辻調グループ

コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
辻調グループ 最新情報はこちらから
Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
西洋料理TOPへFood風土エスパーニャ コラム一覧へ
連載コラム Food風土エスパーニャ
ここ数年、世界のグルメたちが注目しているスペインの食事情。進化するヌエバ・コシーナ・エスパニョラ(新スペイン料理)、スペインワインのイメージを一新するボデガ(ワイナリー)、変容するタパス(ピンチョス)と、話題には事欠かない。先頭を切るのは若い世代のニューリーダーたち。しかし、器は変わってもそこにはいつもスペインのエスプリが潜んでいる。いまやフランスやイタリアにまで強い影響を及ぼし始めたスペイン料理、その今を取り上げる。レシピでは、筆者がおすすめするスペインの代表的な家庭料理を紹介。
ココチャスとピルピル
スペインではシーフードをたくさん食べますが、その中でもメルルーサmerluza、バカラオbacalaoの消費量は群を抜いています。バカラオとは鱈のことですが、スペインでは実質的に干鱈を指します。生をフィレに卸して塩をして干したものです。昔、生の鱈の輸送が難しいことから塩漬けにしたという考え方は、日本海で獲れた鯖を京都に運ぶのに塩鯖にしたことに共通するものを感じます。
  さて、今回のテーマのcococha, cocochasの読み方は、ココチャまたはココチャス。S(ス)がつくのは複数形で、つけてもつけなくても通じます。スペインでは特にパイス・バスコPais Vasco(バスク地方)ではよく食べられるようで、バスク語の綴りがkokotxa, kokotxasとなります。
  それで一体ココチャスとは何?それは魚のあごの付け根のところにあるV字形の骨についている、小さな肉の塊です。小さな魚だとほとんど身は無いのですが、メルルーサ、鱈くらいになると10〜50gが取れます。言い換えればココチャスは食べた魚の数だけあるのです。
 バスク地方サン・セバスティアンの有名レストラン「AKELARE」のペドロ・スビハナPedro Subijana氏曰く、ココチャスは、鱈よりメルルーサの方が質が良いのだとか。しかし市場に並んでいるものを見る限り、まして調理済みのものは、見ただけでは我々には違いが分かりません。値段的にはかなり高級品です。調理をする時は、アサリなどの貝類を一緒に使うことが多いです。また煮汁にパセリなどを混ぜてグリーンソース仕立てにしているものもよく見かけます。トマトや赤ピーマンを加えた《赤》、イカ墨を加えた《黒》のソースに仕上がっていることもあります。
 調理場ではメルルーサやバカラオを卸してココチャスを取ることはほとんどありません。ココチャスは市場に山積みにして売られています。干鱈はたっぷりの塩がついたまま座布団でも重ねるように積み上げられています。既に塩抜きしたものも並んでいます。ただココチャスは塩漬けにすることはありません。
 干鱈の料理で、《ピルピルPil-Pil》という有名なものがあります。2005年1月放映のTV「世界ウルルン滞在記」でも紹介されました。今回のテーマ、ココチャスもピルピルにします。調理中に出てきた旨み(水分)をオリーブオイルと乳化させてソースにするのです。
 干鱈のピルピルの作り方。塩抜きをした鱈(バカラオ)を5センチ角位に切る。カスエラ(浅い土鍋。フライパンで代用可)にオリーブオイルをたっぷり入れる。ニンニクと唐辛子も加え、弱火にかける。油の温度が40℃になれば水気をよく拭いた鱈(バカラオ)を皮を下にして入れる。再び温度を40℃まで上昇させ、この温度をキープする。その間鍋を絶えず揺すり、火加減を調整しながら40℃を超えないようにくれぐれも注意する。10分ほどすると鱈(バカラオ)の周りから白いあぶくのような液体が出始める。このときの音が、ピルピルと聞こえるのでこの名前が付いたとか。30分くらいすると油は鱈(バカラオ)から出た液体と乳化してとろみがつき、白濁する。そうなった時が仕上がりです。

 現代のスペイン料理では、このような乳化したソースをベースにする、あるいは出来上がったソースに加える調理法が見受けられるようになってきました。いずれにしても、スペイン独特の水分(鱈のエキス)とオリーブ・オイルを乳化させたソースは、他の国では見かけない、興味深く美味しい物だと思います。
 余談ですが、干鱈の塩抜きをするときのアドヴァイス。干鱈が浸かる面積と十分の深さがある容器を用意します。底には5〜10センチほど底上げをする形に網を敷きます。ココがポイントです。干鱈から抜け出した塩分は底に沈み、容器の底の水の塩分濃度は濃くなります。その中に鱈が浸かってしまっていると、ある段階から塩分が抜けなくなるのです。ただ、ものによって元々の塩漬け加減が違うので、何時間塩抜きすればよいのかは端をちぎって食べてみないとわかりません。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ スパニッシュ・フリッター

辻調グループ校 西洋料理教授
人物 肥田 順
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group