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私が研修したのは世界に名だたるマンダリン・オリエンタル香港です。さすがに超一流ホテルということもあって、各国のホテルマンが研修にきていて、「小世界」といった感がありました。 |
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料理人の世界でいうと、日本では調理技術すべてができるオールマィティの人間が求められますが、香港では鍋の操作、切る、焼き物についてそれぞれ専門の人がいて、始めから一つのことしか目指さず、その道を極めて昇進していくのです。 |
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最終的には料理長を目指すわけですが、その料理長は調理場を動き回り、料理人の動きすべてを掌握しています。もちろん忙しくなって鍋をする人の手が足りなければ、すぐに鍋を振りますよ。最後の料理のチェックは料理長ですが、かなりの程度は作り手に任されています。さらに、その料理人たちが色々な店から引き抜かれて集まっているわけですから、同じ料理でも微妙に仕上がりが異なることがあるのです。そうすると料理長が目ざとく見つけ、すぐその人に自分の料理のイメージを伝えて仕上がりを修正させます。 |
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料理人の競争は厳しく、自分の修業した技術を教えると、即、自分のポストが危うくなるので、なかなか人に教えることはありません。みんな盗み見て覚えていくようです。自分も最初は何も教えてくれませんでしたが、3ヶ月過ぎて周りとコミュニケートできるようになると、研修生でいずれ日本に帰るので、ライバルではないからか色々教えていただきましたよ。でも、教わるときは、隅っこに呼ばれ、周囲が聞き耳をたてている中、紙に書いて「しまっておけ」というような風でした。 |
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研修して3ヶ月たち、生活になれてきた頃から中国茶の勉強を始めました。凍頂烏龍茶などウーロン茶のおいしさは知っていたのですが、ビンテージのプーアル茶を飲んで、その芳醇さにはまってしまいました。研修中に、学校の中国料理の技術水準の高さを痛感していたときでしたので、それじゃ、中国茶をもって帰ろうと思いましたね。返還後もエネルギーに溢れ国中の銘茶が集まっていた当時の香港に居たことを今でもうれしく思いますね。 |
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最後に、当時のマンダリンでは、「酢豚」はメニューにありませんでした。お客様から注文がくると作ることもありましたが、フルーツ(生果)とエビを組み合わせた「生果蝦球」をメニューにだしていました。揚げたエビにパイナップル、ピーマン、赤ピーマンを合わせ、甘酢あんに絡めたもので、汁気がちょっと少ない仕上がりです。もちろんこの料理も「トロ〜ッとサクッ」がポイントです。 |
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