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「『古典』と『和菓子』だって?もう、いや!」と逃げ出さないでください。想像とおいしさとちょっぴり恋の世界を味わって頂きたいだけですから。百人一首の和歌を読んで私たちなりに解釈し、イメージを膨らませて作ったのがここにご紹介するお菓子です。和菓子の世界には、和歌や物語を元にして想像力を働かせ、作品に表現するという楽しさや遊びがあるのです。このページを通して、日本の良さを見直して頂けたらうれしく思います。 |
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「秋の野」という言葉から、すすきや草葉の穂波が風になびき、黄金色に輝く晩秋の風景を思い浮かべました。かつて京都の大原を訪れた時、山里のすすきが見事なまでに穂を付け、風に吹かれ、きらきらと輝いている景色を見たからです。それはそれは美しく、今でもその情景をはっきりと覚えています。 歌のイメージと、私のこの経験から、お菓子を作りました。
きんとんのそぼろ は すすきの穂波 を 黄色の餡と粒餡 は 黄金色に輝く様子 を 錦玉羹(寒天のさいの目切り) は 白露(露のみずみずしさ) を
あらわしています。
さらに細かく裏ごしした薯蕷練切を全体に散らしました。風が露を辺り一面に吹き 散らした様子を、「きんとん」というお菓子で表現してみました。
きんとん餡には、菓子の趣旨によって、山の芋餡や百合根餡などもったりとした味 わいの様々な種類の餡があります。今回はできるだけ柔らかく炊き上げ、さっぱりと した白こし餡と、コクのある粒餡を合わせ、あっさりとした口溶けの良いものに仕上 げました。
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37 文屋朝康
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中級官吏だったようですが、生まれた年も亡くなった年もはっきりしません。日本文学史において社会的な身分や地位では名は残りません。恋愛経験の豊富さこそ、文壇に名を残すのです。なぜって、和歌の多くはラブレターだから……。和歌が上手=人の心を捉えるのが上手=恋愛上手(!?)となるのです。この人物は『古今和歌集』と いう歌集ができる直前(800年代後半〜900年代前半頃)に活躍した人のようです。一説には、「六歌仙」として有名な文屋康秀(ふんやのやすひで)の息子ともいわれます。
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歌は上手なようです。 「秋の野原、風が辺り一面にさっと吹くと、葉の上におりていた露がぱらぱらと落ち てしまう。それはまさに糸のきれた真珠が飛び散るようだ」 歌の情景が目の前にさっと現れるような美しいことば。声に出して読んでみて下さい。恋の歌ではないけれど、とぎ澄まされた感性を想わせます。透明感のある、少し肌寒い秋の景色のひとコマでしょう。 |
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