麹米に「山田錦」、掛米に「五百万石」を用い、精米度60%まで磨き上げた辛口純米酒。日本酒度:+6 酸度:1.5 アルコール分:16.5%

加賀美人(本醸造)石川県 吉田酒造
「加賀酒」本来の甘口の酒。<初添><仲添><留添>という通常の三段仕込みに、醪の最後の段階でもち米の蒸米を四段五段とさらに加えることによって、上品な甘口風味を実現している。原料米は「五百万石」と「白山もち」、精米歩合はそれぞれ65%と70%。日本酒度:−11 酸度:1.3 アルコール分:15.5%

喜楽長(純米吟醸・極辛口)滋賀県 喜多酒造
「喜ぶ・楽しく・長く語らいながら」飲んで欲しいという願いを込めて命名されたこの酒は、鈴鹿山系愛知川の伏流水で仕込まれた八日市の地酒。原料米は「山田錦」、精米歩合は55%。ただの辛口ではなく、喉越しは爽やかで辛さが余韻を残す。製造元は食中酒としてすすめている。日本酒度:+14 酸度:1.6 アルコール分:17〜18%


出会いを演出する人

日本料理『和食と器 みな都』(大阪・東心斎橋)

店主&料理長 湊谷 芳弘(調理24期生、辻調グループ校元職員)


出会った料理

先付け しゃこ 蛍烏賊 生姜酢掛け
飯蛸  菜種  あっさり煮
造り よこわ平造り
鯛そぎ造り
関鯖そぎ造り おろし生姜 洗い葱
 より胡瓜 山葵
 土佐醤油 土佐酢
焼物 白甘鯛塩焼き 酢だち
凌ぎ にぎりずし 三種
 鰻蒲焼き 穴子白煮 あおり烏賊
油物 白魚天婦羅 銀杏素揚げ
 ミルク塩
叩き牡蠣 パン挟み揚げ
 タルタルソース
煮物 合鴨ハリハリ煮
 柚子胡椒
食事 くらまご飯 青紫蘇
香の物 胡瓜 白菜
赤だし 湯葉
菓子 モカアイスクリーム



「今日は何飲む」野次馬隊
Y:本業は某広告制作会社のコピーライター。日本ペンクラブ協会会員。ワイン関係の著作も多く、クラッシック音楽への造詣も深い。著作に『今日からちょっとワイン通』『武満徹対談集』。
M:才能豊かな女性。辻調グループ校のスタッフのひとり。いろいろな仕掛けを企む人。食べることと飲むこととヴィオラを演奏することをこよなく愛する。とりわけ飲むことは・・・
S:男性。どちらかというと晩熟型(悪く言えば進化が遅い)。趣味はアイロンがけと靴磨き。このコラムの担当者。大の猫好き。
K:辻調グループ校日本料理教授。ケニア大使館やタイのホテルの日本料理店などに出向した経験をもつ。酒は好きだが健康上現在は控えているらしい。


料理の前に3種類のお酒を賞味する

Y:この喜楽長滝水流は両方とも辛口ですけれど、差が出ますか?
湊谷氏:そうですね。同じ辛口なんですが、タイプが違います。喜楽長のほうは極辛口となっていますけれど、いわゆる「プラス十何度」という辛さとは違ってバランスのいい辛さです。そんなに「辛い」って感じは受けないんです。滝水流のほうはお客様の中には、食事をしながらですと「甘い」と感じられるかたもおられます。料理なしに味わうと確かに辛口なんですけれど。
Y:じゃあ、その3種類を3つのお猪口に分けて、味わっていくことにしましょう。
S:一番左に喜楽長、真中に滝水流、左に加賀美人と。
喜楽長(きらくちょう)Y:では、喜楽長から。

S:日本酒もやはりワイン賞味の時のように空気を口に含ませたほうがいいんですか?

Y:そうですね。そのほうが香りが出るでしょうね。蔵元の人たちはみんなそうしますね。

S:ワインと同じように、目(色)・鼻(香り)・口(味)という風にするわけですよね。

Y:ただ、ワインと違うのは、基本的にこういう風に口の部分が開いたもので飲みますので、香りを楽しむための構造にはなっていないんですね。実際、消費されている現場が香りを楽しむ方向になっていませんから。もし、特別にテイスティング用のグラスなんかで試飲してみるとまったく別物になってしまう可能性もあります。
M:どうですか?
Y:喜楽長を飲んで)うん、吟醸香もそんなには強くないし、酸がしっかりしていますね。
K:嫌な辛さではないですね。
Y:最近の妙に洗練された酒に比べたら、昔ながらの日本酒的な酸がかちっとあるというタイプの酒ですね。
滝水流(はやせ)滝水流に移って)

Y:これはきれいなお酒ですね。非常に上品な。

S:喜楽長とはまったく違いますね。

Y:バランスもきれいにとれたお酒です。それに先程ご主人が「少し甘味を感じるかも知れません」とおっしゃっていましたが、確かに全体的に優しいお酒なので、甘さを感じるというのもわかるような気がします。

S:でも、これは辛口なんですよね?

Y:辛口です。かなり辛口だとは思いますけれど、なんて言いますか、お米の甘さみたいなものを感じますね。そういう意味では上手に造っていると言えますね。喜楽長にあった独特の蔵の匂いのようなものもなく、とてもクリーンなお酒ですね。そういう意味では現代的なお酒なんでしょうね。
加賀美人(かがびじん)加賀美人に移って)

Y:こりゃ、おもしろいな。

S:なんかすごくフルーティーな香りがするのですけれど…。

Y:そうですね。梨のような香りがありますね。

M:本当ですね。梨ですね。

Y:柑橘系とかではなく、やさしいフルーツの香りですよね。熟したような。


先付け:しゃこ 蛍烏賊 生姜酢掛け
    飯蛸 菜種 あっさり煮

S:日本酒の場合もワインのように、この料理にはこの酒といった基本的な相性ってあるんですかね。
Y:例えばつけ焼きみたいな料理だと、多少甘口のお酒のほうが合うでしょうね。
K:味の濃い料理には甘口、とはよく言われますね。
Y:甘い味付けの料理の時に喜楽長のような辛口のお酒だと、風味がぶつかって苦味が立ってくるようなことがあるんですよ。
S:するとお造りなどは辛口が合うという?
Y:公式的にはそうですね。ただ、ぶつけたほうが面白いこともありますから。
【先付けを食べて】
先付け(しゃこ 蛍烏賊 生姜酢漬け)Y:この料理などだとやはり加賀美人は締まりのない甘さになりますね。

K:そうですね。

Y:何も食べないで飲んだときと比べると少し砂糖水っぽいような奥行きのない甘さになっちゃうんで、これくらいの繊細な料理の場合はしんどいってことですね。一番風味が変わったのは滝水流ですね。喜楽長は癖のない、きれいなお酒になりましたね。滝水流は合います。この酒の中にある奥行きとか、ちょっとしたほろ苦さとか、いろんな風味がふわっと立ってきますね。
K:それぞれの風味が変わりますね。
S:日本酒の風味を左右する要因っていうのは何でしょうね?
Y:まず水ですね。軟水なのか硬水なのか。軟水だとやはりやさしい味の酒ができると思います。反対にミネラルの多い硬水だったらやはり男性的な味の酒ができやすい。それから米ですね。酒米というと品種のことを言いますけれど、品種だけではなくて毎年その米の品質は変わると思います。ワインと同じようにその年ごとの差っていうのは確実に出ているはずです。
S:だから良質の水が入手できる場所に蔵元が多いんですね。
Y:ええ。それと菌の作用ですね。そして、もちろん米の磨き方(精米度)。ま、一番影響するのは麹と酵母でしょうね。
S:杜氏の技量というのは?
Y:そりゃ、もう決定的にありますよ。それに酵母ですね。酵母によってすごく差が出ます。それこそ滝水流の醸造元なんかはいろんな酵母を使い分けていると思いますね。中にはリンゴ酸をたくさん出す酵母を使った製品もあるようです。
【先付けの菜種を食べながら】
先付け(飯蛸 菜種 あっさり煮)Y:菜の花と飲むとこれも奥行きが出ますよね。基本的に日本酒は料理と合いますね。

S:加賀美人の風味がさっきとは全然違う。砂糖水のような風味がなくなった。

M:うん、まったく違いますね。

K:醤油のアミノ酸ですかね。

M:喜楽長もずいぶん飲みやすくなった。

K:違うなぁ。これだけ変わるんですね、いや〜初体験させていただきました。加賀美人は甘いと思っていましたが、これだとおいしいですね。この味の差は本当に面白いです。


前編はここまで。先付けと一緒に飲んだ三種類の日本酒は見事に化けました。やはり日本酒も何を食べるかでその風味が微妙に変化することが明確にわかりました。まだ“先付け”だけしか食べていませんが、なんとも言えず「ほっ」とする味付けです。後に続く“造り”から“食事”(ご飯もの)まで、ますます楽しみになってきました。
(みな都 後編は、3月4日公開予定です)

『和食と器 みな都』出会いの舞台

日本料理『和食と器 みな都』

〒542-0083
大阪市中央区東心斎橋1-15-20
リッツビル1F
Tel:06-6253-2633
定休日:日曜(月曜祝日の場合は日曜営業)
営業時間:午後5時30分〜午後11時(止)


*姉妹店:日本料理『みなとや』

〒542-0083
大阪市中央区東心斎橋1-13-20 カネコマビル2F
Tel:06-6253-6336
営業時間:午前11時30分〜午後1時30分(止)
営業時間:午後5時30分〜9時(止)


コラム担当

野次馬隊
人物 須山 泰秀
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