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「うどの大木」
うどは土中に茎を埋めて、軟白栽培したものを食用とする。これを地上に自由に発育させたものは、高さ2メートルにも及ぶ。しかし、ここまで大きくなると、かたくて味が悪く食用にはならない、無用の長物である。 人間も同じで、体ばかり大きくても能力がないなら、ものの役には立たない。
「うどの大木」の後には、「薪(柱)にならず、山椒は小粒でぴりぴりと辛い」と続く。 |
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うどを漢字で書くと「独活」。この漢字が読めるのは、おそらく日本料理の料理人と国語の先生、生物の先生ぐらいだろうと思う。私自身も料理人になりたての頃は、「どっかつ?明治の文豪の国木田独歩の身内の一人?」くらいに考えていたし、我が家の食卓にものぼったことがなかった。独特の香りと歯ごたえは、子供が理解できる味ではなく、主材料になることもない。まず産地でもないかぎり、一般の家庭で食卓にのぼることは少ないであろう。私もうどという野菜自体を、調理師学校に入学するまでは見たこともなかった。 |
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一方、漢方で薬用とする「猪独活(ししうど)の根」は、「どっかつ」と呼ばれる。煎じて頭痛、偏頭痛、めまい、リュウマチ、神経痛、関節炎、風邪などの薬として用いられている。これは、独活の根に含まれる精油類が大脳皮質や延髄を興奮させ、血液の循環を促進するため、鎮痛、消炎、発汗、利尿の作用があるようである。 |
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うどは日本古来の野菜で、英名も“UDO”。北海道から九州の山野に自生しており、栽培もされている。春に地上に出る前の若い芽はやわらかく芳香があり、旬の味として食べられるが、成長すると高さ2メートルにも達し、食用にならない。生育が早く、1日経つと形状が変わったりするので「うごく」が「うど」になり、「独活」という名がついたといわれる。また、土から芽を持ち上げるように出てくるところから「生土(うど)」という名がついたという説もある。 |
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栽培されているうどは、まず露地の畑で種株を植え付ける。この種株は、大陽の光と土からの養分で地下の根部が十分に成長したところで根から堀り上げ、根株となる。根株は、地下約3〜4メートルの地下室(むろ)で、温度と湿度を一定に保たれた環境で育てられる。地下室は暖房しなくても20℃くらいと暖かく、湿度も90%以上に保つことができる。地下に植えて約1ヶ月で80cmぐらいに育ち、切り取って収穫する。根株は冷蔵庫に保存して順次植え付けていき、これをくり返すことで、ほぼ1年中出荷することができる。これを「軟化(なんか)うど」と呼ぶ。 |
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軟化うどに対して、「山うど」というものもあるが、これは山野に自生するものとは異なり、軟化うどと同じ種類で栽培されることによって作られる。秋に株を畑からビニールハウスへ移植し、頭だけが日光に当たるように外に出るようにして、もみがらなどをかぶせて育てると、先端が緑色になる。これを軟化うどに対して、「緑化(りょっか)うど」とも呼び、群馬県などで多く生産されている。 |
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うどの産地としては、関東地方では、東京校がある国立の近くの立川が大変有名である。関西地方では三田、中国地方の大山が有名で、春の香りを届けてくれる。 |
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うどはタラノキ属ウコギ科の多年草であるが、それとは別に「うどの木」というウドノキ属オシロイバナ科の常緑樹がある。別名オオクサボク。沖縄や小笠原、東南アジアに分布し、時には高さ18メートル、幹の直径が1メートルにもなるが、鎌で簡単に刈り取ることができ、「世界一の軟木」といわれている。伐採後は数ヶ月で腐って形が崩れるため、全く利用する価値がない。
「うどの大木」ということわざは、本当はこの「うどの木」がモデルではないだろうかともいわれている。もしそうだとすると、このことわざは沖縄か小笠原でできたことになる。
また、「虚(うろ)の大木」が本来の言葉という説もある。「虚(うろ)」とは空洞という意味なので、中が空洞の木は大きくても役に立たないという解釈になる。そして、いつのまにか「うろ」が「うど」に変化し、草の「うど」に結びついて、伝わっていったといわれる。 |
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今回の料理は、ポイントのひとつとして、うどの白さを生かして料理するということがあげられる。皮を厚くむき、水につけてアクを抜くのは味の面でも必要だが、水につけることで、うどが酵素作用によって色が悪くなるのを防ぐこともでき、白く仕上げることができる。また、酢を加えてゆでるのも、白く仕上げるためである。うどに含まれるフラボノイドという色素は、酸性で無色、アルカリ性では黄褐色になるため、酸を含む酢を加えることで湯が酸性になり、白い色を保つことができるのである。 |
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