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北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。 |
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鳳城滑魚片 |
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魚はもともと好きではないんです。小さいころ近所に漁港があり、色々新鮮な魚が売られていました。食卓に魚料理が並ぶことが多く、中でも、両親はシャコが大好物で、湯がいて三杯酢をつけて食べていました。しかし、僕はちょっと・・・。生臭いのがダメで・・・。料理の仕事をしているから、魚も食べなくては!と思って少しは食べるようになりましたが、冷めるとやはり魚臭さが鼻をつきます。その上、魚の食べ方がヘタです。苦手なので、残すところが多くみっともない。みっともないので食べないという悪循環です。大人になるにつれて益々食べなくなりました。中国料理では、魚がなくてもエビやイカなどを使うとちゃんとメニューが立てられますし・・・。
しかし、結婚した今では魚料理が食卓に並ぶので食べない訳にもいかず、何とかお茶を濁しながら食べたふりをしていました。が、やはりばれていたようです。というのは、初めて奥さんの実家に行った時のこと。場所は焼津。親戚一同で会食となり、周りには皆、マグロの刺身や地の魚が並んでいるのに、僕の前だけ茄子の田楽。どうも、僕の魚嫌いを奥さんが伝えたようです。恥ずかしさのあまり、消えてしまいそうになりながら、「粋な大人は魚を食べなくちゃ。」と一大決心をしたのです。こんな僕の魚に纏わる話をしましょう。
さて、本場中国の魚事情といいますと、沿海地域より内陸部に国土が広がっているので、川魚がよく食べられています。10年くらい前に紹興→杭州→蘇州→無錫→上海と、初めて中国大陸に足をのばしました。上海の空港から、昨日開通したばかりだから、サービスエリアがどこにあるかも分からないというドキドキするような高速道路を通って、バスは魯迅の町、老酒の町、紹興に到着しました。早速、紹興酒工場見学です。喜び勇んで行くと、そこでは割れた甕が置かれていて、おじさんがのんびりと甕を修理していました。紹興酒の生産工程はというと、なんと年末で人っ子一人いない工場で、甕がずらりと並んでいるのを見ただけです。商魂逞しく、売店だけはしっかり営業を続け、皆揃って紹興酒のお土産を買ったのでした。
杭州で西湖を、無錫で天下第二泉を見学したり、豫園でツアーの一行とはぐれて添乗員さんを泣かせたり、黄浦江クルーズで当時流行っていたタイタニック号ごっこをしたりという思い出が残っているのですが、肝心の魚料理といえば、杭州の楼外楼で食べた西湖醋魚の印象しかありません。西湖の名菜として有名なこの料理は、草魚を開いて茹でて黒酢の甘ずっぱいタレをかけたもので、川魚の風味がそのまま残っているという、魚好きには堪らなく、僕のようにそうでない人には違った意味で堪らなかったのです。
趣味で釣りをするようにもなりました。先日、同僚と12人で、武庫川まで釣りに行きました。朝10時に海釣り公園に到着したら、人山人海、人がいっぱい。「今日は無理です。」といわれ、「空前の釣りブーム?」と揶揄したけれど、無理といわれたらぜひともやりたくなるのが人情。時間をつぶして昼過ぎに再び挑戦し、何とか場所を確保したので、いつにもまして真剣です。人指し指ほどの大きさのイワシが釣れました。「この魚はどうなるのだろう?」と頭によぎったけれど、「まぁ、ええか。」と、太公望は後先のことを考えずにドンドン釣っていくと、大漁、大漁です。なのに、家で料理をしないからと、誰も持って帰ろうとしないので、仕方なくちっちゃいアジやらがいっぱい詰まったビニール袋を下げて帰りました。たまの休日に家庭サービスもしないという後ろめたさがあって、お土産のつもりで「この魚、料理できなかったらほってもいいよ。」といって奥さんに手渡したのですが、いい方が悪かったようです。
遊びつかれた僕は風呂に入って10時には寝てしまいました。ところが、あたり一面何か生臭い、しかも、パチパチという音がするので、驚いて目を覚ましました。そっと台所を覗いて見ると、奥さんが全部で100匹はあろうかという魚の内臓を除いて、直径15cmくらいの小さな天麩羅鍋で3匹ずつ魚を揚げているのです。夜中の2時ですよ。翌日から一週間、毎日毎日、夕食にアジの南蛮漬けがでてきました。
そんな、魚が少し苦手な私が紹介する料理は「鳳城滑魚片(タイの中国風サラダ)」です。料理名の鳳城は広東省にある順徳(大良)の別名で、名コックを輩出し、「厨師之揺籃」といわれています。ピーナッツ、春巻の皮のカリッとした歯ざわり、レモン、大葉の爽やかさに、油がかかっているのでしっとりとして、日本のお刺身よりずっと食べやすく、野菜も多いのでサラダ感覚。魚嫌いの子供にでもお勧めです。 |
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