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連載コラム Food風土エスパーニャ
ここ数年、世界のグルメたちが注目しているスペインの食事情。進化するヌエバ・コシーナ・エスパニョラ(新スペイン料理)、スペインワインのイメージを一新するボデガ(ワイナリー)、変容するタパス(ピンチョス)と、話題には事欠かない。先頭を切るのは若い世代のニューリーダーたち。しかし、器は変わってもそこにはいつもスペインのエスプリが潜んでいる。いまやフランスやイタリアにまで強い影響を及ぼし始めたスペイン料理、その今を取り上げる。レシピでは、筆者がおすすめするスペインの代表的な家庭料理を紹介。
ロサスの漁港
 私たちはバルセロナから北東へ51kmのサン・セローニの町にある三ツ星レストランのオーナー・シェフ、サンティ・サンタマリア氏からのアドバイスを受け、地中海で取れるスペインの魚を勉強しようとロサスRosasの町の港の見学に行きました。
 ロサスはバルセロナから北東に約150km、高速道路で約1時間30分の道のり。漁港の他に海水浴場もあり、夏は海水浴客で賑わいます。フランス国境からも近く、フランスナンバーの車を多く見かけます。一帯は海岸線に山並みが迫り、くねった道路が伊豆半島の海沿いの町を思わせます。また、港から少し行くと、小さな入り江カラ・モンジョイがあり、世界の料理界に革命を起こしたと言われる天才児フェラン・アドリア率いるレストラン「エル・ブリ」があります。

 ロサス港は地中海に面した、ヨットも停泊できる小さな漁港で、大阪でいえば泉南の魚市場のある小さな漁港のような感じです。港を見渡すと停泊している船に大型船は見当たらず、釣り舟を少し大きくしたくらいの船で一杯でした。併設の市場は、昼食後の遅い時間だったので、すでにせりの終わった後なのか片付けに入っていましたが、氷を詰めた魚のケースが運び出しを待ってかなり残っていました。場外の鮮魚店には白身魚、磯魚、青魚、甲殻類、貝類と多種多様な魚介類が所狭しとディスプレーされ、豊富な品揃えに圧倒されました。

 魚介はどれも非常に鮮度のよいものが売られており、例えば、日本人が好きな海老は種類も多く、スカンピ(cigalaシガラ)、車えび(langostinoランゴスティーノ)、赤海老<ボタン海老を大きくしたような真っ赤な海老>(carabineroカラビネーロ)、小海老(gambaガンバ)など、プランチャ(鉄板焼き)からフリト(衣を付けたフライ)まで幅広い料理に使えそうです。

貝類 また、貝類はあさり(almejaアルメハ)、まて貝(navajaナバハ)、ムール貝(mejillonメヒリョン)と日本人がよく食べる貝が勢ぞろい。他にやりいか(calamarカラマル)、甲いか(sepiaセピア)、小蛸(pulpoプルポ)も店頭に並んでいました。
 一方魚に目をやると、生きのよいひめじ(salmoneteサルモネーテ)、ほうぼう(bejelベヘル)、かさご(cabrachoカブラチョ)、さば(caballaカバリャ)なども並び、カタルーニャ風のブイヤベース「サルスエラ」を思い出して生唾が出ました。

ほうぼうさば

 さて、スペインは魚料理のバリエーションが多く、特にカスエラ(土鍋)を使った料理は魚のゼラチン質で煮汁とオリーブ油をつなぐテクニックが特徴です。中でも、もっともスペインらしい料理といえば、塩漬けの干鱈(bacalaoバカラオ)の料理があります。昔は庶民の胃袋を満たし、貴重な蛋白源だったバカラオも近年は高級品となり、水で戻して塩抜きをするなど手もかかるため、もっぱらレストランで食べる魚になってしまいました。今回は手軽に作れるように、軽く塩をあてた鱈を使い、あさり、にんにく、パセリを加えた鱈のグリーン・ソース煮をご紹介します。生の鱈が手に入らなければ、スーパーなどで手に入る甘塩鱈を使っていただいてもかまいません。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 鱈のグリーン・ソース煮

アベノのゴローソ(食いしん坊)
人物 可児慶大
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