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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
ホテルの料理今と昔&伝授和風シーフードグラタン
一年ぶりですが、皆さんいかがお過ごしですか。料理は何度作っても同じ味や、あの時の感動を再び、とかなかなか同じ様にいきません。奥深くて難しい。その反面楽しくて魅力的ですね。

船乗り 今回も元新阪急ホテルの渡辺総料理長に、活躍された時代の40年間を振り返って、料理の移り変わりを皆さんのよく知っているシチューを例に取り上げて、インタビューいたします。

総料理長 私の経験を基にお話しますので、あくまでも個人の意見や感想として、肩の力を抜いて聞いてください。

船乗り その前に、総料理長の紹介をさせていただきます。辻調理師学校の1期生として卒業。ホテル業界に身を投じ、一流ホテルの総料理長を努めた後、後進の指導の為、母校の辻調理師専門学校に戻り、教壇に立って後進の指導と学生の就職・日常相談など忙しい毎日を送られています。

新阪急ホテル時代の総料理長と母校の懇親会   水野フランス料理主任教授と

新阪急ホテル時代の総料理長と
母校の懇親会

 

水野フランス料理主任教授と


総料理長 若手育成をやりながら、古典料理を現代に合う形でお客様に提供するスタンスが、学校での実技指導と重なる面もあり、毎日がとても有意義です。学生を指導していて、学生自身の技量が上がったのを実感した時の彼らの笑顔が実にいいですね。

船乗り さっそくですが、単刀直入に、シチューの何が変りましたか。

総料理長 シチューの味がまったく違います。

船乗り 原因は、お客様の嗜好の変化ですね。

総料理長 それも忘れてはならないことの一つですが、もっと大きな理由は材料です。それから、レシピー(作業手順)はそんなに変っていなくても、レシピーには出てこない、料理にかける時間の手間ひまが最終的に味として現れます。

船乗り 人件費ですね。前回も最新設備の厨房話と、時間をかけて何日も前から仕込む仕事は無くなってきたと伺いました。

総料理長 同じ手順を踏んでも、時間の取り方、すなわち手間をどのように、どれだけかけるかが、味の違いを生み出します。同じ名前や同じ出来上がりの料理が、簡単スピード料理として紹介されておりますが、あれはまったく別物です。必要な時間と手間をかけていないものは、見栄えだけは同じでも、出来上がりの味は、あまりにもおそまつです。ただ、味を損なうリスクを最小限に抑えて時間をそぎ取り、できるだけスリムな形で、一般社会に広く広める事も私どもの仕事の一つなのですが・・・。相容れない事柄を追求し、均衡をとる、バランス感覚が大切です。

2004年世界料理オリンピックにチーム団長として参加   辻調グループフランス校にて

2004年世界料理オリンピックに
チーム団長として参加

 

辻調グループフランス校にて


船乗り 料理の奥深さは、相反する事柄を同時に追い求めるから一層難しくなるのですね。今回はスピード重視・今回は味重視・今回はだれでもできる簡単さ重視、などとはっきり割り切って紹介されているのが、今の料理の傾向かもしれませんね。

総料理長 私はそうは思いませんが、そういう見方の方もいらっしゃると理解しておきます。

船乗り 厳しいですね。材料という話が出ていましたが、その点はどうでしょう。

総料理長 今は、煮込む液体が茶色い出し汁と赤ワインなどと、手のかけ方がシンプルになってますね。以前はデミグラスソースを多用していました。このデミグラスソースを作るときは、良質の国産牛のくず肉やスジやスネをふんだんに使っていました。一度に大量のデミグラスソースを作る。味も乗りやすいし、また一定します。

船乗り ベースはデミグラスソースで、それをいろんな西洋料理のベースにしていたのですか。興味深い話ですね。

総料理長 後は、マスタードを加えたり色々変化をつけるなど、各セクションで工夫してました。

船乗り もう一つ、無理なお願いを聞いていただけますか。最近しきりに話題にのぼる、食育についてのお話も伺えるでしょうか。

総料理長 大変難しい話ですね。「食育基本法」も制定され、日本全体で様々な取り組みがなされて非常に面白い。私達プロは、お客様と二人三脚でのぞまなくてはいけません。

船乗り 具体的にどう考えたら良いのですか。

総料理長 いくら良い事を口で言っても、お客様の指示のもと、美味しい料理を提供できなければプロとして認められない。今まで培った技術を駆使した食への柔軟な取り組み。安心、安全、健康を念頭にメニュー開発するなど、時代に合った提案や工夫が必要です。 

料理作成中の総料理長

料理作成中の総料理長

船乗り では、何か一つ、料理を作っていただくことはできますか。

総料理長 家庭でもできる一品として、和風シーフードグラタンを紹介します。食育については私も現在勉強中です。今回は料理紹介のみに止めておきます。

船乗り 料理を実演していただけるのですね、ありがとうございます。






このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ ビーフシチュー
レシピ 和風シーフードグラタン

地中海料理大好き、船乗り気分男
人物 笠掛 昌二
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