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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
胡麻すり
胡麻すり 胡麻すり
解説

「胡麻すり」
そのときの都合で、どちらにも誰にでも迎合すること。人にへつらって自分の利益を計ること。また、その人。
 普段、授業で何気なくすり鉢で胡麻をすっているが、どうしてこの行為が上司にお世辞を言ったりすることになるのであろうか?日本語源大事典で調べてみると、語源として

(1)すり鉢で胡麻をすると、胡麻が四方に付くところから、あちこちについて、人毎にへつらう者をいう。

(2)ゴマ(護摩)スル、すなわち護摩を修する意から、語源が忘れられて胡麻磨ルと考え合わされた。

(3)ある妓楼(ぎろう)の主が薬胡麻をすらせた練り薬を腎薬(じんやく)として用いたが、その子分の者がこの家に入り込み、追従(ついしょう)に胡麻をする仕事をしたことから。

といったことが書かれてある。


  胡麻は、ゴマ科の一年草。インドまたはエジプト原産といわれ、古くから日本にも渡来し、栽培されている。果実の中に小さな扁平な種子が多数入っており、種子の色は品種により異なり、黒・白・黄褐色などある。種子は、ごま塩や菓子原料に用い、しぼった油(胡麻油)は、揚物・髪油・医薬・工業用などに広く使われる。
 胡麻は、黒胡麻、白胡麻、茶胡麻(地方によって黄胡麻、金胡麻などとも呼ばれる)の3種類に大別される。黒胡麻は種皮の色が黒く粒が大きい。油分はやや少なめで、胡麻の風味のもとになる芳香成分が多く、香りが高いので、油用より料理に使うことが多い。白胡麻は、種皮が薄茶色でやや小粒。収量は黒胡麻より少ないが、油分は多く、油用に適する。香りは黒胡麻より少ないが、繊維も少ないので、すり胡麻などによい。茶胡麻は白胡麻より色が濃い。北関東の金胡麻は小粒だが美しく、味がよいことで知られている。
 白胡麻には、さらに「洗い胡麻」と「白むき胡麻」の2種類がある。「洗い胡麻」は、胡麻を水に漬けてボウルやすり鉢の中で洗い、ザルに広げて乾かしたもの。「白むき胡麻」は白胡麻の皮をむいて精製したもので、「みがき胡麻」とも呼ばれる。白むき胡麻は皮がないので風味は落ちるが、胡麻豆腐などを作ると白くなめらかに仕上がる。


 胡麻は、日本料理にはなくてはならない材料である。胡麻をすりつづけると、胡麻から脂分が出てペースト状になる。いわゆる「すり胡麻」だが、これを日本料理の世界では「当たり胡麻」と呼ぶ。飲食業界では「する」は「擦る・使い果たすの意」に発音が通じる「忌詞(いみことば)」(和のおいしいことば玉手箱・「秋茄子は嫁に食わすな」参照)であるため、反対の意味の「当たる」という言葉を使うのである。したがって、「すり鉢」は「当たり鉢」と呼び、「すり粉木(こぎ)」は「当り棒」と呼ぶ。するめいかの干物を焼いたものを「あたりめ」と呼ぶのを聞かれたことがあると思うが、これも忌詞の「する」を「当たる」と言い換えたものである。

 また、肉類や魚介類を焼いて、当たり胡麻を加えたタレをかけたものを「南部(なんぶ)焼き」、「利久(りきゅう)焼き」、「九十九(つくも)焼き」と呼ぶ。「南部焼き」は、南部地方(南部氏の旧領地で岩手、青森両県にまたがる地方)が有名な胡麻の産地であったため、このようにいわれる。「利久焼き」は、千利休が胡麻を好んで使ったためこう呼ばれるが、「休」という言葉が「忌詞」のため、同じ発音の「久」を取って「利久焼き」としたといわれている。「九十九焼き」は、当たり胡麻を加えたタレをかけて焼くと、全体に白っぽくなることから。「白」という文字は「百」から「一」を取ったものであるから、100−1=99ということで「九十九焼き」としたといわれる。

 胡麻の用途は食べるだけではない。右の写真は、本校の学生が製作した胡麻細工の一部である。胡麻細工は、白胡麻を煎って茶色く色づけ、一粒一粒下絵の上に貼り付けて絵に仕上げていく。その際、胡麻の煎り具合によって少しずつ色に濃淡をつけ、それで色のコントラストをつける。写真が小さくて見えにくいのが残念だが、龍の輪郭や鱗の一枚一枚がすべて、胡麻で描かれている。小さな胡麻を一粒ずつ取り上げて貼り付けていく、根気の要る作業である。
  下は、白胡麻の煎り加減。左から、煎る前の白胡麻、少し煎ったもの、茶色く煎ったもの。これらを組み合わせて、絵に濃淡をつけていく。
煎る前の白胡麻 少し煎ったもの 茶色く煎ったもの
 
 胡麻に火が通るにつれて、色づくだけでなく、ぷっくりと膨らんでくるのがおわかりだろうか?煎り胡麻として使用するときは、右端の状態になるまで煎る。

 さて、胡麻をしぼった油である胡麻油を、日本料理では天ぷらによく使う。胡麻油といえば、中国料理の炒め物の仕上げに垂らす香ばしい香りの油を連想される方が多いと思うが、胡麻油には、皆さんがよくご存知の香りの強い茶色いものと、プロの料理人がよく使う香りの弱い透明なものの2種類がある。
 この2つの胡麻油の違いは、原料の胡麻を香ばしく煎ってからしぼるか、熱を加えていない胡麻をしぼるかの違いである。煎ってから絞ると香りの強い茶色い胡麻油が出来、煎らずにしぼると、香りの弱い透明な胡麻油になる。関東の天ぷらは、主に香りのある茶色い胡麻油を使い、関西では香りの弱い透明な「太白油(たいはくゆ)」と呼ばれる胡麻油を用いることが多い。
 東京が江戸と呼ばれていた頃の漁獲法は、関東に比べると関西が秀でており、魚を捕った後の処理もまた、関西が優れていた。適切な処理がされていない魚介類を天ぷらにすると、材料の匂いは衣に包まれて外へ逃げられず、衣の中にこもってしまう。そこで、その匂いを隠すために、関東では香りの強い胡麻油を使って天ぷらを揚げたと考えられる。
 もちろん、現在では魚介の質は関係なく、使用する胡麻油の違いは関東と関西の天ぷらの個性の違いにすぎない。また、料理人のこだわりで、特徴の異なる数種類の油をブレンドして使っている店もある。



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 鯛茶漬け

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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