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「『古典』と『和菓子』だって?もう、いや!」と逃げ出さないでください。想像とおいしさとちょっぴり恋の世界を味わって頂きたいだけですから。百人一首の和歌を読んで私たちなりに解釈し、イメージを膨らませて作ったのがここにご紹介するお菓子です。和菓子の世界には、和歌や物語を元にして想像力を働かせ、作品に表現するという楽しさや遊びがあるのです。このページを通して、日本の良さを見直して頂けたらうれしく思います。 |
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日本を代表する花といえば「さくら」で、長い歴史の間、親しまれ愛されています。その種類は約300種類ともいわれます。この花の特徴は、短い間ですが、艶やかに華麗に美しく咲き誇ること、また、パッと散ってしまう散り際の見事さではないでしょうか。最近では全国のさくらの名所で「ライトアップ」が行われています。青空の背景もすばらしいですが、ライトアップされた「さくら」も幻想的で美しい光景です。いにしえの人々は体験できなかった、ひと味ちがう趣の「さくら」です。
さて、今回のお菓子は菓銘に「夢桜」とつけ、「黄味しぐれ」と「薯蕷きんとん」で優雅に咲き誇る「さくら」を表現しています。草色に染めた黄味しぐれは、「葉っぱ」を、蒸したときにできる亀裂で「枝」を表現しています。ピンク色と白色の薯蕷きんとんでは、満開の「さくら」を表わしました。
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66 前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)
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平安時代の歌人です。生没年は1055〜1135年なので、平安時代の後期に活躍した人といえます。出家する前は「源(みなもと)」の姓なので天皇の血筋で、ひいおじいさんが三条天皇です。10歳で父親を失い、12歳から園城寺(滋賀県の三井寺)で修行し、後に諸国を遍歴し、山伏修行の行者として有名になったようです。「僧正」については「夏のお菓子 天津風」の豆辞典僧正遍昭の解説に書きましたが、大僧正とは、後にできた位で、僧正よりも上です。歌人名は「前に大僧正であった行尊という名の人」という意味です。
さて、歌の方ですが、
私がお前をなつかしく思うように、お前もまた、私をなつかしく思っておくれ、山桜よ。この山奥では、花のお前以外には知る人もいないのだ。
という意味です。『金葉集』という歌集にこの歌は入っていて、その詞書(ことばがき=歌の前書き)には奈良県の吉野の山奥で思いがけず咲いていた山桜を見て作った歌だと書かれており、山伏の修行中に、思いがけず、山桜を見たときの気持ちを詠んだ歌だとされます。孤独な修行中、ふと山桜の姿を見て、何か心の緊張が解けたのでしょうか。作者はかなり高貴な身分なので、それを利用して位を昇ることもできたでしょうが、厳しい修行の道を選び、その結果として高い地位を得ました。
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