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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
みつけた!最高のマカロン
 今回は皆さんがよくご存じのマカロン(マカロン・パリジャン)を初め、日本ではあまりなじみのないフランス各地のマカロンに触れてみたいと思います。

 マカロンは、13世紀にアジアからイタリアに伝えられ、16世紀にアンリ2世のもとに嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスによって、イタリアからフランスに伝えられたとか、それ以前(791年)にもフランスのコルムリー(アンドル・エ・ロワール県)の修道院でマカロンを作っていたとか、いろいろな説があります。そして説だけでなくマカロンの種類も各地にたくさんあり、それぞれがそれぞれの正当性を主張しています。いろいろな製法がありますが、基本のレシピはアーモンド・卵白・砂糖を使った焼き菓子ということはどこも同じ。アーモンドの香りが際立つ、あきがこないシンプルなお菓子。各地で地方色を加えながら受け継がれてきたのも納得いきます。それではいくつかを紹介いたしましょう。
 マカロン・パリジャンMacarons Parisiens
 別名「マカロン・ジェルベ」(ジェルベGerbetは、これを得意とした菓子職人の名前)とか「マカロン・リス」とも呼ばれ、表面がlisse(すべすべ)なのが特徴です。製法が他のマカロンと極端に違っていて、他の多くは卵白を立てずに砂糖やアーモンドと合わせるのに、このマカロンは卵白に砂糖を加えて泡立てます。そのため、他のものと比べてふんわり仕上がります。また間にバタークリームやジャムなどをはさむことも特徴のひとつです。今ではパリ以外でも多く見受けられるようにもなり、マカロンといえばマカロン・パリジャンと思われるのも過言ではありません。
マカロン・ド・ナンシーMacarons de Nancy
 ロレーヌ地方ナンシーの銘菓。このマカロンには『スール・マカロン』(マカロンの修道女)の伝説もあります。「そもそもは、とある修道院で修道院長の胃に負担をかけないお菓子をということで修道女達が作り出したとか。18世紀にその修道女たちが迫害を受け、そのうちのふたり、スザンヌとエリザベートがナンシーにあるアシュ通りの家にかくまわれ、その感謝を込めてマカロンを作ったのがきっかけで町の評判になり、彼女たちをスール・マカロンと呼び、今に伝えられた・・・」。特徴は砂糖を煮詰めて他の材料と合わせること。形は平らで表面がひび割れたようになっています。焼いたときに使った紙ごと売っているのもユニーク。お店はスタニスラス広場近くにあります。
[Maison des Soeurs Macarons]
21 ,rue Gambetta 54000 Nancy  
Tel:03 83 32 24 25


マカロン・ダミアンMacarons d'Amiens
 北フランスのピカルディー地方アミアンのマカロン。アミアンは世界遺産に登録されているフランス最大のノートルダム寺院アミアン大聖堂があることでも有名です。マカロン自体の歴史は大変古く13世紀後半まで遡るといわれ、形はいたって素朴な円盤状。特徴ははちみつを加えて一晩置き、一度棒状にしたものを約1cm厚さに切って焼いています。買ってアミアン大聖堂を見上げながら口の中に放り込んで見ました。するとほのかなはちみつの香りとしっとりとした食感が何だか幸せな気分と懐かしさをも感じました。

[Jean Trogneux]
01, rue Delambre BP 823 80000 Amiens Tel:03 22 71 17 17


マカロン・ド・モンモリオンMacarons de Montmorillion
 ポワトゥー地方モンモリオンのマカロン。特徴は卵白と砂糖がやや多めで、ア−モンド、砂糖、卵白をペースト状にして鍋で水分を飛ばして、星の口金で王冠状に絞って焼きます。香ばしくて、ややねっちりと柔らかめ。モンモリオンのマカロン屋さん『Rannou-Metivier』には大きくとぐろを巻いた形のものや、クリスマス限定のチョコレート風味のものも置いてありました。

マカロン・ド・サンテミリオンMacarons de St-Emilion
 サンテミリオンはブドウ畑に囲まれたワインの村で、ボルドーワインだけでなく、ブドウ畑も含む村の管轄地区が世界遺産になっていることでも有名です。村を歩いていると、あちこちでマカロンとカヌレが売られています。マカロンは13世紀にウルスラ会の修道女が作ったといわれ、土地柄ソーテルヌなどの甘口ワインを加え、湯煎で温めて作るとか。形は平らでやや小ぶり、ナンシーのマカロン同様表面に亀裂が入っていて、食感は少しねっちりとしています。
[Mme Blanchez]
09, rue Guaget 33330 St.Emilion Tel:05 57 24 72 33

マカロン・ド・サンジャン=ド=リュズMacarons de St-Jean-de-Luz
 このマカロンは今まで食べたマカロンの中で最高のマカロンだと思う!!
 サンジャン=ド=リュズは大西洋側の美しい浜辺がある街で、夏は海水浴客、その他のシーズンはサーフィンを楽しむ若者で賑わうリゾート地。あと数キロでスペイン国境ということもあり、人々には情熱の国スペインを思わせるような活気があり、夏は心地よい風が吹き、冬でも日中は暖かくすごしやすく、1度訪れると何度でも訪れたくなるところです。私自身も、もう1度このマカロンに会いたくなって2度目の旅になりました。
 このマカロンにはこんな話が。「1660年5月8日に太陽王ルイ14世とスペイン王女マリー・テレーズの結婚式がこの町でおこなわれた。フランスとスペインを上げてのお祝いなので、町全体が歓喜に踊るようだった。商人たちは競って贈り物をした。王家の館のある同じ広場に店を構えていた菓子屋「アダム」は、店自慢のマカロンを贈り物にした。ふっくらと黄金色のマカロンは銀製トレーにのせて、美しく気立てのよい従業員ガチューシャが王妃の前に差し出した。王妃は口いっぱいに広がるアーモンドの香ばしさに感激して、ご褒美にクリスタルと金で装飾されたロザリオをくださった。ガチューシャはその後アダムの甥と結婚して末永くこの店の伝統を守り続けた・・・。」
 今も変わらず同じ場所に店を構えているアダムのショーウインドーには、いつもきれいに焼きあがったマカロンが並んでいます。私もマカロンがぎっしり詰まった小さくかわいらしい緑のまるい缶を買い、海辺で食べることにしました。ひとつほおばってみると、表面はさっくり、中はしっとりとして、味わい深い。卵とアーモンドの香ばしさ、それにほんのりはちみつのような香りがする。気が付くとほとんど1缶食べてしまいそうだった。目の前の海と潮の香りそして心地よい風を感じながら、なんだか懐かしさと幸せな気持ちで胸がいっぱいになりました。2度目のときは見学のアポイントメントを取りましたが、現地に行ってから断られ、レシピも昔から門外不出らしく、教わることが出来ませんでした。
ただ基本のローストしたアーモンドと砂糖そして卵白は他のマカロンと同じだからと話してくれました。
[Maison Adam]
06, Place Louis XIV および
49, rue Gambetta 64500 St-Jean-de-Luz Tel:05 59 26 03 54

  次回また行くチャンスがあればもう一度見学させていただけるように、そしてレシピも教えてもらえるようにがんばろうと思います。もしこのサンジャン=ド=リュズに行く機会があれば、この『アダムのマカロン』をぜひ食べてみてください。そして私のように潮風を感じながら、懐かしさと幸せを感じてみてはいかがですか・・・



コラム担当

辻調グループ フランス校 製菓部
人物 森田 康裕
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