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Le Sot l'y Laisse(ル・ソリレス)

フランス校 食べ歩き日記

2023.10.10

今回紹介するレストランはパリの11区にある『Le Sot l'y Laisse』(ル・ソリレス)です。

席に着くとシェフ紹介の本があったので見せていただきました。

シェフの土井原英治さんは私たちの先輩で、1992年エコール辻大阪を卒業、その秋にフランス校・シャトー・エスコフィエを卒業後し、ボルドー地方でレストラン研修も経験しました。帰国後は箱根にあるオーベルジュ「オー・ミラドー」に就職。若干23歳でスーシェフに上り詰め、8年半の勤務後転職を決意されました。
その後は国内屈指のレストラン業界大手の「ひらまつ」へ入社、広尾本店をはじめ、パリ店、銀座店で勤務を経て、本場「ポール・ボキューズ」と同じ味わいを受け継ぐ「代官山メゾン・ポール・ボキューズ」で料理長として活躍し、2011年2月まで在籍されていました。

同年10月にシェフの料理を表現するため、パリで独立、開業を果たし、今年で12年目を迎えようとしています。約20年に及ぶ経験と確かな技術からその評判は瞬く間に広がり、今も開店当初と変わらず地元のフランス人客でにぎわう人気のビストロです。

お店はパリ11区、偉人が多く眠るペール・ラシェーズ墓地の近くです。この日のディナーも大盛況で満席でした。

メニューは4品で79€です。

お皿はプラスの料金でグレードアップした品を選ぶことが出来ます。

まず、アミューズ・ブーシュです。

『Mousseline de crème de maïs』

とうもろこしの冷製ムースです。ムースと言っても舌触りをふわっと軽くするために、エスプーマを使って仕上げられていました。食材はとうもろこし、玉ねぎ、ポロねぎ、牛乳とシンプルですが、とうもろこしの甘味が十分に引き出されていました。上にはポップコーン、オリーブ油、黒胡椒が飾りつけられていました。とうもろこしの甘味が口いっぱいに広がり、ポップコーンの食感と胡椒がアクセントになりとても相性が良かったです。

サーヴィスの方がフランス人のお客様に説明のときにはこのように伝えていました。
"日本の自動販売機にはコーンスープが必ずあります。日本人にはそれだけ馴染みのあるスープです。"
この説明を聞いたときに、ハッと気づかされました。今までなら当たり前に思い生活の中で注目しなかったことでも、視点を変えると日本の文化なのだと感じました。

2品目は前菜料理です。

『Fricassée de sot l'y laisse, légumes et champignons sautés, œuf mollet, mousseline de vin jaune』

店名にもなっているsot l'y laisse(ソリレス)とは、直訳すると「愚か者はこれを残す→残すのはもったいないおいしい部分」という意味で、鶏肉の部位だと料理人ならすぐにわかると思います。もも肉の背中側についていて、1羽から2つしか取れない希少部位です。つけ合わせは旬のジロール茸とブロッコリー、半熟卵が添えられていました。周りにはジュラ地方特産の黄色いワインで作られた泡のソースが鶏肉ととても相性が良く、まとまりがある味に仕上げられていました。贅沢に3羽分のソリレスが、完璧な火通しでジューシーに仕上げられていました。
とても火通しに感動したので、シェフにコツを聞くと"さっと焼いただけですよ"と言われました。食材をリスペクトし、経験の積み重ねから得た確かな技術があるからこそできる、シェフの技だと感じました。

次は肉料理です。

『Filet de bœuf Rossini, noirmoutier sautés, sauce Périgueux』

牛フィレ肉のロッシーニ、ノワームティエ産のじゃがいもソテー、ソース・ペリグーです。
まず牛フィレ肉のロッシーニはフランス革命時代の偉大なフランス料理のシェフであるマリー・アントナン・カレーム氏が考案した料理です。肉料理の中で一番おすすめという事でいただきました。
上質なフォワ・グラと牛フィレ肉に、トリュフがたっぷり入ったマデイラ酒を使った濃厚ソースで食べると、口いっぱいにうま味が広がり幸せを感じるほどおいしかったです。つけ合わせのじゃがいもは甘味が強い品種でした。アーティチョークも丁度よい火通しでとてもおいしかったです。

シェフは素材に特にこだわりを持っていて、その中でもフォワ・グラについて貴重なお話を聞くことが出来ました。いつも仕入れているフォワ・グラは鴨のお腹の中で熟成されたフレッシュの塊で、そのまま紙に包まれた個体を使っているそうです。フランスでは、スーパーに行くとフレッシュの真空パックや冷凍で売られているフォワ・グラを目にすると思います。真空パックや冷凍すると長持ちしますが、フォワ・グラの中の空気が抜け固くなり、紙に包まれたものと比べて焼いた後の状態が大きく違うそうです。どんな食材が良いのか、素材の情報を熟知されています。その食材を使用することで、お客様が食べたときに一番良い状態で提供できるものを厳選し、常に素材と向き合い、探求して料理を作っているそうです。

最後にデザートです。

『Compotée de pêche, mousse de citron vert, gelée de verveine fraîche et glace à la vanille』

桃のコンポートとフレッシュのレモンバーベナのジュレ、バニラアイスクリームです。旬のフルーツをたくさん使用していました。
まず、桃は贅沢にコンポートにしていました。今の時期はマルシェに行けばどこでもおいしいものが手に入ります。その上には、ハーブティーでよく使われるレモンバーベナの葉っぱから抽出した液体で香りや風味のよいジュレ。バニラビーンズをたっぷり使ったアイスクリームを乗せ、旬のベリー類で甘味と酸味のバランスが丁度よく、夏にぴったりのデザートでした。

ワインです。
サーヴィススタッフの方にたくさんのワインを出していただきました。

【ワインリスト】

【白ワイン】
 
アルザス、コンドリュー、ブルゴーニュの3種類

【赤ワイン】 

ソミュール、シャトー・マルゴーのカジュアルワイン、シャトー・ヌフ・デュ・パープ

【甘口ワイン】

 アルザス甘口ワイン・ゲヴェルツトラミネール

どのワインも料理やデザートにぴったりで、厳選されているなと感じました。
その中でも私が特に感動した組み合わせは、ソリレスの料理と白ワインの一番右側の写真のドメーヌ・ユベール・ミラーのシャルドネです。柑橘系の香りが心地よく、ソリレスのうま味が凝縮された味とクリーミーなソースを包み、繊細な酸の伸びとミネラル感がさらに料理の味に深みを与えていてとても感動しました。
たくさんの種類を出していただいたので、料理に様々なワインを合わせられる貴重な経験ができ、味覚の勉強にもなりました。

食後は、シェフが全テーブルにあいさつをしていました。厨房で鋭く厳しいまなざしで料理を作る姿は、まさに侍のようですが、その姿は一転。はにかんだ笑顔にはシェフの人柄や、お客様に料理で喜んでいただきたいという思いが溢れていました。
料理に対する思いが人一倍熱いシェフ。常に前向きな思いや、向上心のある料理人生についてもお話しいただきました。ポール・ボキューズ氏の「La bonne cuisine, c'est de bons produits, une juste cuisson,un bon assaisonnement, et c'est tout(おいしい料理とは、良い食材、良い火通し、良い味付け、それだけだ)」、という言葉がシェフのすべての料理のベースです。フランスで最初に食べたフランス料理がポール・ボキューズ氏の店で、この時の感動が今の自分の原点。そして、フランス校ではボキューズ氏自ら教えていただく機会に恵まれ、その時の講義を五感で感じとったことが料理のコンセプトにつながっているそうです。昔からこの気持ちは変わらず、現在も料理に対する熱い気持ちとその人柄で、お客様に接している姿が素敵だと感じました。

最後に厨房の中も説明いただき、限られた空間で何品も提供できることに驚きと、隅々まで綺麗に片づけられていることも料理のおいしさの秘訣につながるのだと感じました。

パリに訪れた際はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

Le Sot l'y Laisse(ル・ソリレス)

70 rue Alexandre Dumas, 75011 Paris FRANCE

℡ : 01 40 09 79 20

Instagram : restaurant.lesotlylaisse.paris