前回に引き続き、『サリュー』での“出会い”の後編をお届けします。赤ワインの出会いと演出家(オーナーシェフ&マネージャー)との話など。前編では飛び入りのワインが入るなど意外な展開でした。今回も意外な結末が皆さんを待っています。ぜひ、最後までおつきあいください。 |
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コルナス、“白金豚バラ肉、黒胡椒風味”に出会う |
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Y:う〜ん、すごくおいしいけど、このワインとの相性は・・・。このソースがすごく甘いんで、どうしてこのワインを合わせたのかなぁ?さっきと同じようにワインが別のものになっちゃうんで、もちろん変わってもいいんですけれど。それで強調されるものが魅力になればいいんだけれど、むしろ押さえ込んでるというか。
M:なんかワインの風味があまり感じられなくなりました。
F:ロゼなんかの方がいいんではないですか。たとえばマテウスのロゼとか。
Y:合うかも知れない。
S:このワイン、鴨とはものすごく合いますよ。
Y:そうでしょうね。相性っていうのは好き好きですからね。違うものをぶつけて、どんなものが出てくるかっていう冒険をするということはありますからね。でも、ぶつけてみて、ぶつかり合うんじゃなくてなじむ方がいいぞっていう部分はありますから。まあ、その冒険によって予想もしなかった“出会い”もあるわけで・・・(笑)
F:イメージとして良さそうだっていうのと、実際に食べていいというのは相当違いますよね。
Y:あれっ?なんでこっちが合うんだろうってこともありますよね。やっぱりすごく微妙なところのニュアンスですね。もし、合わせていないと感じないようなニュアンスが風味を決定してしまうことがあるわけですから。実際には無理なことなんですけれどね。それにしてもこの組み合わせは変わっていましたね。 |
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森本氏、白金豚とこの料理について語る |
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S:白金豚の料理のソース、そうとう甘かったんですけれど。
森本:あれはマーマレード使っているんですよ。
F:イメージは豚の角煮ですかね。
森本:そうですね。けっこう煮詰めたソースなんですね。豚のバラ肉って結構脂をかんでいるじゃないですか。ですからそれに負けないソースをと思って、マーマレードに黒胡椒をきかせてやったんですけれどね。だめでした?
Y:料理はすごくおいしかったんです。完璧だったんです。ただこのワイン(コルナス)との相性が・・・
森本:いまいち?
Y:いまいちって言うか、もうちょっと良くなかったかな(笑)って。
S:何か特別な狙いでもあったのかなっていう気がしていたんんですよね。
森本:別に特別な狙いは・・・
Y:いや、つまりねこのワインって、すごくタンニンなんかがあるように見えるけれど、実はまだ若いから果実味、甘さが支えていると思うんですよ。で、ソースの甘さでこの果実味がポンと飛んじゃうのと、今伺ってわかったんだけど、マーマレードの甘さに負けてしまって、何だかそっけないドライな感じのワインに変わっちゃう。似たものをぶつけてしまって、料理がおいしいからワインが負けてしまったって感じがするんですよ。
森本:最初、彼(鳥山氏)は仔牛のビール煮にしようって言ってたんですよ。
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Y:うん、それは何だかわかるねぇ。
森本:で、僕が豚を召し上がって頂こうって言って、コルナスだと少し軽いかなとも思ったんですよ。どこまで合わせられるのかよくわからなかったので、ね。
S:一品目のトコブシの料理ですけれど、あれはエスカルゴの代わりにトコブシを入れたってことですよね
森本:そうです、そうです。
S:下にウニが敷いてあった。
森本:そうです。ウニとシャンピニョンのデュクセルですね。何てことのない料理なんです。こう一つの鍋でぐつぐつした感じっていうのが、おいしさがまとまっているようで好きなんです。料理的にも一つの鍋や器の中で仕上げていくというのが好きなんです。主素材、付け合せなんかを別々に仕上げて寄せ集めてというのがフランス料理じゃないですか。でも、バスク地方なんかにいく一つの土鍋の中でいろんな素材を料理していくというのがあって、これはなかなか深いんですよ。 |
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鳥山氏のお話 |
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S:オート=コート・ド・ニュイにトコブシを選ばれた理由はあるんですか?
鳥山:アペリティフにお出ししたコンドリューでもいいかなと思ったんですが、ちょっと難しくなりそうだったので。コンドリューに一番合いそうなツブ貝の料理をお出ししようかなとも思ったんですが、コンドリューというワイン自体がパシッと何かに合うというものでもないので、オート=コート・ド・ニュイはブルゴーニュのワインですし、作り手が特殊なもので、ちょっと面白いかなと思ってトコブシにしようと。トコブシがバターをたくさん使った料理なんで、酸味が欲しいですよね。それでオート=コート・ド・ニュイの2000年は酸味が多かった年なので。
S:エスカルゴの料理にシャブリを合わせるようなものですか?
鳥山:シャブリとはちょっと違うんですよ、このワインの方が力強いですよね。ミネラルの感じがちょっと違うんですね。
F:コンドリュー、なかなかおいしかったですよ。
Y:実はトコブシとも合わせてみたんです。ほんと良かったです。
鳥山:単体で飲むと、あまり特徴もないし、酸味もあまりなくって。でも、料理と一緒に飲むとすごくおもしろいワインなんですよ。
F:さっきも話していたんですけれど、このコンドリューは割とシックじゃないですか、それほどビオニエが強調されているわけでもないし。それがあのトコブシのニンニク風味と一緒に飲むと、すごく・・・
Y:すごくコンドリューらしい香りがふゎんと上がってくるんだよね。
鳥山:作り手がいいですね。潜在能力を持つワインに仕上がっています。あまり派手ではないんですが、料理と合わせたりするとコンドリューらしさが出てくるんですね。
F:本当に品のあるコンドリューでした。
Y:料理ともとても合っていて、お互いにいい部分を引き出してきている。
鳥山:ビオニエって早飲みっていうイメージがあるんですけど、良い作り手のコンドリューは全然ひねた感じにならないんですよ。
Y:オート=コート・ド・ニュイとあの料理を合わすと酸味のキレイさみたいなものが消えちゃって、むしろ、ウニがからんでいるからだとは思うけれど、えぐ味が立っちゃうんような気がする。ワイン自体の魅力が引き出されないで、何だかブレーキがかかってしまったかぁって感じがします。
鳥山:僕は厳密な料理との相性って良くわからないんですよ。ワインは気分かなって思っている部分がありますので。
Y:いや、僕も基本的にワインと料理の相性っていうのは個人の好みでしかないと思っているんですけれど、ただこの合わせ方に関してはわざとぶつけたのかなって思ったわけ。ぶつける時って、何か見えなかったりするものが見えてきたりするでしょ。で、今回はあまり魅力的でないものが見えたりしたので、どういう意図があったのかなって。
鳥山:僕は合うものってあまりないんじゃないかなと思うんです。確かに素晴らしい出会いはあるんですけれど、毎回毎回そうなのかっていうと、どうかな?って思うんです。 |
Y:基本的には美味しい料理と美味しいワインがあれば、いいんんですよ。ただ、たまにブレーキをかけ合うということも起きてしまうんですよね。
鳥山:僕は相性というより、やっぱり楽しくなるような、見る人が見ればわかるというようなワインリストを作ってます。ま、遊びを入れるってことは考えているんですけれど。皆さんに好きなものを食べて、好きなものを飲んでいただければいいかなって。
S:それもひとつの合わせ方かも知れないですよね。
Y:そりゃそうですよ。みんなが違うものを食べますからね。
S:いずれにしろ難しい。最後にこの店にワインリストに関して簡単なコメントをお願いします。 |
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ワインリストのこと |
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Y:ちょっとマニアックなんだけれど、とてもいい醸造元のワインをポツンポツンと上手に集めてきている感じで、たぶんここのオーナーが自分で好きだと思っているところのものを選んでいるなっていうのはよくわかります。そういう意味じゃ、自分の料理に合う、それでいて好きなものを選んでいるなって感じがよく出ていると思うんですね。ただ、このまま見せてもわかる人がいるかなってのが、ね。ちょっと説明でもしてもらわないとわかりにくい。あまりにもマニアックなものが多く入っていますから。ほんとうは一行だけでも説明があれば嬉しいんですけれど。あるいは鳥山氏が全部説明して、料理に合わせて適切なアドヴァイスをしてくれるのかもしれないので、それだったらいいと思うんです。
Y:でも、値段はあまり高くないですよね。
F:少ないロットのものをポツンポツンと買っているのでしょうから、ワインリストの内容は頻繁にかわるでしょうね。 |
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今回の出会いを振り返って |
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野次馬隊初仕事でいろいろと不備な点がありましたが、次回はもう少し慣れてきているはずです。
さて今回の“出会い”は、予定していた主役たちの相性があまり良くなかったようです。けれども飛び入りの脇役(コンドリュー)が素晴らしいキャラクターで、素敵な“出会い”がありました。“出会い”ってこの偶然性が楽しいんですよね。確かに鳥山氏のおっしゃるように完全な相性ってないのかも知れません。そんなに相性は合わないけれど楽しいってことはありますからね。でも野次馬隊はどこかに完全な予定調和なる“出会い”があるのではと思って、また出かけてゆくのです・・・ |
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出会いの舞台
レストラン『サリュー』
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-4-10 鴻貴ビル1階 Tel:03-5791-2938 Fax:03-5791-2938 定休日:日曜 営業時間:12:00〜14:00LO / 18:00〜22:00LO |
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