辻調NEWS LETTER vol.16(留学生インタビュー)
【日本料理海外普及人材育成事業】
2年の就労を終える留学生にインタビュー
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2014年に農林水産省認可の「日本料理海外普及人材育成事業」が発足し、調理師養成施設に在籍する留学生を対象に、日本料理研修の為の2年間の延長滞在が可能となりました。この制度を使って、辻調理師専門学校からはこれまで8名の留学生が日本料理店にて就労を行っています。2015年から就労している、第1期となる外国人調理師(留学生)が2年の就労を終えるにあたり、インタビューを行いました。
◆エクシブ有馬離宮「日本料理 有馬 華暦」勤務
陳 禹丞さん(台湾)
>2年間を振り返って
あっという間の2年間だった。現場での徹底した衛生管理や原価計算も経験させてもらえて、予想以上に得るものが多かった。宴会やバイキングなども経験できて、人前でお寿司を握ったこともあったし、日本料理だけでなく中国料理や西洋料理の味見もすることができた。あとは伝統的なものだけでない、最近の流行の器なども見ることができて勉強になりました。
成長したことは、肉や魚を何グラムで何人前切るのか、切り分けの分量を手の感覚でわかるようになったこと。忙しいときにはとても役に立ちました。
仕事以外では、時間が合えばみんなでバーベキューをしたり、食事をしたり。僕はマンションを借りていてキッチンがあったので、休日には先輩達が家に来て、天ぷらの勉強など一緒にしていました。
>学校での学びはどのような場面で活かされたか
たくさんあるが、基本的な調理技術や庖丁の使い方は、しっかり学んでおいてよかったと思います。もちろん現場では基本だけではダメだけど、理屈が理解できていたから臨機応変に対応できた。ここでは分業制で、桂むきなど下処理を担当することはほとんどなく、基本技術を練習する機会はなかったけど、急に必要になった時も対応できたのは、学生時代に一生懸命練習していたおかげだと思います。
>将来の夢について
台湾で自分のお店を持ちたい。一番やりたいのは料理教室です。日本に留学する前は教師になるのが夢だったので。料理教室をしながら日本で学んだ料理や食文化を台湾の人達に伝えたいと思います。理想は、普段は料理教室をやって、週末は口コミで広がった人にだけ提供できるようなお店を持ちたい。
>あとに続く後輩へ
わからないことは恥ずかしがらず素直に聞いた方がいいと思います。僕も最初は言葉の壁を感じた。日本語は話せるけど現場に入ると早口だし、忙しいので詳しくは説明してもらえない。厨房でしか使わない専門用語も多いので慣れるまで苦労したが、臆せず何度も尋ねて克服しました。あとは、学校で学んだことをちゃんと覚えておくと役に立ちます。基本がわかっていれば効率的に仕事ができるから。
>指導担当:川井照久副料理長のコメント
「日本料理海外普及人材育成事業」の第一期生ということもあり、初めての試みだったので当初は心配でした。しかし、陳さんは日本語も堪能で、意欲もあり、非常に優秀な人材に出会えたことに感謝しています。理解力も高くて助かりました。期間が決められているので広く浅くしか実践できず、物足りないことも多かったのでは、という申し訳なさと、もっと経験させてあげたかった、という思いが強いです。各ポジションのスピードについていけなければそれが苦になり、なかなか次に進めなかったと思いますが、本当によくやってくれました。
陳さんは家でいろいろ作った料理の写真を見せてくれました。非常に勉強熱心ですし、若手の刺激になっているとよいなと思っています。
◆エクシブ京都八瀬離宮「日本料理 京都 華暦」勤務
申 秉錫さん(韓国)
>2年間を振り返って
思ったより早かった。自分ではわかっていると思っていたことも、実際に現場で経験して理解が深まったことが多かったです。毎年成長のステップを描けたのは自分に合っていました。目標を伝えると、それが達成できるようみんなで協力する体制があり、自分なりに成長を感じることができました。
ただ、年間通して1つのポジションを担当したらもっと学べることが多かったように思います。季節ごとの食材にすべて触れることができるから。やはり2年は短かった。日本のいろいろな味を吸収したいと思って勉強したが、椀物は学校の味とも違うから、美味しさのラインがまだまだつかみきれていないし、日々勉強中です。
仕事は厳しいけれど、仕事が終わればみんな仲がよくて、ご飯に行ったり飲みに行ったりしたのも楽しかったです。
>学校での学びはどのような場面で活かされたか
基本技術は役に立ったが、僕は調理理論や衛生の法的な部分をもっと勉強しておけばよかったと思いました。学校ではテストのために勉強していたことがここでは実践で必要だから。他には、厨房から客席までの距離を計算して料理を仕上げること。これは学校でのシミュレーション授業での感覚が蘇り、役に立ちました。
>将来の夢について
カウンターで会席料理を出す店を持つことが夢です。それまでには、もっと勉強しなければいけないと思っています。僕は何か1つを究めたくて、例えば板場ならどんな魚でもさばけると堂々と言えるような料理人になりたいです。韓国に帰ったら、ここのように指導してくれる人もいなくなると思うので、成長が止まってしまわないよう意識して勉強していきたいと思います。
>あとに続く後輩へ
何を学びたくて2年間滞在するのか、自分の目標をしっかり決めて来た方がいいと思います。2年は短いから。そして学生ではないことを意識して自分を切り替えなければいけません。僕の場合は、全て自分でやることが勉強になると思って何でも自分でやりがちだったけど、ここでは、決められた時間内に仕上がるよう段取りを組んで、時には他人の協力を得ることを求められます。性格上、他人の力を借りることが苦手ですけど、プロの現場であることを意識して、そこは切り替えて順応しなければいけませんでした。
>指導担当:竹内千秋副料理長
とても戦力になっています。同僚に対する振る舞いや、料理の技術的にもレベルが高かったと思います。人間関係においては、若い子をご飯に連れて行ってくれたり、元気のない人には平等に声をかけてサポートしてくれたり、若手のお手本になっていました。今は、ひと通りのポジションを経験してもらって、最後にもう一回魚を担当したいという希望があったので、魚の料理を受け持ってもらっています。一番心配なのは研修が終わってからの進路について。ここで頑張ってくれたことが、母国に帰ってから、彼のキャリアにとってプラスに働くよう願っています。
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昨年春、本校に在籍する留学生を対象に実施したアンケートでは、「卒業後、日本で働きたいですか」という問いに対して、「日本の料理店で修業して経験を積みたい」と答えた学生は70%を超えていました(「2016年留学生アンケート結果」)。今後、日本で調理・製菓を学んだ留学生が、卒業後も日本に滞在して就労できる機会が増えることを願います。
4月からも、新たに4名の留学生が日本料理店での就労をスタートさせます。限られた時間の中で、何でも吸収しようと貪欲に学ぶ彼らを、これからも応援しサポートしていきたいと思います。
<お問合せ>
辻調グループ企画部:尾藤、渡邉
TEL:06-6629-0206
E-mail:tsujichopress@tsujicho.com
辻調NEWS LETTER Vol.16