同時にこの地方でつくる白カビチーズの名前でもあります。「モー」は今も現存する町の名前です。つまり日本語に訳すと「モー市のブリチーズ」ということになります。ですからモー以外にも地名のついたブリのチーズはたくさんあるのです。
「ブリ」は、珍しく生産業者と熟成業者に分業されていて、それが昔からの伝統です。その理由としては消費地パリに近く、形の大きいブリは農家では場所もないこともあり、「ブリ」を馬車でパリの門周辺に軒をつらねる熟成業者まで運び、そこで熟成され出荷されていったという経緯があるからです。これは今でも分業が続いています。
ブリ・ド・モーの製造業者と熟成業者で見学できる業者は2か所しかありません。それを博物館「ミュゼ・デ・ペイ・ド・セーヌ・エ・マルヌMusée des pays de Seine-et-Marne」のおばさんに紹介していただき、見学をすることができました。以下で紹介する作り方はソシエテ・フロマージェール・ド・ラ・ブリSociété Fromagére de la Brie の、熟成はフロマージュリー・ガノFromagerie Ganotの熟成所を取り上げています。なお、「ブリ」にはいろいろはチーズがありますが、基本的には製法は同じで、大きさ、形、熟成期間などが変わり、風味も変わってきます。
ソシエテ・フロマージェール・ ド・ラ・ブリ
フロマージュリー・ガノの熟成室
きれいなまっ白いブリ・ド・モー
それでは長男の「ブリ・ド・モー brie de meaux」から紹介しましょう。 1980年にAOC登録。(AOCは原産地管理呼称の意。ワインやチーズなどの食品を対象に、その製品がその地方で正しく作られた高品質なものであることを保証する制度)
原乳:牛乳(無殺菌) タイプ:白カビチーズ [フランス語ではフロマージュ・ア・パート・モール・エ・クルート・フルーリーfromage à pâte molle et à croûte fleurie(白カビ軟質チーズ)という。フルーリーは花フルールfleurからきている言葉で、表面は花が咲いたように白カビで覆われている様子から。中の生地は滑らかで柔らかい。] 固形分中乳脂肪分:45% 形状:直径36〜37cmの円盤状、重さ2.5〜3kg、高さ3〜3.5cm 熟成期間:最低4週間 熟成場所:産地の他に、オー・ド・セーヌ県、セーヌ・サン・ドニ県、ヴァル・ド・マルヌ県、パリ市が認められている。 特徴:熟成が進むと、中身がねっとりとして均一なクリーム色で、切り口から流れ出してくるほど柔らかくなる。