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北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
炸醤刀削麺
北京の味 −その2−
1980年3月、初めて訪れた北京は、初春とはいえ底冷えを感じる。街では人の多さに圧倒され、往来する自転車の洪水にも驚いた。北京名物のトロリーバス(中国語で無軌電車)は、朝夕のラッシュ時にもなると二輌連結の車両は超満員状態で、停留所には人が溢れている。そんな光景の中、大人も子供も分厚い綿入れの中国服が目立つ。
現在のトロリーバス
北京在住の知人に誘われ、好奇心もあって観光気分でトロリーバスに乗ってみた。しかし、次の停留所で慌てて降りた。理由はニンニクの臭いである。乗客全員がニンニクを食べてきたのかと思うほど、車内には臭気が充満しており、その上に窓を締め切っているので、息が詰まって卒倒しそうになったことを思い出す。
ニンニクの臭いは、なにも人ごみの中だけでなく、北京の空港に降りたときも感じたし、本屋で立ち読みしている隣の人からも、ほのかに漂ってくることがあった。中国北部では北京だけでなく、水餃子や小籠包には生のニンニクが添えられ、かじりながら食べると聞いて、なるほど街のあちこちで臭うはずである。
北京の老舗、六必居(味噌、漬物屋)
伝統的な北京の小吃、炸醤麺もニンニクと一緒に食べることで知られている。炸醤麺は、肉味噌(豚肉の細切りを味噌で炒めたもの。肉丁炸醤という)を茹でた麺にかけ、混ぜ合わせて食べるのでスパゲッティ・ミートソースに似ているが、地方によって食べ方や味に多少の違いがあり、冷麺風、湯麺風、ラー油入りなどもある。
一般的に北京の炸醤麺は、手打ちの白い麺(かん水が入っていない)で、肉味噌は色が黒っぽく、濃厚な味で塩気も強い。また、麺の具[薬味も含めて麺碼(ミェンマァ)という]が多いのも特徴といえる。因みに、麺碼は、日本のラーメンには欠かせない干しタケノコを煮た、あの「メンマ(シナチク)」の語源という説(麺と麻竹からの造語ともいわれる)がある。
京味麺大王の炸醤麺
老北京炸醤麺大王
刀削麺
さて、北京には「京味麺大王」、「福家楼」など炸醤麺を売り物にする店は数多あるが、最近では「老北京炸醤麺大王」の評判も高い。場所は天壇公園に近く、崇文門外大街を南に走ると、右手に屋号を書いた大きな看板が見えてくる。店名にある「老北京」とは中国語で「生粋の北京っ子」。「大王」は、「その道の達人」を意味する。
一階の店内に足を踏み入れると、黒子のような衣装を纏った給仕たちが一斉に大声で、「歓迎光臨」と威勢よく迎えてくれる。客席は200人ほどが座れるだろうか、現地の人々に混じって欧米の外国人客の姿もチラホラと見える。板張りの床、木製のテーブル、ベンチ式の椅子が並び、その雰囲気は清代末期の居酒屋を思わせる。正面の壁には、たくさんの品書きが貼ってあり、看板の炸醤麺のほか一品料理(中には三不粘などの名菜もある)も数多く、北京の味が楽しめる。
この店の炸醤麺には、定番の「肉丁炸醤麺」と、煎り卵入りの「滑蛋炸醤麺」の二種類があり、いずれも八元(約120円)と安い。いずれも洗面器かと思うほどの大丼に麺を盛り、大きめの豚肉が入った肉味噌とモヤシ、枝豆、キュウリ、香菜など八種類の具を小皿に盛り合せ、一緒に運ばれる。
好みで具を選ぶと、給仕が慣れた手付きで次から次へと、麺の上に投げ入れてサーヴィスしてくれる。生ニンニクは頼めば、別皿で出てくる。北京では、肉味噌と和えた麺を一口食べ、ニンニクを一口かじり、具で口をさっぱりさせるのが通の食べ方とか。
炸醤麺には、拉麺(手延べ麺)や山西省の刀削麺(扁平の削り麺)などを含め、普通の中華麺よりも、かん水の少ないウドンのような麺が適している。ここでは使った刀削麺は、生地を皮むき器で削るだけで、意外と簡単に麺を作ることができる。冷たい麺で、冬は温めて、そして臭いを気にしなければ生のニンニクをかじりながら食すのも一興である。
このコラムのレシピ
コラム担当
刀削麺
ジャージャン刀削麺
中華の伝道師
松本秀夫
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