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ニュースリリース

【辻調塾】2月10日/「映画の中に見える『食』の風景」呉美保監督をお迎えして

イベント

2011.02.10

2011年の東京:辻調<新>塾の第2弾は、特別企画として映画監督の呉美保さんをお迎えしました。

呉美保監とは、「辻調映画部」は

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テーマは、「映画のなかに見える『食』の風景」

呉監督の好きな映画をまずはスライドで見ながら、食の景色を見て行きました。

テーマは「映画にみえる『食』の景色」。

ゲストスピーカーは、呉美保監督でした。
辻調は、映画「オカンの嫁入り」(角川映画)で協力させていただきました。


呉監督の映画と食べ物に対する愛情たっぷりのお話、とっても楽しく、ためになりました。

さすが新藤兼人賞受賞された監督です。

映画を見る視点が鋭いです。「カニをむさぼり喰ってるこのおっさんらは、絶対、悪い人」(「マルサの女2」冒頭のシーンをお父さんと見ていたそうな)と喝破した小学生が、こうやって、映画監督になっていくのですね。

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以下、監督のお話から・・・・

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・お茶漬の味(監督:小津安二郎)
育った環境も価値観も違う男と女が、見合い結婚によって夫婦になったがゆえに、ろくに愛情が育つことなく、冷めた夫婦となり、、、、といった感じの物語です。
夫婦って、たとえ恋愛結婚であったとしても、共に生活をしていくと、相手の欠点が目につくようになり、許せない部分も出て来るもの。他人同士が結婚をして「夫婦になる」ということはどういうことか?小津監督はその答えとして、まさにタイトルの「お茶漬の味」を提示する。
物語のラストシーン、すったもんだの末に、夫婦はお茶漬を食べるシーンはちょっとしたサスペンス映画のよう。お茶漬を食べながら、それまで向き合ってこなかった夫婦は、やがてそれぞれの本音をシンプルに吐露し合う。まさに二人が食しているお茶漬という、ごくごくシンプルな食事と重なって、映画を観る側をグイグイと惹き込む。

(辻調映画部の犬のつぶやき)夫婦愛について語る監督の真剣なまなざしに、どっきりしました。


・マルサの女2(監督:伊丹十三)
伊丹監督の作品はすべて人間の「欲」について描かれている。
「マルサの女」シリーズはまさに「金欲」。「食欲」という部分では「タンポポ」が上げられがちだし「タンポポ」は確かに食のシーンが多い。だから「タンポポ」挙げてもよかったのだが「マルサの女2」を挙げたのには理由がある。この作品の冒頭のシーンは私にとってちょっとしたトラウマだ。小さい頃、父がビデオショップで借りて来て見ていて、たまたま居合わせたのだけれど、冒頭、おっさんたちがタラバガニをむさぼっているシーンに目が釘付けになった。そして瞬時に、そのおっさんたちがとても強欲な「悪者」だという判断ができた。ただタラバガニを食べている姿を描くだけで、その人がどんな人なのか、わからせてくれたのだ。
当時小学生の私は、まさか映画監督なんて志してはいなかったけれど、今、私の作る映画に「食」が欠かせない要因は、大いにここが原点だと考えられる。

(犬のつぶやき)監督、すごい小学生だったのですね!


・ほえる犬は噛まない(監督:ポン・ジュノ)
団地内で飼い犬が次々と行方不明になる事件を、ペドゥナ演じる女の子が解決しようと奮闘する、ブラックユーモアサスペンス作品。
と、作品の内容はともかく、ペドゥナとその友人で、雑貨屋を営む巨漢女が、ラーメンを食べるシーンがあるのだが、その食べ方が実に韓国的!
ちなみに韓国って、インスタントラーメンしかない。すべて乾麺で、日本みたいに生ラーメン屋はないのが不思議。そのうち生ラーメンブームが起きそうなものだが。ビジネスチャンスか?

(犬のつぶやき)ホラーですワン!でも、たしかに、鍋から豪快に食べる韓国の食の景色、男前でほれますね。ペ・ドゥナ、ラブっす。

・初恋のきた道(監督:チャン・イーモウ)
文化大革命が起こる少し前の時代の、中国の田舎町を舞台にした、純愛物語。田舎町にやってきた都会的な先生に一目惚れをしたチャンツィー演じる女の子が、先生のために毎日弁当を作り、やがて先生がうちに食事にやってくることになり、料理を作り、、、、
その料理をする描写が、何とも丁寧で、料理を盛りつける器や、包む布や、全ての色彩が見事で、中国の大自然のロケーションも手伝って、実に映画らしい映画。人が人を愛する気持ちを、うまく食に込めている。

(犬のつぶやき)まるでCMのようなシズル感と光の美しさ。料理や、それをとりまく空気感が素晴らしいですね。しかし、あんなカワイイ、チャンツィーから離れて都会に戻って行くこの男。まったく納得できません。


・父、帰る(監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ)
音信不通だった父親が12年ぶりに帰ってきたことで戸惑う息子たち。そして、そんな息子たちを連れて父親は旅に出る。父の思わくは息子たちに伝わることなく、旅先で悲劇が起こる。ベネチア映画祭で最高賞をとった作品だけあって抑制されたセリフが見事。父が帰って来た日に家族で食卓を囲むのだけれど、そのシーンの料理が全くもって美味しそうじゃない。やはり「食」というのは「人の心」あってのものだと、この映画をみて痛感する。

(犬のつぶやき)この不味そうな食事の景色。これは、アキ・カウリスマキの不味そうに昼間っからビールをすするオッサンたちの景色にもつながりますね。空気のなかから色をぬいて、不味く冷めた料理を描く。「食の景色」もなかなか深いですね。

酒井家のしあわせ(監督:呉美保)
現場で、味噌汁の具にキャベツは有りか?論争になったこと。
「マルサの女2」から影響を受け、黙々とカニを食べるシーンを描きたかった自己満足。
たまに食べるラーメン&ライスの美味さについて。

(犬のつぶやき)もう、最高傑作ですよ。まだの方は、いますぐレンタルして観て下さい。脚本も監督が手がけていますが、いやあ、脚本も役者も料理も光っている作品です!