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「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ! |
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前回は辻先生が初めて味わったアル・デンテから始まり、イタリアと日本のアル・デンテの感じ方の違いなどのお話を伺いました。今回は、日本のパスタ事情についてのお話です。 |
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辻(以下T):ところで話が少しそれるけど、以前にある新聞で、全国の2000人の主婦を対象にした「好きなスパゲッティ」のトップ20が出ててん。1位は何やと思います?
アル・デンテ(以下A):ええー! 何でしょう?
T:これだけイタリア料理の認知度が高くなってきた時代で、コンビニでもあれだけパスタソースが並んでて、百貨店や大きなスーパーにはいろんな種類のオリーブオイルやらパスタ、それにポルチーニまで置いてあって、びっくりしますよね。そんな時代の主婦ってすごいんですよ。
A:カルボナーラとかですか?
T:カルボナーラは第3位。
A:ペスカトーレとか?
T:うーん・・・8位だったかな。
A:じゃあミートソースとかトマトソースとか?
T:ミートソースが第2位、トマト・ソースは入ってない。
A:えー、あと何があるんだろう・・・
T:ボンゴレ、アラビアータ、ペペロンチーノ、ゴルゴンゾーラとかだったかな。今のところ1位と4位が出てないんやけど、これ聞いたらびっくりしますよ。
A:えっー! もしかして、明太子スパゲッティとかじゃないですよね。
T:たらこスパゲッティ、だんとつ第1位。
A:それだけは避けたかった1品です・・・ってことはもしかして、4位はナポリタンなのでは・・・?
T:そうナポリタン!「ええっ!」てそう思うでしょう。作り手からするとそう思うんです。うちの店のやつらも、み〜んな「ええっ!」て言うてましたわ。でもそういう人を相手にしているのが僕らですよ。
A:そうですよね。
T:ポルチーニとかトリュフも食べて、でも「好きなスパゲッティ」では敢えてこれを選ぶんですよ。それでね、その結果に対する新聞の考察がめっちゃおもしろいんですよ。これ聞いたらすごいなあと思いますよ。たらこスパゲッティのことを詳しく解説してるんですけど、たらこスパゲッティていつからあると思います。これはね日本のイタリア料理の歴史やなあとしみじみと思いますよ。
A:確か私が小さい頃からすでにあったと思いますけど・・・。
T:うん、食べてたでしょう。
A:どっかのパスタ専門店が出来た時ですか?
T:そう! 1960年代に某専門店が出したのが爆発的なヒット。その時のルセットも解説してあったけど、イタリアで食べるボッタルガ(からすみ)のスパゲッティそのまんま。今では日本でもボッタルガのスパゲッティって出してる店もあるけど、オリーブオイルを使うとこが多いでしょ。でも実際はバターなんですよ。それもブッロ・フーゾ(溶かしバター)、これでさっと和えてボッタルガをかける。もしくは玉ねぎとバターでソースを作ってボッタルガと和えるというのがほとんど。
A:そうなんですか。
T:ただ当時、日本ではボッタルガが手に入りにくかったから、たらこで代用して、ブロード(出し汁)の代わりに昆布だしを使った、と。後はボッタルガのスパゲッティそのまんまなんです。
A:まさに、土地のもので代用したってことですね。
T:そういうことです。さらに何でそういう結果になったかというとことを詳しく解説していて、みんな知識としてはいろんなことを知ってるけど、敢えてというなら日本における日本で育まれてきたイタリア料理を選ぶ。それはある意味ナショナリズムなんですって。わかります?
A:はい・・・なんとなくは・・・
T:イタリア料理が好きなんやけど、日本のイタリア料理が好き。結局はそういうことなんです。
(以下、次号へ)
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