肥田 |
オーベルジュ・ド・リルのある村から一番近い町がリボーヴィレですけど、あそこは、果物から作る蒸留酒が有名で、さくらんぼやすももやプラムや洋梨やいろんな種類が多かった・・・(料理が運ばれて来る)えー、ちょっとスフレがしぼんでしまったかな。 |
中山 |
いやいやきれいにふくらんでいますよ。そういえばさっきのクグロフですけど、リボーヴィレが発祥の地ということになっているんですよ。東方の三博士がキリストの誕生を祝ってきた帰路に、この町の陶工の家でもてなしてもらって、そのお礼に陶工が作った独特の形をした型を使って焼いたのが始まりだという伝説があります。
ところでこの付け合わせのフルロン、なんで皿の手前につけるんでしょう。普通向こう側に置きませんか? |
肥田 |
知らんけど、なんか反対。でもこうしとかんとポールさんに怒られるから。(笑)
僕が研修に行ったころから料理場はもう息子のマルクにまかされていて、メニューもマルクの創作料理が中心になっていたけど、この鮭のスフレのようなお父さんのポールの料理は「オーベルジュ・ド・リルを有名にした料理」としてちゃんと残してありました。分量とか作り方とか、盛り付けまでほとんど変えないで出しているらしい。 |
永作 |
それだけ父親を尊敬しているんでしょう。ああ、なつかしい味。今の学校の生徒とか、若い子がこういうのを食べたらどう思うかな。重たいとか、ムースをもっと軽くしたらいいのにとか言うかもしれないけど、でもこういう味をわかるようになってほしいな。 |
肥田 |
ソースをルーでつないでいるから、トロトロッとなめらかでしょう。もう最近はソースをルーでつなぐのもめずらしくなってしまった。 |
永作 |
ま、年寄りむけのメニューではないな。けど、サンドルの質がよいのでしょう。スフレ生地にこしがあってうまいですよ。 |
肥田 |
サンドルと生クリームと1:1で作ってるけど、これが舌ビラメだったら、1:1ではべちゃべちゃになってしまう。サンドルは川魚だけど、臭みも出てないでしょう。 |
中山 |
ふわふわ軽いスフレには、ルーを使ったこのソースの口あたりが必要なんですね。こういう料理をどうしてどこでも残しておかないんだろう。今、復活させたら新鮮な感覚がしますよ。 |
肥田 |
昔の料理を知っている人が少なくなったら、こういうソースを出したら、なんと新しい料理なんだ、とかいわれるかもしれない。 |
永作 |
方向性は多少変わってきてるかもしれないけど、今でも3つ星をとるようなレストランはこういう重さのある料理が中心ではないかな。 |
中山 |
量は減らしているのでは。 |
永作 |
いや3つ星は変えていないと思うよ。けっこう量も多いし。 |