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ここ数年、世界のグルメたちが注目しているスペインの食事情。進化するヌエバ・コシーナ・エスパニョラ(新スペイン料理)、スペインワインのイメージを一新するボデガ(ワイナリー)、変容するタパス(ピンチョス)と、話題には事欠かない。先頭を切るのは若い世代のニューリーダーたち。しかし、器は変わってもそこにはいつもスペインのエスプリが潜んでいる。いまやフランスやイタリアにまで強い影響を及ぼし始めたスペイン料理、その今を取り上げる。レシピでは、筆者がおすすめするスペインの代表的な家庭料理を紹介。
スペインの野菜で一番思い出深いのは、何といってもあのぷっくりとした大きなピーマンとなすでしょうか。私の働いていたマドリッドのレストラン「サラカイン」には、マドリッド、カタルーニャ、ムルシア、アラゴン、ナバーラ、バスクと様々な地方から若い料理人が勉強に来ていました。シェフは名料理人を多く輩出するナバーラ出身で、非常に勤勉、誠実、紳士&真摯で、ユーモアのあるやさしい人でした。魚料理のアシスタントをしていたカタルーニャ出身のホルヘJorge(英語で言うとGeorgeジョージかな)は、ミシュランの星付きの有名店ばかりを選んで修行していましたが、カタルーニャ料理とお菓子の質問をすると口から泡を飛ばすくらいの勢いで、熱心に語ってくれました。
カタルーニャといえばアントニオ・ガウディ。
左:サグラダ・ファミリア 右:カサ・ミラ
私が「サラカイン」の調理場にもだいぶ慣れた頃、休みの日に一緒に食事をする約束をすると、ホルヘはマドリッドのカタルーニャ料理店に2名分の予約を入れてくれました。着席し、前菜に何を食べようか迷っていると、すかさずエスカリバダEscalivadaを食べなきゃダメだと自信たっぷりにアドバイスしてくれました。何でも、カタルーニャ料理店でエスカリバダを食べなきゃ食事に来た意味がない。俺の実家の方じゃ何処の家にも常備してあって、カタルーニャの大地の恵みを一番シンプルにいただくことができる料理だと言うのです。
その頃私はエスカリバダがどんな料理なのかも知らず、赤ピーマン、黄ピーマン、ポロねぎ、なす、トマトなど、何処でも見かけることのできる平凡な野菜をオーブンで焼いて冷やしただけだというので、そんなに美味い料理なのかなあと半信半疑でした。しかし、大皿に盛られた手で裂いた素朴な焼き野菜に、添えられた赤いソース(後になってロメスコという、これもカタルーニャを代表する偉大なソースだと知りました)をつけて口に運ぶと、
オリーブ油とピメントン(パプリカ)のよい香りとこげた野菜の香ばしさが食欲を刺激します。かむほどに、野菜の旨味と甘みが微妙な塩味とともに口の中に広がり、あっ、これがホルヘの言う大地の恵みのことだなと納得がいきました。そして、久々に実家で母親の手料理を食べるような、とても幸せな気分になりました。あまりにおいしかったので、ムイ・ブエノ(めちゃ美味い)、ムイ・サブローソ(ええ味やなあ)を連発して、今度はホルヘをびっくりさせました。
この後も、ホルヘが指南役となり、サルスエラ(魚介のスープ)やアロス・ネグロ(イカ墨のパエリア)などの郷土料理を勧めてくれました。そして、締めはクレーマ・カタラーナ(クレーム・ブリュレの祖先といわれ、非常に柔らかいカスタードを冷やし固めた後、グラニュー糖をかけてキャメリゼするデザート)です。
それにしても、なぜ焼いただけなのにスペインの野菜はあんなにおいしいのでしょう。それは写真を見ていただければ一目瞭然です。とにかく、ルックスがよいのです。丸々としていて、はりと艶があり、食べてくれと買い物客に訴えかけているんですね。というわけで、今回はエスカリバダとスペインが育んだ偉大なソース、アイオリを本格的な作り方でご紹介します(マヨネーズに、にんにくのすり卸しやみじん切りを加えるのはスペインではあまり見かけません)。日本の野菜は水っぽいので、冷やす前に下味の塩、こしょうを忘れずにお願いします。
さて、Food風土エスパーニャも今回が最終回です。付録で野菜を表すスペイン語を少しご紹介しましょう。ピーマン:pimientoピミエント(ちなみにこしょうはpimientaピミエンタ)、ポロねぎ:puerroプエロ(ちなみに町あるいは田舎町はpuebloプエブロ)、玉ねぎ:cebollaセボリャ(ちなみにセビリアはSevillaセビリャ)、なす:berenjenaベレンヘーナ(ちなみにクリマスの時に飾るキリスト降誕の人形のジオラマはbel
nベレン)、にんにく:ajoアホ(大阪では毎日使ってます。特に吉本かな)
それではMuchas gracias ムチャス・グラシャス、Hasta la vistaアスタ・ラ・ビスタ。
このコラムのレシピ
コラム担当
エスカリバダ
アベノのゴローソ(食いしん坊)
可児 慶大
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