田中博澄(以下T): 素材にちょっとこだわろうというテーマですが、最近はフレンチでも他の料理、日本料理、中国料理、エスニック料理などいろんなジャンルの材料などを使うようになってきたよね。 |
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吉川喜美子(以下Y): 日本人には特にそうだと思うんですけど、結構うけるし、口に合うんじゃないですか。 |
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T: そうなるとどこまでがフレンチでどこまでがエスニックで…という問題も出てくるけど。でも料理って、枠を超えたそういう広がりが無限にあるから面白いと思うんだ。ただ、これだけは絶対外せないって所はそれぞれの料理にあるよね。 |
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Y: よく似たイメージで考える事って可能だと思うんです。例えば、日本料理の「う巻き」は、柔らかい出し巻き卵とうなぎと甘めのたれの組み合わせ。これをフレンチに置き換えると、スクランブルエッグとうなぎとちょっと甘めのソース・ポルトみたいなね。
T: 素晴らしい発想だね!(笑) |
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Y: そうでしょ。今回作ったオマールの料理も見た目は中国料理みたいだけれど…でもフレンチっぽくもあり、エスニックっぽくもある。で、美味しければOKじゃないですか!(笑) |
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T: そう、調理法は炒めるだけとういシンプルさで、料理のイメージは中国料理のエビチリでもあり、イタリア料理のバーニャ・カウダでもあり、そして主になる調味料にタイ料理のチリインオイルと、いろんな要素を取り入れようと考えたんだけれど。
Y: 意外と甘さもあり、ぴりっと辛さもあり、チリインオイルの分量を減らせばお子様でも食べれますよ。 |
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T: きつい辛さじゃないので充分子供でも食べれるし、食欲もわきますよ。ご飯にもビールにもOKっていう料理ですね。 |
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Y: 家庭だとオマールは値が高くなるし、ちょっと手に入りにくいので、ワタリガニやエビなんかで充分ですよね。 |
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T: 充分だと思うよ。ただ出来ればエビは有頭のものを使ってもらったほうがソースにも旨みが出ていいと思う。 |
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Y: それにシェリー酒酢を使ってますけど、なければ赤か白のワイン酢で大丈夫ですしね。 |
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T: 何よりも短時間で簡単に作れるのが魅力だと思うよ。
そして次の料理だけど…今度は日本料理というか、その中でも庶民の味、特に関西の味と考えたときに、一番に頭に浮かんだのがお好み焼きなんです。それをどうにかフレンチ風に出来ないかなぁーと考えて…。 |
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Y: 発想が面白いですよね。
T: そう、自分でも結構大胆かなと思ったんだけれど、意外とすんなり生地の材料なんかは浮かんできましたよ。発想のベースはクリックcrique(フランスのヴィヴァレ地方の料理で、すりおろした生のじゃがいもで作ったお好み焼きのようなもの)ですけど。 |
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Y: それで試作をして、日本料理の素材の大和芋やれんこんを加えることで口当たりに変化をつけ、洋風にする為に、チーズで風味に変化をつけたりと、色々試行錯誤して出来たわけですね。 |
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T: まだまだ改良の余地があるというか、色々アレンジは出来ると思う。 |
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Y: あと、具になるカキとベーコンは相性ものですね。 |
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T: それこそお好み焼きなんだから、具はエビでも白身魚でもお肉でも何でもOKですよ。 |
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Y: ホットプレートで作ったらいいじゃないですか。家庭で本当にお好み焼きを焼くみたいに。大きく焼いてもいいけれど、今回みたいに小さくしていろんな具をのせて焼くのも楽しいですね。 |
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T: ソースもケチャップだのバルサミコ酢だのしょうゆだのと入れたけれど、簡単に作れるし、ほんとにお好みで味の変化をつけていただいてもいいと思います。マヨネーズやマスタードを入れたり……だんだん本物のお好み焼きに近づいてゆく…(笑) |
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Y: そして、青ねぎのクリーム煮は味のアクセントに、スプラウトはヘルシーさを、という事ですね。
まあ、型にはまった料理もいいけれど、あまりとらわれず「こんな取り合わせ、こんな使い方が出来るんだ」と広く知っていただいて、料理の幅をどんどん広げていただけると嬉しいですね。 |
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T: そうなると料理を作る事が、どんどん楽しくなると思いますよ。 |
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