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連載コラム 日本料理一年生
辻調の日本料理の先生たちにも、調理師一年生の時代がありました。どんなに教え上手の先生も、一年生の時には分からないことだらけで、失敗もたくさんしたのです。そんな時代を振り返り、「日本料理一年生」のみなさんに、できるだけ分かりやすく、本物の日本料理について解説してみようと思い立ちました。「こんなにおいしいものが自分で作れるのか!」という新しい発見と喜びがきっとあるはずです。
16時間目 三杯酢
三杯酢
   学生のみなさんは、いよいよ夏休みですね。朝早くから蝉の鳴き声がやかましく、暑さに拍車をかけています。こんな時期にはさっぱりとした食べ物ばかりが欲しくなりますが、あまりさっぱりしすぎても、暑さに身体が追いついていきません。夏にスタミナがつくものといえば、土用の丑の日によく食べられる鰻(にほんの四季便り・土用の丑参照)でしょう。この鰻の蒲焼きと胡瓜を三杯酢で和えた、和風のサラダのような「うざく」をご紹介します。この料理は、通常は酢の物に入りますが、三杯酢で和えるので和え物と考えてもよいでしょう。
   合わせ酢は、基本的なものが3種類あります。以下ように考えるとわかりやすいでしょう。
  1. 甘酢=酸味+甘味
  2. 二杯酢=酸味+塩味
  3. 三杯酢=酸味+甘味+塩味
   この場合、酸味は酢だけとは限りません。柑橘類の絞り汁(すだち・かぼす・柚子・レモンなど)があり、梅干にも酸味があります。甘味には、砂糖・みりん・はちみつ・水あめなど、塩味には塩・醤油・味噌なども使います。二杯酢や三杯酢の味のバランスをベースに、梅干の果肉を使うと「梅肉酢」、削り鰹を加えれば「土佐酢」、生姜の絞り汁を加えると「生姜酢」、大根おろしを加えると「みぞれ酢」といろいろな合わせ酢が作れます。
   一般的に酢の物には、甘味の入った三杯酢を使うことが多いのですが、これは人間の舌の感覚が甘味をうま味と感じる人が多いからです。市販の弁当のおかずや、ファミリーレストランの料理が甘味を強めに作られているのは、こういう理由だと聞いたことがあります。
   最後に、酢の物や和え物を作るときのポイントをお教えしましょう。
  1. 材料の水分をしっかりときる。
    水分をきらないで和えると、材料から水分が出て合わせ酢や和え衣が水っぽくなっておいしくありません。
  2. 食べる直前に和える。
    合わせ酢や和え衣などが材料と混ざると、浸透圧によって材料から水分が出てしまいます。
  3. 材料はすべて冷たくする。
    基本的には、冷たくします。でも、今回のように鰻や穴子の蒲焼きは、冷たいと皮の部分のゼラチン質が固まっておいしくないので、皮の部分をあぶって温かい状態で和えます。
   みなさんも、若林先生のおいしい「うざく」を作り、暑い夏を乗り越えてください。




このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ うざく

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
  辻調の御言持(みことも)ち
人物 重松 麻希
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