(6)トリュフ採取とミステリーサークル
トリュフがあるかどうかは木の周りの土地の状態によって知ることが出来る。トリュフは地中の水分を吸収するため、木を中心に草の生えない乾いた状態になる。これをこげた状態(ブリュレ)という。いうなればミステリーサークルなみに周囲とは違った状態になるのでわかりやすい。こういった場所を掘ればトリュフが見つかる確率は高いが、香りのない未熟なものを掘り当てることもある。未熟だからといって土に戻しても、トリュフは熟成できない。そこで豚や犬を使う。トリュフの芳香は雄豚の出すフェロモンと同じ成分らしく、雌豚は本能的にトリュフを探すことが出来ることから、昔は雌豚を使っていた。しかし見つけると食べてしまうので、えさを与えて気を引いている隙に横取りしないといけない。
犬はトリュフの匂いをかぎつけると報告し、ご褒美をもらって満足するので、トリュフを食べられる心配がない。
今回の実地講義では犬が登場し、合図でトリュフ探しを開始、鼻を地面にこすり付けて歩き始めるとすぐに地面を掘り始めた。トリュフは地上から15〜20cmのところにあり、犬に代わり30cmぐらいの鉄の棒で慎重に掘り返す。卵大くらいのトリュフが採れた。採りたてのトリュフはかなりの香りだった。
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もうひとつトリュフを採る方法がある。晴れていて、風のない日でないと出来ない方法だが、ブリュレの出来ている場所を竹の棒などで地表付近を探る。そして蝿が飛び立った場所を掘る。これはトリュフの香りに引き寄せられる蝿を使う方法で、金蝿であればなおよいらしい。なかなか地味な作業になるがトリュフ泥棒は動物を使わないでこの方法を使うとか! |
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(7)ラルバンクの恐るべきレストラン!
午前中の講義が終わり、午後から始まるトリュフ市に遅れないようにと昼食をとることにした。村には1件のレストランとカフェしかない。すでに混雑しているレストランに何とか入れた。メニューは40ユーロと50ユーロの定食が2つだけ。この値段の高さには少々びっくりしたが、迷わず、フォワグラのテリーヌとトリュフ入りオムレツの40ユーロのメニューを頼んだ。この職業をしていながらトリュフを使った最もシンプルな料理を食べたことがなかった。運ばれてきたオムレツには小さなトリュフが1個分は入っていただろうか。
シンプルで、贅沢な一品であった。フォワグラのテリーヌも産地だけあって上質、大満足の昼食となった。 |
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(8)トリュフ市(マルシェ・オ・トリュフ)
ラルバンクのトリュフ市は12月から3月までの毎週火曜日、午後2時半から、その名もトリュフ市通りで開かれる。小さな村に、カメラマンやTV局の取材陣をはじめ、バイヤーや観光客など250人以上が集まる。道の片側にずらっと長椅子が並び、開始までは売り手以外を隔てるためにそこから1メートル位離れたところにロープが張られている。トリュフを布でくるんで入れた籠を手に、どこからともなく続々とおじいちゃん、おばあちゃんがやってきて、長椅子にトリュフの籠を置き並ぶ(写真下左)。老人が多いのだ。
トリュフ市を取り仕切っている人物が一人一人に声をかけトリュフをチェックし、紙を渡し、何やら記入させている。その紙に名前、住所などを記入して籠に添えないといけないらしい(写真下右)。
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現金売買が基本のトリュフ市、高額な金額が動くだけあって警察官も多数、出動している。最終的に売り手は50人あまり、買い手や見物人はかなりの人だかりで身動きの取れない状態だ。14時30分、笛の合図でロープが引き抜かれる。バイヤーは次から次へと買い付けていく。直接現金交渉だ。(写真下左)
押し合いへし合いの中、私は一人のおばちゃんバイヤーにピタッとくっ付いて、売り手との交渉を見せてもらった。まず、形と匂いをチェックして、値段交渉に入る。番号の書いてある紙に、売り手と掛け合ったkgあたりの単価と、そして売り手の言った重さを記入する(写真下中)。そして相手に半券を渡す。市が終わったら村役場の前の計りで、重さを確認、支払いをするという方法をとっていた(写真下右)。単価は650〜700ユーロが大半だが、中には900ユーロと高値を付ける売り手もいる。どちらかというと買い手より、売り手側が有利なのがトリュフ市だ。
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おばちゃんは全部で6kgのトリュフを買った(写真下左)。こんなに買うのはどうしてと疑問をぶつけると、フォワグラの生産農家で、フォワグラの加工品に入れるためだとか。トリュフ市はあっという間に終わり、15時20分には人だかりは消えてしまった。トリュフ市の片隅で苗木を売っていた。また、市の端ではトリュフを個人向けに小売していて、一個でも買うことが出来る。(写真下右)
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