Restaurant Antoine レストラン・アントワーヌ(パリ16区)
今回の食べ歩き日記はパリから。
エッフェル塔を眺めながら、明るくモダンな雰囲気のなか、おいしい魚料理が食べられるという1ツ星
「レストラン アントワーヌ Restaurant Antoine」をレポートします。
場所はパリ16区。90カ国以上の在仏各国大使館が集まる高級住宅街です。
3ツ星の「アストランス Astrance」をはじめ有名なレストランがたくさんあるエリアでもありますが、
この「アントワーヌ」はメトロの「アルマ・マルソーAlma Marceau」駅からすぐ、セーヌ川のほとりにあります。
エッフェル塔が見えるテーブルもあって、雰囲気は抜群です。
店内はいたってシンプルですが、デザイン性にすぐれ、窓が大きく明るくて清潔な印象をうけます。
客席から料理人たちの姿が見えるよう、厨房にも2面に大きな窓が取り付けられ、厨房の様子がうかがえます。
つくっている人の顔が見えるのはうれしいですね。
オーナーのアントワーヌ・ヴィニュロン Antoine VIGNERON氏は、パリの5ツ星ホテル
「ル・ブリストル Le Bristol」で15年間レストラン部門のディレクターを務めた人物。
"パリで最高の魚料理の店"を目標に2008年にこのレストランを立ち上げました。
そんなわけで、メニューはもちろん魚料理ばかりです。お店のモチーフももちろん魚。
いたるところに魚を模したデザインがあしらわれています。かわいい!
このお店のシェフを務めるのはティボー・ソンバルディエ Thibault Sombardier氏。
なんとリヨン出身だそうです!フランス校の研修生もお世話になっているリヨン郊外のレストラン
「ラリヴォワール Larivoile」で修業したのち、パリの「ル・ムーリス le Meurice」や「カレ・デ・フイヨン
Carré des Feuillants」といった星つきレストラン、そして「オ・トゥル・ガスコン Au Trou Gascon」を経て、
このお店のヘッドに着任した若きシェフです。
このシェフの生み出す料理にあわせて、手頃な値段のものから高価なものまで、ワインもたくさん取り揃えてありました。
店の奥にあるワインラックがちょっと変わっていてオシャレ!
そんなことを思いながら店内をキョロキョロしていると、さりげなくおつまみが登場。
料理を選ぶ間にアペリティフと一緒にどうぞ、ということですね。さすが1ツ星。
さて、そんなレストランで、今回いただいたのは、コストパフォーマンスが評判というランチメニュー。
35ユーロで、「前菜+メイン」もしくは「メイン+デザート」の組み合わせが選べます。
迷わず、「前菜+メイン」を選択。すると自動的にアミューズが出てきました!
Amuse-bouche
料理名は確認でませんでしたが、ヴィシソワーズ・スープのようなジャガイモのムースが、おそらくサイフォンでドーム上に
盛られています。そしてその中には角切りのジャガイモが。全体的にしっかりとニシンの風味がつけられていて、
魚のだし好きな日本人にはますます食欲がそそられる一品でした。
上に降りかけられている緑のものはクレソン、パセリ、エストラゴンなどのハーブをピュレにしたものを冷凍粉砕して
粉状にしたものだそうです。アミューズから手の込んだ料理でびっくり。
そして前菜はこれ。
Fricassée d'encornet et Mousserons Bouillon de Châtaigne
オンコルネ(ヤリイカ)のフリカッセです。
バターとパセリでしっかりソテーされたオンコルネとセップとムースロンにシャテーニュ(栗)とフヌイユの泡のソースが
注がれた一品。白く丸いものはシャンピニオン・ド・パリ(マッシュルーム)をスライスして丸くくりぬいたものだそうです。
黒いお皿にセンスよく飾られていて、見た目もとてもモダンです。
イカとキノコとソースの3つの異なった味わいをひとすくいにしていただくのがオススメ。
フランスではイカをつかった料理をあまり見かけないので、イカが大好きな日本人としてはほどよく焼けたイカの
香ばしさがたまらない料理でした。
メインはタラの料理。
Cabillaud rôti en cuisson lente fenouil braisé au Safran Ail confit
「キュイソン・ロント cuisson lente」とは、ゆっくり火入れすること。
一度味付けして焼き色をつけたキャヴィオ(タラ)をオーヴンで蒸すように火入れしています。
付け合わせはフヌイユ。さらに3つの違ったソースがそえられた一品です。
オレンジのソースはトマトソース。泡状のものはフヌイユのピュレに風味をつけたもの。
かすかにニンニクが効いていますが非常に上品な味でした。茶色いソースもトマトやニンニクを
ベースにした別のエミュリュシオンだそうです。
と、ここでランチメニューは終ってしまうのですが、それではもったいので、もう1品、別にオマールの料理を注文。
このお店は、単品のア・ラ・カルトで注文すると一皿がだいたい50~60ユーロ。このオマールは68ユーロでした。
Homard et Cèpes en Fricassée Persillée Emulsion de Verjus à l'huile de noix
しっかりグラッセされて、おいしく香りづけられたオマールの身がたっぷりの一品。
泡状のソースはヴェルジュ(熟す前のブドウからつくられる酸味の強いジュース)とフュメ・ド・ポワソンからつくっている
そうです。
オマールの料理はオマールそのものがおいしいのですが、このヴェルジュの酸味が、料理の味に適度な変化を
つけていて、爽やかに仕上がっていました。
ここで、料理に満足した勢いで、なんとフロマージュも注文!
フロマージュはプラトーからの選択制ではなく固定でした。
そして、結局デザートまで追加・・・・もはやランチメニューはなくなっていますが(笑)。
なんとアヴァン・デセールまでついてきました!
Sorbet Poivre du Sichuan
なんと、山椒風味のソルベ!山椒の風味が意外にもソルベの甘みと合うから不思議。
Coing confit Croustillant et Crémeux Texture d'amande Double sorbet
カリンをつかったガトー。四角い白い部分がクリーミーなのに対し、カリンのコンフィのカリっとした食感が楽しい
季節のデザート。
Tarte Caramel chocolat Compote de Poire pochée au Lapsang Souchong
テーブルの上で熱いチョコのソースをかけてくれます。とけたところからポワールのコンポートが出てくるしかけ。
別のお皿でポワールのアイスクリームがついてきました。
Comme un Vacherin aux Agrumes
これはヴァシュランを一度分解して、再構築した感じのデザート。柑橘系のソースがさわやかな一品。
以上が、この日体験したラインナップです。
料理は全体的に泡のソースが多く、あっさりしていて女性でも全部おいしく食べられそうなボリュームです。
料理や店の雰囲気とともに、今回特に印象深かったのが、サーヴィスの対応がとても気持ちよかったこと。
邪魔にならない程度に時々話かけてくれたり、欠かさずお水を注ぎに来てくれたり、料理の説明もていねいで、
非常にエレガントなサーヴィスでした。
隣のテーブルではソール・ムニエルを注文していましたが、一尾まるまるのソール(ヒラメ)を、火のついた台の上で、
目の前で取り分けてくれるなど、パフォーマンスも楽しめます。
Restaurant Antoine
10, avenue de New York 75116 Paris,
Tél. +33 (0)1 40 70 19 28.
Site web: www.antoine-paris.fr
定休日:なし