www.tsuji.ac.jp 辻調グループ校 学校案内サイト www.tsujicho.com 辻調グループ校 総合サイト blog.tsuji.ac.jp/column/ 辻調グループ校 「食」のコラム



・ピラミッドの味
・フランス料理の変遷
・世界最高のデザート

・パリから地方へ


世界最高のデザート

水野 今回はデザートもあるんですよね。ピラミッドのデザートといえば、もうこれだ!というのがガトー・マルジョレーヌです。
川北 そう、これが世界最高といわれたデザート。今回は当時フランスでつくっていた配合とつくり方で再現してみました。
水野 チュルボ・オ・シャンパーニュも、今食べるとけっこうソースがこってりした感じだけど、ガトー・マルジョレーヌも決して軽いお菓子ではないね。薄く切って、一切れでもうけっこう満足いくくらい中身濃いですよ。
川北 でもあの時代としては軽い!泡立てた生クリームをそのまま使うということがまずなかった時代ですから。どっしりした料理のあとだと、生クリームを立てただけのようなのでは負けてしまうから出せない。どうしても、こってりした重たいものがベースになる。あっさりしたものが食べたければ、果物かアイスクリームしかなかったからね。その中でやっぱりすごかったと思うよ。ピラミッドの客には絶賛を浴びていました。1週間で必ず6本くらい出ていたように思います。
水野 口に入れるとふわっととろける感じが新鮮だったんでしょう。でもクリームと生地の組み合わせがものすごく複雑。
川北 生地もポワンが考案したもので、これと同じのはほかでは見たことがない。シュクセなどに似てるようだけど、これみたいに生地をころしてつくる感じのものはないです。卵白を立ててそれをもう一度つぶすという考え方がないでしょう。今でもつくっているけど、ふわっとしたビスキュイ・ジョコンドかシュクセの生地のようにしてしまいがち。そうではなくて、ふわっと完全に泡立てたメレンゲを、ヘーゼルナッツやアーモンドなどの粉末と合わせて、その時もう流れるくらいまでつぶしてしまう。泡をつぶすから、焼き立てをそのまま使うと固い。それをどう考えたか知らないけど、地下に2、3日置いておくわけ。
水野 湿気を帯びさせる。
川北 そう自然の湿気ね。霧吹きなんかで湿らせたりするのはだめ。
水野 焼いてすぐは、ぱりっとわれるくらい固いのかな。しばらくしてふにゃーとなってから使うんですね。固いままを組み立ててクリームの水分で柔らかくしたものと違って、そのものだけが自然に水分を含んで、それを組み立てると、クリームの水分は含まれてはいかない。どっちのほうが状態がいいのか。








シュクセ
メレンゲにアーモンドパウダーなどを加えた生地



ビスキュイ・
ジョコンド
アーモンドパウダー入りのスポンジ生地

川北 層にしてから1、2日置いたらもどると思うでしょう。もどるんだけど、こしのあるもどりかたになってしまう。ブイヨンを煮詰めてから生クリームを入れるか、ブイヨンと生クリームを合わせてから煮詰めるのとどっちがおいしいかというと、煮詰めてから入れるほうがおいしいのと同じです。無理に水分を与えるのじゃなくて自然にもどっていくのがいい。僕らは日本に帰ってから、ぬれブキンをかぶせてみたりしたけど、うまくもどらない。湿気を与えるのじゃなくて、生地が必要なだけ水分を吸い込むのでないと。
水野 湿気のある地下のワインカーブの横にマルジョレーヌをつくる部屋があったね。製菓の部屋は上にちゃんとあって、ほかのお菓子とか、コーヒーといっしょに出すプティフールなんかはそこでつくるけど、マルジョレーヌの生地だけはそこへ行ってつくる。
川北 生クリームが今みたいな工場生産のものと違って、脂肪分が一定していなかったからかもしれないけど、クレーム・シャンティイには、こくをつけるためにバターを加えてる。横で見てると一瞬分離したような感じになってたりするけど、それがまたいいわけ。日本人は生クリームはきれいな状態でないといけないと思ってるから、なめらかにしようとしてかえって重くなる場合が多いです。
水野 プラリネを入れたり、バターを入れたり、チョコレート味のと、3種類もクリームをつかっているんですね。プラリネっていうのは昔フランスキャラメルってあった、あの味みたいで・・・なつかしい味がする。
川北 むつかしいお菓子なんですよ。クリームと生地のバランスが微妙だし、生地も同じ条件で置いておいても、うまくもどるときと、もどらない時があって。ある日はきれいにもどってるけどある時は逆にぱりぱりになってたり。
杉山 レストランのデザートらしい繊細なお菓子だよね。いろいろな味がうまく1つにまとまって、すっきりシンプルに仕上がっている。
水野 ピラミッドのデザートでマルジョレーヌのほかにというと、タルト・オ・シトロンがありましたね。えーとレモンのタルトというんだけど、それよりアーモンドの風味がたっぷりという感じの・・・
川北 ああ、フランジパーヌというクリームをつかっていたからねぇ。アーモンドパウダーとバター、砂糖、卵を同量ずつ使うこくのあるクリームです。そこにレモンの皮と果汁が入っていて。タルト形にパイ生地を敷いてそのクリームを詰めて焼く。
水野 それからタルト・タタンがあったね。普通のつくり方より簡単につくるタタンなんだけど、これもよく出ていたね。
川北 タルト・タタンは温かいうちにアイスクリームを添えて出したりしていました。あとはプティフールと、フルーツ。お客さんによって特別なものをつくったりした場合もあったかな。
杉山 どれをとっても料理の印象をこわさないように考えてあったんでしょうね。表面は飾らないけど味で勝負という感じですか。タルトも見た目は素朴というか、家庭料理風でもあるけど、レモンとアーモンドの味のバランスとかすごく洗練されていたんでしょう。

タルト・オ・シトロン




タルト・タタン
タルト・タタンの一般的なつくり方は『私のメニューブック』へ。










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