タイ料理には4つの味があると言われています。漢字で記せば「辛(しん)・酸(さん)・甘(かん)・鹹(かん)」となります。 |
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まず「辛」ですが、これはぴりぴりした辛さのこと。ベースになるのはとうがらしです。プリッキーヌー(タイ語で「ねずみの糞のような」という意味)と呼ばれる小さなものを代表として、粗挽きにした種入りのとうがらし(プリック・ポン)などがあり、色々な料理にたっぷりと使われています。また使い方の違いとして、タイではとうがらしのヘタは取り除くのですが、中に入っている種はそのまま料理の中に一緒に加え、食べてしまうのも驚きですね。 |
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次に「酸」の味付けとしてよく使われるのが、マナオと呼ばれているタイ産のライムです。形は日本のスダチやカボスのように丸く緑色をしていて、大きさはピンポン玉くらいが標準です。酢のようにとがった酸味ではなく、まろやかな穏やかさで、柑橘類独特のさわやかさも添えてくれます。煮物やスープの仕上げに加えたり、炒め物や揚げ物、焼き物料理にかけたりします。また喉を潤すジュースとして、レモネードのようにして飲まれています。 |
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3番目に「甘」ですね。文字から理解できるように砂糖を中心とした「甘み」のことですが、辛いと思われているタイ料理には、実は砂糖がかなり多く使われています。現在はコストの面から考えてグラニュー糖が広く出回っていますが、タイ料理本来の味わいを楽しみたいのであればヤシから作られるパーム・シュガーを使いたいですね。またココナッツミルクも煮込み料理やスープ料理に多く使われ、独特の甘い風味を作り出しています。 |
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最後になりましたが「鹹」、これは塩辛さを表す味です。タイ料理では塩そのものを使うこともあるのですが、それよりも「ナム・プラー」と呼ばれる魚醤油がよく使われます。鰯のような小魚を塩漬けにして発酵させて作るもので、大豆を原料にした醤油に比べてアミノ酸による旨味が濃厚です。
タイ料理はこれら4つの味に、生のハーブや香辛料が多く加えられ、独特の風味を醸し出しています。 |
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さて今回のトム・ヤム・クンですが、上記で説明しました味を一つにまとめた料理で、えび(=クン)を使って特に「辛くて酸っぱい」味を強く出したスープです。ロシア料理のボルシチやフランス料理のブイヤベース、中華料理のフカヒレスープなど世界にはおいしいスープ料理が数多くありますが、その中でもタイのトム・ヤム・クンは三本の指に入るスープの一つだと言われています。 |
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