辻調グループ

コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
辻調グループ 最新情報はこちらから
Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
西洋料理TOPへ半歩プロの西洋料理 コラム一覧へ
連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
アル・デンテのひとりごと(4)
皆様、ごぶさたしております。アル・デンテです! 前回、永作先生にアル・デンテのお話を伺ってからずいぶんと時間が経ってしまいましたが、今回から3回にわけて東京・銀座「エノテカ・ピンキオーリ」の辻智一総料理長に登場して頂きます。またまた「アル・デンテ」ワールドの始まりです。


アル・デンテ(以下A):さっそくですが、辻総料理長の思われるアル・デンテとはどういうものですか。

辻(以下T):正直言うていいですか・・・。ようわからん。実は僕が一番最初にアル・デンテの状態を教えてもらったのは、永作先生からなんですよ。

A:その時、わかりましたか?

T:そんなんわからへん。生徒の時に講習で「これがアル・デンテやなぁ。針の先くらいの芯が残ってる状態や」、それでさら〜っと終わった。「どれがアル・デンテやねん! そんなんわっからへん、見えへんし!」と、まあそのような。

A:・・・。

T:でもシコシコしてて、これぐらい?という気はしたかな。今から思えば、一般的に言われているアル・デンテでしたよ。へえ〜っと思っただけで、その時は真剣に聞いてなかったからね。それで実際に自分が作ったり、人に聞かれたり、店やなんかで教える立場になって、改めて考えるようになったというか。

A:なるほど。

T:イタリアでもいろんな所に行って食べたけど店によって違うし。結論から言うとこれといった状態なんかないんですよ。

A:もう結論出ちゃうんですか!

T:ナポリの店にいた時にね「これこれ! これがアル・デンテや! ネイ・デンティ!」て言うんですよ。

A:ネイデンテ?

T:ネイ・デンティ。歯の中っていう意味で、つまり歯の中ってことは食べられん、日本ではこんなんないから食べられへんやろって言うわけですわ。「アル・デンテ」って言わずに「ネイ・デンティ〜!」ってね(笑)。

A:ホントですか!? それでそのネイ・デンティのパスタはおいしいものでしたか。

T:いや、「ほとんど生やんけこれ、あるわけないやろ」と思った。そうかと思えばイタリアでも北の方だと、日本の方がよっぽどコシがあるっていうくらい柔らかいし。あいつらにしたら、ナポリのアル・デンテなんか「クルード、クルード!(生や、生!)」って言うよ。

A:イタリアでもそこまでかたいのは南だけですか。

T:店によってもパスタの形状によっても違うみたい。でもやっぱりナポリのスパゲッティはかたい! 逆にフィレンツェなんかはすごい柔らかい。あの辺りのパスタ専門店ではパスタがほとんどゆでおきやからね。すっごいたくさんメニューがあって、ペンネからスパゲッティから全部ゆでておいてあるねんけど、それはそれでまた結構うまいんよ。

A:完全に火が通ってるんですか。

T:そうやね。でも、柔らかいけどほんまうまい。そう考えたら、日本人はアル・デンテに変にこだわり過ぎなんですよ。イタリアで食べたアル・デンテってみんな違うし、僕らがいう「理想のアル・デンテ」っていうのは日本で、つまり日本のイタリア料理で育まれたものでしかないでしょ。

A:そう言われてみればそうですね。

T:僕の友達なんかおもろいよ。イタリアでごはん食べてて、「こんなんイタリア料理違う!」って言うんですよ。「おまえ、今、イタリアおるんやで。これがイタリア料理と違うんやったら何やんねん!」てね。

A:確かに(笑)!

T:イタリアにももちろん「アル・デンテ」ってこだわりはあるけど、定義はものすごく曖昧なものです。イタリア料理って全般的にそうだけど、「うちのアル・デンテはこれや」、「うちのサルサ・ディ・ポモドーロ(トマト・ソース)はこれや」って、かならず「うちの」って言うんですよ。

A:イタリア人らしいですね。

T:結局、彼らは画一化されるのをすごく嫌うんですよ。例えばワインにもDOCGとか格付があるけど、「いや、うちは格付けにはこだわらずにおいしいワインをつくるんだ!」って独自の路線をいって、その結果、世界的に評価が高くて値段も高いテーブルワインが生まれたりとかね。

A:本当ですね。

T:だから、イタリア人がアル・デンテ、アル・デンテって言っても、地方、店によって違うし。でもどう考えてもナポリのアル・デンテは固い!(と、再び強く訴える辻先生) とは言っても、スパゲッティ発祥の地っていうたらあの辺りやから、ほんまの乾麺のアル・デンテはそれを基準にした方がいいんですよ。

A:そうなのかもしれませんね。

T:でもね、ここからがすごく重要なことで、本場のアル・デンテはこうと理解したとするでしょ。でも僕らは日本で商売してるわけですよ。銀座の店で「これが本場のアル・デンテです」って出しても受け入れてくれるとは限らないんです。まあ怒る人が大半ですよ。それならその本場の基準も日本人に合うように変えた方がいいでしょう。日本人ってコシのあるうどんとか食べてるしね、その好みに一番合ったのが永作先生が言っていた「針の先くらいの固さ」は、すなわち日本で育まれたアル・デンテっていう結論になるんですよ。

A:う〜ん、そうか・・・。国や土地、それぞれの風土に応じたアル・デンテがあるんですね。

(以下、次号へ)


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ えびとオクラのスパゲッティ

アル・デンテこと
人物 由本 牧
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group