私は、休日にスーパーやデパートの食料品売り場を何気なく見て歩くのが好きです。つい最近まで、「たれ」といえば「焼肉のたれ」や「すき焼きのたれ」ばかりでしたが、やっと、醤油や酢のメーカーなどから「照り焼きのたれ」が販売され始めました。しかしアメリカでは、60年も前、渡米した男性が照り焼きのたれを実演販売し、現在では一日に7万本も売り上げる会社のオーナーとなり、アメリカンドリームを手に入れたという話があります。
ごく最近までは、各家庭で我が家の味といえる「照り焼きのたれ」の分量があり、どこの家庭でも照り焼きを作ったものでしたが、今では、スーパーの惣菜売り場や魚屋で焼いたものを買ってきて、食べる時に電子レンジで温める家庭も多いようです。
今回、若林先生は家庭でできるよう、フライパンで作る鰤の照り焼きを教えてくれます。この「照り焼きのたれ」は冷蔵庫である程度保存が可能で、鰤以外にも牛肉、豚肉、鶏肉、肉団子、ハンバーグなどの肉類にも、サーモン、秋刀魚、鰯などの魚にも使えるし、さらに生姜やにんにくなどの香辛料を加えるとステーキ丼や豚丼のたれとしてもおいしいです。材料の、グラニュー糖がない時は、上白糖でもOKです。みりんは料理のつやをよくしますので必ず入れましょう。
たれの調味料を全て合わせてしまうと、酒やみりんに含まれているアルコール臭が鼻につきます。最初に酒、みりん、グラニュー糖を火にかけて酒とみりんのアルコール分を飛ばし、砂糖を溶かします。酒やみりんのアルコール分を飛ばすことを「煮切る」といいます。場合によっては、鍋の中に火が入ることがありますので、弱火で煮立て、匂いでアルコールが抜けたかを判断しましょう。匂いをかぐ時は鍋を火から離してください。もし引火すると顔を火傷しますので注意してください。
鰤やサーモンのようにある程度身が厚く、脂分や水分の多い魚は必ず焼き上げる前に塩をして20〜30分間おきましょう。空の鍋で軽く煎ってサラサラにした塩を茶漉しに取り、バットにまんべんなく振ります。魚の切り身をのせ、さらに上からも塩をまんべんなく振ります。「なぜ、照り焼きに塩をするの?」と思われるでしょうが、これは味をつけるためではなく、魚の余分な水分と臭みを抜くためです。魚の余分な水分が抜けると、身がしまって扱いやすくなります。このように、下処理した魚全体に軽く小麦粉をつけて、熱したフライパンで焼きます。これで魚に焼き色がきれいにつき、たれがしっかりからみつきます。
今回使用する「鰤」は、出世魚といわれる魚で、昔の武将のように成長するにしたがって名前が変わります。例えば、豊臣秀吉は、日吉丸→木下藤吉郎→羽柴秀吉→豊臣秀吉となりました。鰤は関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリ、関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと名前が変わります。ちなみに天然物を「ブリ」、養殖物を「ハマチ」だと思っている人もあるかもしれませんが、「ハマチ」は「ブリ」の成長過程の呼び名です。
一般的には魚は天然物の方がおいしいと思われがちですが、今回の「照り焼き」に関しては、脂分が季節によっては天然物の倍以上になる養殖物の方が、焼き上がりがぱさつかず、おいしく仕上がります。
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