リヨンの中心部にあるベルクール広場(ベルクールBellecourは「美しい内庭」の意味)から南へ伸びるシャリテ通り。骨董店が多いことで有名なこの通りの中ほどに、リヨンを訪れた場合はぜひ見逃せない織物博物館があります。博物館の入り口からローヌ河へと向かう通りにきれいな赤色の外装のレストラン『トマ』があります。リヨンと言えばリヨン料理というように少しクラッシックな美食の街のイメージがありますが、最近は“自分の料理”を高いコストパフォーマンスで提供する若い料理人の店が注目されています。トマ・ポンソンさんはその筆頭といえるでしょう。あらゆる料理にオープンなマインドを持ちながら、自らのアイデンティティをしっかりと保っています。選んだワインも故郷のローヌ渓谷のもの。これからのリヨンの料理界を背負う若い料理人の“出会い”の演出。楽しみです。 |
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主人公
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アペリティフ
サン=ペレ 2001(ジャン・リヨネ)コルナス
St-Pray 2001 (Jean Lionnet)Cornas |
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白ワイン
サン=ペレ 2001(アラン・ヴォージュ)コルナス
St-Pray 2001 (Alain Voge)Cornas |
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赤ワイン
コルナス キュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2002(アラン・ヴォージュ)コルナス
Cornas Cuve Vieilles Vignes 2002 (Alain Voge)Cornas |
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デザートワイン
エルミタージュ ヴァン・ド・パイユ 1996(カーヴ・ド・タン・レルミタージュ)
Hermitage Vin de Paille 1996 (Cave de Tain
l’Hermitage) |
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出会いを演出する人
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トマ・ポンソン Thomas PONSON:オーナーシェフ。料理人としてのキャリアの出発点は『ミシェル・シャブラン』(ポン・ディゼール)の店から始まる。続いて『ル・シャントクレール』(ニース)のドミニク・ル・スタン、『オーベルジュ・ド・リル』(リヨン)のジャン・クリストフ・アンサネイの元で働き、『ラ・ヴィラ・ガリシ』(エクス=アン=プロヴァンス)で就業し、そして自らの店をオープン。料理へのこだわりは季節と素材、中でもジビエ類、キノコ類には並々ならぬこだわりを見せる。ワインに関しては自らの出身地であるローヌ渓谷産のワインをこよなく愛している。次世代を担う若手料理人の注目株である。 |
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出会った料理
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アミューズ・ブーシュ
カクテルグラスに盛り付けた野菜とラングスティーヌのタルタル
Tartare de lgume et langoustine en superposition en amuse‐bouche
アントレ
カレー風味のムール貝、ガンバ海老、野菜の冷製ラザーニャ、冷たいグリーンピースのヴルーテ、ランド産フォワグラ、トマトのコンフィ
Lasagne maison servie froide aux moules, gambas et lgumes au curry, velout glac de petits pois, foie gras landais et tomates confites
肉料理
シャロレー牛 三種の調理法で:パルロン(かた肉)の赤ワイン煮、アントルコートのグリエ、すね肉のポトフ
Gnisse charolaise en trios cuissons: paleron brais au vin rouge, entrecte grille et jarret en pot-au-feu
チーズ
サン=マルスラン、シェーヴル・サンドレ、ロカマドゥール、パルメザン
デセール
キャラメリゼしたパン・ペルデュ、赤いフルーツのポワレ、キャラメル・サレ、キャラメルのアイスクリーム
Pain perdu caramlis, pole de fruits rouges, caramel au beurre sal et glace caramel
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「今日は何飲む?」野次馬隊(特別編成)
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ピエール・ベアル(Pierre Bal)。辻調グループ・フランス校ディレクター。
ヤン・キュドネック(Yann Cudennec)。辻調グループ・フランス校サブディレクター。
中野広幸。辻調グループ・フランス校主任教授。今回このレポートを寄せている 。
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●アペリティフとアミューズ・ブーシュ
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アペリティフはサン=ペレSt-Prayの2001年ものの白ワイン。生産者はコルナスCornasのジャン・リヨネJean Lionnet。このワインのセパージュはマルサーヌ種Marsanne 90%、ルサーヌ種Roussanne 10%。色は金色に輝き透明度も抜群。香りはアプリコット、もしくはグレープフルーツなどの柑橘系で、砂糖煮になった果物の香りも少しした。風味は、ルサーヌ種からと思われるしっかりした骨格があり、スパイシーで、また、まったりとした感触に少し酸味が利いており、アペリティフにはもってこいの白ワインである。アーモンド、ドライフルーツの味も少しだけあり、木樽から作られる白ワインにありがちなヴァニラ、トーストのニュアンスは全くない。シェフの説明によると、このワインは純粋にステンレスタンクのみを使用して作られているとのこと。ワインの性格付けをほとんどセパージュに任せて作ったかのようで、木の香りを加えるなど複雑にするわけでもない。
これに合わせた料理は、カクテルグラスに盛り付けた野菜とラングスティーヌのタルタル。
細かな賽の目に切ったピーマン、グリーンピース、トマトを主とした野菜の上にラングスティーヌ海老がこれも小さく切られており、それぞれ薄い酸味のシェリー酒酢と少量のレモン汁を加えて作ったヴィネグレットで和えてある。そしてトッピングとしてコリアンダーの葉がのっている。ラングスティーヌとグリーンピースの甘さが料理のまろやかさを引き立て、シェリー酒酢とトマト、レモン汁の酸味がワインの酸味と釣り合っており、口内をさわやかに洗う感じで、またシェリーの胡桃のような香りと、ワインのアーモンドの風味もマッチしていた。ローヌ川沿いの白ワインはシャトーヌフ=デュ=パップに代表されるように重いものが多いが、この白ワインは料理の風味を損なうことなく、最高の調和を作り出していた。
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● 料理1品目:
カレー風味のムール貝、ガンバ海老、野菜の冷製ラザーニャ、冷たいグリーンピースのヴルーテ、ランド産フォワグラ、トマトのコンフィ |
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軽くカレー風味に味付けされた貝と海老、それにソテーされた一口大のフォワグラが、大きなラザーニャに覆われて、ソースは旬のグリーンピースのヴルーテソース。甘くふくよかな風味。
さて、合わせたワインは同じくサン=ペレSt-
Pray の白の2001年もの。セパージュはマルサーヌ種70%、ルサーヌ種30%のブレンドで出来たワインで、前者と完璧に異なるのが木の樽を使用しているということ。生産者はこれもコルナスの、アラン・ヴォージュAlain Voge。前者のワインがシンプルな面を強調していたのに対し、これはかなり繊細で複雑な感がある。色はかなり濃い。当初はヴァニラの香りがするものの、すぐに閉じてしまう。少々温度が低すぎたせいか、香りがそれほど出ていない。少し置いておこうということになった。飲んでみると白ワインなのにやや渋味が残る。これも樽の木のせいかも知れない。しばらくしてようやく香りが開いてくるが、樽木からくるヴァニラの香りが支配している。その奥のほうにかすかに白い花の香り。口当たりはねっとり感grasが強く、1本目にあった軽やかさは無い。この白ワインはフォワグラによく合った。
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前編ではシェフの出身地コルナスの白ワイン2本が供されました。アペリティフでは完璧な“出会い”を作り出し、1品目では少し当惑する部分も生まれたようです。同じ生産地で同じ銘柄でも、作り手が変わると出来上がったワインは見事に異なる特徴を持ちます。これだからこそワインの魅力は尽きないのでしょう。後編は肉料理と赤ワイン、デザートにもワインが合わされています。 |
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