抽出をどう考えるか?
抽出は、コーヒーの加工工程の最終仕上げ、料理でいえば「盛り付け」にあたります。コーヒーの味・香りは焙煎工程までであらかた決まってしまっているので、抽出は「失敗をしないように」を旨とする方が誤りがないような・・・。いずれにしても、焙煎がセンチメートル単位で風味に変化を与えるとすれば、抽出はミリ単位の微調整の仕上げという役割です。 |
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どんな抽出法があるのか?
誰が決めたのか解りませんが、一般的に抽出法は次のように分類されています。
①ボイル法:コーヒー粉を湯の中に入れて加熱しながら煮出す方法(ボイル、ターキッシュ・コーヒーなど)。
②浸漬法:コーヒー粉を一定時間湯の中に漬けておく方法(サイフォン、パーコレーター、フレンチ・プレス、水出しコーヒーなど)。
③透過法:フィルターの中に入れたコーヒー粉の層に湯を通す方法(ペーパ-・ドリップ、ネル・ドリップ)。
エスプレッソはあえて分類すれば、透過法の一種。ヴェトナム・コーヒーは、もちろん透過法。ドリップの原点、ドゥ・ベロワのコーヒーポット直系の抽出法と思われます。 |
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まず、ペーパー・ドリップから
まず、初めに今回はペーパー・ドリップの抽出法を紹介します。理由は・・・単に最も普及していて、かつ手軽ないれ方だからです。ペーパー・ドリップにも各種ありますが、今回は日本で最も普及しているカリタ(写真左)、ペーパー・ドリップの開発元のドイツのメリタ(写真中)、独特の円錐形のフィルターのコーノ(写真右)の3つの方式を取り上げます。3方式それぞれに考え方に違いがあり、セッティングと抽出の仕方も多少異なります(具体的にはレシピを参照して下さい)。 |
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どうしたら美味しいコーヒーがいれられるのか?
この問いに対する答えがあれば話は早いのですが・・・。コーヒーの抽出理論は星の数ほどあって、付き合っているうちに、普通の人は「ごたごた言わず、粉にお湯をかければいいんだよネ」という結論になるはずです。といっておきながら、レシピで抽出方法を紹介するのですが、「美味しく」よりは、「失敗なく、一定の味に」という方向のいれ方です。 |
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コーヒーの味の調整
「美味しく」はさておき、抽出で味の微調整は可能です。風味の調整の関わる大きなファクターは、a粉の粒度、b湯温、c粉と湯の接触時間の3つ(粉の分量、湯の分量のファクターは固定)。このうち味の調整に最も有効なファクターは、b湯温。高温の湯を用いると、原則的には溶解する成分が多いので、苦味、酸味、その他雑味も抽出され、複雑な味になり、香りも強くなります。例えば、コーヒーが新鮮で風味が強く、総じて力があり過ぎるような場合は少し湯温を低めに、逆にコーヒーの味、香りに活力が足りないなら高めの湯温で抽出するといった具合に調整します。新鮮なコーヒーなら85℃を中心に±5℃ほどで調整してください。
a粉の粒度とc粉と湯の接触時間(ドリップでは注湯の量とタイミング)は、対になって、主に口当たりとコクに関係します。湯と粉の接触時間を長くすると口当たりは丸くなりコクがでます。しかし、細かい粉(特に微粉)に長く湯を接触させると過剰抽出となり、不快な苦味、渋味を呈します。粉と湯の接触時間を長くとるなら、粉を粗めに挽く、これが原則です。 |
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再加熱と保温は・・・
抽出液に熱を加えると、必ず味・香りにダメージを与えることになります。もしどうしても再加熱して温度を上げる必要があるなら、加熱してサーヴァーの泡が消える程度(約80℃)で止めておいてください。個人的にはコーヒーがかわいそうなので、再加熱お勧めしませんが、好みでしょうから・・・。 |
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水、ポット、ペーパー
コーヒー抽出液の成分の大半は水ですから、大切なのですが、硬度が高くなければ、ことさら名水を使う必要はないと思います。カルキを抜いた水道水で十分。ただ、エグ味がひどい場合は水を替えると効果がある場合も。
ポットは注湯量を調整できる(特に細めに注げる)ものを選んでください。
ペーパーについてはカリタ、メリタの純正(?)のほか、いろいろなメーカーのものが販売されています。新鮮な大きく膨らむコーヒーなら、粉自体の保水能力が高いので、粗めに漉(す)いた紙を使う方が無難です。
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まとめ
繰り返しになりますが、抽出は仕上げ段階の「微調整」ですから、コーヒーの味や香が好みから大きく外れているなら、抽出で何とかしようと考えるのは時間のムダ。好みのコーヒーを探すべきです。
もちろん、最後の仕上げの抽出を完璧に行うことは重要なことではあると思いますが、あまりに抽出ばかりに神経を使うと、迷路に入り込んでしまうことも・・・。 |
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