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辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。 |
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ブリジットと私がガトー・ア・ラ・ブローシュを求めて訪れたのは、ミディ・ピレネー地方のオート・ピレネー県、ルルドの町からさらにスペイン国境に近いオメックス村。ここにある「シャンブル・ドット」、レ・ロカイユLes Rocaillesのマダム・ファンルーFanlouが作るガトー・ア・ラ・ブローシュが絶品との噂を聞きつけてです。
さてここでマメ知識。シャンブル・ドットとは宿を兼業している農場や民家のことを指します。フランス版民宿といえばわかりやすいでしょうか。私たちが滞在したシャンブル・ドットは、300年前の農家を宿泊施設として再活用したものでした。岩作りの建物や大きな暖炉が300年の年月を物語っていますが、手入れは隅々まで行き届いていて、清潔感あふれる内装はとても好感が持てました。そして古いものを大切に使うフランス人の精神を改めて感じました。(ちなみにこのシャンブル・ドット、フランス公認の格付けでは最高ランクに位置しています。)
事前にマダムにガトー・ア・ラ・ブローシュの話を聞きたいとお願いしていたので、朝食を食べながらさまざまな話を聞くことができました。ちなみに朝食にマダム手作りのガトー・ア・ラ・ブローシュをいただきました。クレーム・アングレーズ添えで、しっかり火が通ったさっくりとした生地に、ソースがしみこんで風味豊かな味わいでした。
マダムの話によると、ガトー・ア・ラ・ブローシュの歴史はナポレオン1世の時代にさかのぼります。ピレネー地方で羊飼いを家業として営む人々が、結婚式などのお祝いに食べていたおめでたいお菓子が起源とのこと。お菓子屋さんで作って売るものではなく、それぞれの家庭で代々母から娘へ、そしてその娘へ・・・・と受け継がれてきました。今は土産物屋などで買うことができますが、地元の人が結婚式などで食べるときは、味自慢の家庭に作成を頼むそうです。マダムは「義理の母からその作り方を受け継いだ」と、懐かしそうな表情で話されていました。
さてガトー・ア・ラ・ブローシュの作り方はいたって単純。まず小麦粉・砂糖・バター・卵をそれぞれ1/4ずつ混ぜ合わせ、香り付けにラム酒やオレンジ花水、レモンの皮を加えます。これで生地は完成。そしてここで暖炉の登場です。
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暖炉に円錐形の木で作った棒を渡し、生地を棒にかけていきます。作り手は暖炉の前に座ってゆっくりゆっくりと棒をまわし続けます。2時間ほど根気よく生地を流し続けると、いくつもの層が重なったお菓子ができ上がります。
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似たお菓子を食べたことがありませんか? 日本ではバウムクーヘンがよく知られています。ドイツ人はその断面から木の年輪を想像し、木のお菓子(バウム=木・クーヘン=お菓子)と名づけました。一方フランス人は、作るときに焼き串を使うことから、焼き串を使ったお菓子(ガトー=お菓子・ブローシュ=焼き串)と名づけました。
ここで興味深いのは、ドイツやフランスだけでなく、オーストリア、ロシア、ポーランドなど、いろいろな国で同じような発想で同じようなお菓子が作られていること。ルルドの土産物屋のマダムに言わせると「ガトー・ア・ラ・ブローシュの起源はフランスのピレネー地方よ!」ですって。自分の国に誇りを持っているフランス人ならではの言葉です。
今回の旅はフランス菓子の奥深さ、そしてフランス人の奥深さを知ることができたとても有意義な旅となりました。旅の友のブリジットに感謝しつつ、シャトー・ド・レクレールへと帰路についたのでした。 |
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