www.tsuji.ac.jp 辻調グループ校 学校案内サイト www.tsujicho.com 辻調グループ校 総合サイト blog.tsuji.ac.jp/column/ 辻調グループ校 「食」のコラム



・オーベルジュ・
ド・リルのもてなし
・父から息子へ
受け継がれる料理
・アルザス料理と
3つ星レストランの
「アルザス風」料理

・デザートの満足感






アルザス料理と3つ星レストランの
「アルザス風」料理

西川 この魚はどうやって火を通しているんですか。スフレは焼かないとふくらまないけど、そのまま焼いたら鮭がぱさぱさになってしまいませんか。
肥田 白ワインと出し汁をちょっと入れて蒸し焼きにします。鮭の火の通し加減がむずかしかったですね。ポールによく注意されましたよ。
西川 アルザスだったら白ワインはリースリングを使うんでしょう。
肥田 もちろん!ポール・エーベルランは「これほどみずからの独創性と土地の特性との緊密な結合に成功したシェフはほかにいない」なんて、かのゴーミヨーに言われている人ですしね。
中山 エーベルランのベッカオッファを覚えてます。あれもアルザス地方独特の料理ですよね。
肥田 エーベルランでは鶏のローストなんかの、付け合わせに出てくるやつでしょう。小さい楕円形のココットに入っていて、じゃがいもとフレッシュのトリュフが入っている。
西川 アルザスの居酒屋みたいなところではベッカオッファといえば、ココットっていうより土鍋っていいたいような深くて大きな器に牛だの豚だの羊だのの肉のぶつ切りと玉ねぎとじゃがいもがこれでもかってほど入った料理ですけど。
肥田 そうそう。肉をアルザスのワインでマリネしておいて、そのワインを入れて、小麦粉を水で練った生地で密閉してオーブンで時間かけて煮るんです。







西川清博
(フランス料理主任教授)

中山 それが3つ星レストランになるとぐっと上品にして出すんですね。でもそうまでして地方料理にこだわる必要があるんでしょうか。
西川 前校長(辻静雄)が前に言っていたことだけど、レストランの食べ歩きをしてると、はるばる地方までいって、パリと同じような料理が出るとがっかりするものなんだそうです。特にサラダをオードブルに出すのがすごく流行ったことがあって、どこに行ってもさやいんげんとフォワ・グラのサラダばっかりでうんざりしたって。
肥田 たしかにそう。パリから何時間も車を運転してきたのに、またこれか!と思いますよね。それでやはり最近話題になるレストランは地方色を全面に押し出してきているわけか。
永作 エーベルランはレストラン自体ものすごく歴史があるし、土地に根差した本物という感じがする。あのあたりの人はフランス人というより「アルザス人」だという誇りを持っているから、料理の端々に自然に郷土の伝統が現われるのじゃないかな。
肥田 調理場もフランス語じゃなくて、アルザス語を話す人がいました。忙しくなってくるとオーダーも人によってフランス語とドイツが混じったりしてわけがわからなくなりましたよ。
永作 従業員も地元のアルザス出身の人が多かった。
肥田 三分の二ぐらいですか、基本的に地の人が多い調理場で。そういうこともあってか、つけあわせなんかも、クネップフラのようなアルザス的なものをよく使っていました。




永作 アルザス地方のストラスブールというと、フォワ・グラが有名でしょう。前にその町の3つ星レストラン、クロコディルがフォワ・グラがうまいという評判で、まずそこに食べに行って、その翌日イローゼルンに行ったことがあるけれど、昨日のあれはなんやった、というくらいイローゼルンのフォワ・グラはうまかった。
肥田 クロコディルは行ったことがないけど、オーベルジュ・ド・リルのピカイチは、フォワ・グラのテリーヌ。まず仕入れられてくるフォワ・グラが違う。艶のある健康優良児のような肌色で、押さえたら、指がめり込むような感じで、フォワ・グラの筋を取るのがこんなに上手くできるものなのかとびっくりした。
西川 マリネしてから、壷形の器にトリュフといっしょに押し込むように詰めてあるんですよね。それを湯煎にして低温のオーブンで焼いて。
肥田 焼き上がりは、指を突き刺して見るんですよ。中心が人肌より少し温かいくらいでオーブンから出すという、原始的かつ、いいかげんな方法。
永作 それでも壷の表面にはほとんど脂が溶け出してない。それだけフォワ・グラの質もいいし、焼き方が絶妙。へたくそに焼いたらおいしい脂がみんな溶け出してまうから。
中山 まったく臭みがないでしょう。フォワ・グラ自体の味はあるけど臭くない。
永作 先代の校長がよく言われてましたが、もう一遍何が食べたいか3つあげるなら、必ずオーベルジュ・ド・リルのフォワ・グラが入るって。
西川 口の中の温度でフワーッと溶ける舌触り、えも言われぬフォワ・グラの脂肪の味、そこに色々なスパイスの風味とかすかなお酒の香りが広がる。僕も後にも先にもあんなにおいしいフォワ・グラのテリーヌを食べた記憶はないです。

肥田 スプーンですくってお客にサービスするんですけど、壷の底の隅の方は丸いスプーンでは上手く取れないでしょう。必ず残ってくるそれを、僕たち従業員はブリオーシュのトーストにはさんで食べるんです。このフォワ・グラのサンドイッチがもう・・・・至福の極致。
永作 あとはジビエがおいしかったな。種類がいろいろあって、猟師が直接売りにくる。エスカルゴなんかも近所の子が袋いっぱいとってきて売りにきてたでしょう。
中山 蛙のムースリーヌとか、蛙のポタージュとかもオーベルジュ・ド・リルの料理として有名ですね。ほんとに地元のものを使うところから料理を考えてきたんですね。昔は川にいるざりがにを自分でとってパテなんかにしてたらしいし。
肥田 最近はやっぱり環境汚染で、イル川も魚のいいものは採れないらしいけど、マルクの創作料理でもやっぱりもともと地元の素材だったものや、アルザスの伝統料理は意識してるようですしね。



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