辻調グループ

コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
辻調グループ 最新情報はこちらから
Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
中国料理TOPへ好吃(ハオチー)!中国料理! コラム一覧へ
連載コラム 好吃(ハオチー)!中国料理!
北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
エビの炒めもの レタス添え
生炒明蝦鬆


エビの炒めもの レタス添え

   
 20年前、学校の台湾、香港研修旅行に生徒を引率していき、台北の空港で、香港に向かう彼らを見送った後、これから研修が始まるのだという意気込みと異国の地に一人残された寂しさが心の中で渦巻いていました。
 台中と台北の蓮園餐廳で研修したのですが、まずは台中です。ここは湖南料理と広東料理のチームに分かれていて、これらの料理を組み合わせてコースメニューが作られていました。料理人も30人を超え、予約だけで毎日平均15〜16卓、多い日は30数卓になるという大規模なレストランでした。使う鍋も調理法も異なる料理が一つの厨房で作られているのは、ちょっと珍しく思えましたが、お互いにライバル意識が強く、切磋琢磨しているので、却ってこの店の魅力となっているようでした。

 1ヶ月の観光ビザで行ったので、1ヶ月たつと無給の研修であるという証明書をもって滞在期間を延長し、さらに1ヶ月すると、再びビザ延長のため今度は一旦香港に移動しました。そこで、マンダリンホテルで研修中の河合先生に会ったのですが、短パンにサンダル履き、ウエストポーチをつけた姿は、正しく現地の人そのものでした。どちらも研修中の身、マンゴーを食べながら毎日の楽しさや辛さを語り合ったのは忘れられない思い出です。マンゴーをあんなに美味しく感じたことは、後にも先にもありません。

 研修先ではいくつか面白い体験をしたり、カルチャーショックを受けたりしました。
 台湾では、日本のレストランのように、鶏は腿や胸身など パーツで持って来られるのではなく、羽をむしって内臓を除いた丸のままのものが入ります。調理場に鶏が到着すると、皆一斉にドンドン鶏をさばいていきます。私も仲間入りさせてもらいましたが、そのスピードについていくには相当頑張らなければなりませんでした。田ウナギやカエルは業者さんが生きたものを持って来て、調理場の片隅の流しで下処理をします。カエルなら、頭を切り落とすとペンチで皮をむき、すぐ調理できる腿の状態にします。新鮮なこと保証できます。
 最もカルチャーショックだったのは、サービスをしていたチャイナ服の美しいギャルが、休憩時間に鶏の足を手に持ち、小骨をピューピュー出しながら食べていたことです。向こうでは、鶏の足の煮込みはコンビニでも売られているポピュラーな食べ物ですが、姑娘のその優雅なサービスと対極をなすような振る舞いに、「ここは台湾なんや!」とつくづく感じました。
  胸中複雑な思いをしたのは、日本人の観光客についてでした。爽やかな季節だったので、私達料理人は外で座って御飯を食べるのが常でした。その光景は、当時の日本人には異様に映ったようで、さげすみの言葉を投げかける人がいたのです。「何って言っているの。」と尋ねられましたが、とても訳せませんし、いたたまれない気持ちでした。反対に、日本人のテーブルで台湾人になりすましてサービスをしたのは、ちょっと愉快な思い出です。
  私がこの店に、ひとつよい事をしたというなら、皿やテーブルを拭く布巾を清潔にしましょうと、率先して汚くなったものは捨て、常にきれいに洗って衛生観念を高めるのに、一役買ったことでしょうか。これは学校での習慣が身についていたということと、よい習慣は見習おうという積極的な姿勢が台湾の人にあったからだといえます。
 そういえば、夜になると「バーツァン、バーツァン」という声が聞こえるのです。何が「バーサン」だろうと思っていたら、バーツァンとは「肉粽(肉入りチマキ)」のことで、ちょうど日本の焼き芋のように、声をだして売り歩いていたのでした。「バーサン」に悩んでいた自分を思い出すと笑ってしまいます。
 台湾の日本料理というと、厨房の食事で、時々、豆腐やワカメが入った味噌汁が出てきたのですが、かつお節はそのまま固まって残っていて、味がとても薄かったです。また、巻き寿司が売られているのを見かけました。海苔で、桜でんぶ、かんぴょう、高野豆腐、シイタケを具に巻いてあるのですが、日本人である私が食べると「ン?」。甘くてしまりがない、落ちつかない味。台湾風の新たな日本料理が根付いているようです。
  飲み物では、台湾は水道の水は飲めません。ペットボトルの水は売られていましたが、調理場では、蓋つきのマグカップに湯冷ましを入れて常時飲んでいました。また、ビールが日本の価格のちょうど半分だったので、夜には缶ビールを2本空けて満足、満足。

 全く知らない土地で、おまけに言葉も充分通じず、大変なこともありましたが、研修先の親切な周りの人達に助けられ、どうにか成果をあげることができたと思います。辻調の卒業生でもある廖さんにも随分お世話になりました。
  私より先に小阪先生が、同じく台湾の「湘園餐廳」に研修に行かれて、学校に湖南料理を紹介されました。この研修で、自分自身の目でこれらを確認できたと同時に、学校にしっかり持ち帰られた小阪先生の技量を再認識させられました。3ヶ月の短い研修でしたが、私にとっては十年分の体験にも値するような密度の濃い、意義ある日々だったといえます。

 今回のエビの炒めもの(生炒明蝦鬆)は研修時の思い出深い料理です。店では、副材料は揚げパン(油条)、黒クワイだったのですが、更なるおいしさを求めて、香りのセロリ、シイタケ、歯触りのタケノコ、彩りに枝豆を加えてみました。レタスに包んで食べるので、あっさりといくらでも食べられます。是非、試してみて下さい。
 

このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ エビの炒めもの レタス添え

迷料理人 湖南(コナン)
人物 谷 康行
中文之星
人物 福冨 奈津子
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group