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辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。 |
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週末ごとに、フランスの市場を訪れると四季がよくわかります。春から夏になると野菜はトマトやアスパラガスなど、果物はいちごやフランボワーズなど色とりどりの物が目立ってきます。逆に秋から冬にかけると全体の色が淋しく野生のキノコ類が市場を占めているように感じられます。
よく食欲の秋と言われますが、フランスで生活していると季節ごとの美味しい野菜や果物が多いので、市場に行くとついつい財布のひもがゆるくなり、学校に戻って料理を作ったりして年中食欲旺盛になってしまいます。最近は野菜でも季節感がなくなっているように見うけますが、そんな中で今でも季節を感じさせてくれるのが今回紹介しますホワイトアスパラガスです。春先に市場に行くとアスパラガスが目立ち、夏の初めまでグリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスが店頭に並び、ほかにも日本ではあまり市場に出ていないアスパラガスもありますよ。
アスパラガスは古代ギリシャ時代から栽培されて、フランスではルイ14世の時代から栽培が始まりました。日本には江戸時代にオランダ人によって伝えられましたが観賞用でした。食用の栽培を始めたのは明治以降のことですが、最初は缶詰用のホワイトアスパラガスしか栽培せず、昭和40年代になってようやくグリーンアスパラガスが市場に出回るようになりました。
アスパラガスは宿根性植物で霜や寒さに弱く、秋になると地上に出ている茎は枯れてしまいますが、養分をためているので春先になるとやわらかく太い若茎がたくさん出ます。この若茎を収穫したものがグリーンアスパラガスで、ホワイトアスパラガスは芽が出る前に盛り土をして茎に光をあてずに育てて収穫するため手間がかかります。
紫アスパラガスはホワイトアスパラガスに光を当てたもの。穂先は紫色で茎は白く、柔らかくはっきりした味があります。
「野生アスパラガス」と呼んでいるのは、アスパラガスとは同じユリ科ですが、まったく別種の植物で、学名はOrnithogalum pyrenaicumといいます。姿も似ているようで似ていませんよね。普通のアスパラガスに比べて細いので、食べた感じも普通のものに比べて歯ごたえも少ないです。日本で言うと土筆に似ているかなぁ?
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バッサーノの町 |
今回紹介するホワイトアスパラガスは北海道産ではなく、フランス産でもなく、イタリア産です。『バッサーノ・デル・グラッパでしか食べられない』ホワイトアスパラガスです。
まず最初にバッサーノ・デル・グラッパの街から紹介しましょう。ヴェネツィアの北西約50kmにあり、人口約4万人、屋根のあるポンテ・ヴェッキオ(コベルト橋)が街のシンボルとして有名です。産物としてはホワイトアスパラのほかに、ワインの搾り滓からつくる食後酒のグラッパ、陶器も知られています。
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バッサーノのアスパラガス畑 |
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アスパラガスの工場 |
北イタリアのかなり広い地域でホワイトアスパラガスを栽培しているのに、バッサーノのアスパラガスだけが、EUが認める保護指定原産地呼称DOP(Denominazione di origine protetta)をもっています。
バッサーノ産のアスパラがどんなかというと、見た目は“太く白い”が第一印象ですね。味は、他のアスパラと比較して甘みが多く、甘みの中にほろ苦さが感じられます。柔らかくて根本まで全部食べられ、生で裂いて食べても甘いです。アスパラガス特有の風味がありますし、歯切れがいいです。これは、アスパラ栽培に地質が適している証拠で、だからDOPに認められているのでしょうね。
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DOPマーク |
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バッサーノのホワイトアスパラガス |
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アスパラガス尽くしの メニュー |
収穫は4月と5月の2ヶ月のみで、生産量も限られているため、収穫したアスパラは地元の直営店・レストラン・八百屋に卸されて、他の地域には出荷することはありません。この時期に現地に行かないとバッサーノ産を食べられないことになりますよね。収穫時期のバッサーノのレストランでは、すべての料理にホワイトアスパラガスを主役に構成した特別メニューがありました。今回ホワイトアスパラガスを食べに行ったレストランでは、
- アスパラガスのフリット
- ベーニェ生地で揚げたもの。サクサクした生地とアスパラガスの組み合わせ。これはイタリア語でストッツキーノという突き出しです。
- 生アスパラガスのサラダ、魚のマリネのカルパッチョ添え、タイム風味 Insalatina di asparagi crudi, con carpaccio di ombrina marinata con timo
- 繊維にそってさいた生のアスパラガスと、タイムでマリネした白身魚(オンブリーナombrina:ニベの仲間)のカルパッチョのサラダ。ソースにオリーブ油が少しかけてあり、アスパラガスの甘みと魚の甘みが一体化したシンプルな仕上げになっています。
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アスパラガスのフリット |
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生アスパラガスのサラダ |
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- パンチェッタを巻いた帆立貝、トリュフの香り、アスパラガスのジュリエンヌのフライ Capesante arrotolate con pancetta, profumate al tartufo e julienne di asparagi fritti
- 生のアスパラガスをさいて小麦粉をまぶして揚げた物と、パンチェッタの帆立貝包みオリーブ油焼き。トリュフの香りを効かした油(ソース)とパンチェッタの塩味も隠し味の一つです。
- アスパラガスのスープ(ヴルーテ)、スカンピ添え、コニャックの香り Vellutata di asparagi con code di scampi, profumate al cognac
- アスパラガスのクリームスープにスカンピ(手長エビ)の身が添えられています。
- アスパラガス、帆立貝、シブレットのタリオリーニ Tagliolini con asparagi, canestrelli ed erba cipollina
- 手打ちタリオリーニにソースはアスパラと帆立貝をベースにした物です。
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アスパラガスの ジュリエンヌのフライ |
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アスパラガスのスープ |
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アスパラガス、帆立貝、 シブレットのタリオリーニ |
- アスパラガスのバッサーノ風 Asparagi alla bassanese
- いよいよメインの登場です。ふつうホワイトアスパラガスは塩ゆでして、マヨネーズやヴィネグレットソースなどをつけて食べるでしょう(マヨネーズ好きにはたまらない組み合わせですよね)。フランスのビストロでも同様なソースやちょっと贅沢になるとオランデーズソース(温かいソース・マヨネーズみたいな)を添える店が多いです。ここバッサーノでは温かいバッサーノ風ソースと食べます。
- このレストランでは、テーブルの横でサービス係がソース作りを始めました。半熟のゆで卵をボールの中でつぶし、オリーブ油を少しずつ加えながら混ぜ合わせ、ワイン酢と塩、こしょうで味をつけます。温かいタルタルみたいなソースです。このソースをアスパラの上にたっぷりかけサービスしてくれました。
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バッサーノ風のソースを つくるサービス係 |
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ソースをたっぷりかける |
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アスパラガスのバッサーノ風 |
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バッサーノ風アスパラガス専用の皿 |
店によっては専用の器があり、火を通したアスパラガスの横にゆで卵が添えられ、ゆで卵を潰して自分の好みでオリーブ油・ワイン酢・塩・こしょうで味を付けて食べます。マヨネーズやヴィネグレットと食べくらべると、やはりバッサーノ風は卵の味・コク、オリーブ油の香りが口の中で広がり、最後にワイン酢の酸味が少しきいているので、アスパラガスと一緒に食べてもしつこくなくアスパラガスを十分に楽しめます。
この一皿を求めてフランス・リヨンから車で7時間かけて行く価値はありましたね。また来年(あっ来年は日本に帰国している!!)・・・いつかまた、このアスパラガスを食べにバッサーノ・デル・グラッパに来たいですね。
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