フランス地方菓子の特色。
皆さんこんにちは! 元気ですか!
今回で『製菓理論洋菓子』今年度最後の授業レポートとなりました。
今年1年間、フランス菓子について『基本生地』『基本クリーム』『材料の特性』や
『カテゴリー』をテーマ別に授業を行ってきました。
日本にも地方によって特色や銘菓があるように、フランスにも同じように各地方によって
昔から受け継がれてきた文化や食べ物、そして地方菓子があります。
今までも何品かは授業の中でも紹介しましたが、1年間の授業を締めくくるにあたって、
最後にフランスの地方菓子の特色をご紹介します。
今回は数あるフランス地方菓子の中から、4種類のお菓子をつくりました。
まず1品目は『ガトー・バスク』。
名前のとおりフランスとスペインにまたがる『バスク地方』の伝統菓子です。
この二つの国にまたがる地方は、料理や言語その他でスペインでもなくフランスでもない独特の文化を持ち、
言語は『バスク語』を話し、男性は『ベレー帽』をかぶっています。
バスクの旗は『ローブリュー』というバスクの十字が掲げられています。
ローブリューとは、4つの羽が火、大地、空気、水を表しており、
その4つが交わることは、"永遠""愛""平和"の象徴とされています。
『ガトー・バスク』はビスケット生地の中にカスタードクリームや
ブラックチェリーのジャムやチェリーのコンポートが入り、
表面にはローブリューを描いて焼き上げるのが一般的です。
バスク地方はフランスにチョコレートが最初に入ってきた場所なので、チョコレートのものも売られています。
今回は大きなものにはカスタードクリーム小さいものにはブラックチェリーのジャムを挟んで焼き上げました。
余談ですがバスクのリネン(布)も有名です。
バスク地方は伝統的に麻を栽培して、丈夫な布を作っており、
当初は日除けや虫除けに牛の体にかけるためのもので、ストライプの種類で持ち主を見分けたと言われます。
今ではバスクの人々も愛用するテーブルクロスやエプロンなどのアイテムに使われており、
布に描かれる線は『7本』と定められ、これは7州のうち、
3州がフランス・バスク、4州がスペイン・バスクをあらわしています。
ちなみにこの地方のサンジャン・ド・リュズという町で作られているマカロンは最高においしいです。
私がフランス校に勤務していた時にはあまりに美味しすぎて、車で7時間かけて4回も食べに行きました。
興味がある人はフランス校勤務時代に私が書いたブログがありますので是非見てください。
〖とっておきのヨーロッパだより〗みつけた!最高のマカロン
2品目は『カヌレ・ド・ボルドー』。
最近は大阪の街中でも見かけるようになった『カヌレ』。
もともとはフランス南西部の高級ワインで有名なボルドーの修道院で生まれた伝統菓子。
ボルドーにあるパン屋さんやお菓子屋さんには大抵置いてあります。
1個当たり平均、1.3ユーロ(約160円)。
ボルドーの人々はカネレを朝食・おやつ・デザートと、どんな時にも食べるそうで、
時には結婚式のウェディングケーキ代わりにも用いられることもあるそうです。
カヌレとは「溝のついた」と言う意味で、
小さな釣鐘型に12本の縦溝を使った独特の型の内側に蜜蝋を塗って焼いたもの。
蜜蝋とは、蜜蜂が巣を構築するための主成分で腹部の蝋線から分泌する物質で
保湿・柔軟効果があることから、化粧品や軟膏としても使われるもの。
修道院では中世の頃からロウソクを製造するために養蜂を行い、
ミツバチが作り出す蜜蝋を採取していたことから、型に蜜蝋も塗ることを思いついたと言います。
そんな身近な材料をお菓子作りにも活用したというわけで。
この蜜蝋によってカヌレの特徴である美しい焼き色と艶が出て、カリッと仕上がるのです。
そして銅製の型を使う事によって、熱が均一に当たり、カヌレ独特の食感に。
また、蜜蝋を塗る事によって、美しい焼き色と艶が出て、カリッとした状態に仕上がります。
3品目は『ファー・ブルトン』。
フランスの北西部ブルターニュ地方に古くから伝わる郷土菓子です。
ブルターニュ地方はイギリスから渡ってきたケルト人が住み着いた地。
ファー・ブルトンの「ファー」はお粥の意味。もともとは家庭で作られてきたおやつです。
主に家庭で作られており、もちっとした舌ざわりが特徴で、
お店では陶器製のオヴァール型やアルミホイルの型で焼いたものがそのまま売られています。
本来は干しプラムを入れるが、地方によってはチェリーやレーズンやリンゴを入れて焼くものもあります。
今回の授業ではファー・ブルトンのアパレイユ(流し種)にも注目して授業をしました。
家庭菓子だからこそ、いろんな地方で多少の配合や形を変え、
中入れる具材を変えたりしながらいろんなお菓子に応用されます。
もちろん配合によって食感は少し変わるかもしれません。
例えば薄く焼けばブルターニュでも有名な『クレープ』にもなるし、
タルト生地に流して焼けば『フラン』にもなるし、
小麦粉を抜いたら『プリン』や『クレム・ブリュレ』にもなる。
鍋に入れて炊き込んだら『カスタードクリーム』になるかも、
さらには先ほど紹介した『カヌレ』も同じジャンルのお菓子ひとつ、
さらに探せば、フランス各地でよく似たお菓子が存在するかも!
もしかしたらイギリスの『プディング』も同じかも?
ブルターニュ地方だけにルーツはイギリス?
世界中にもよく似たお菓子があるかも・・・和菓子でもあるかな??
って考えるとお菓子作りって奥が深くておもしろいですよね!
最後の1品は『ピュイ・ダムール』。
このお菓子は最後に私が学生たちに食べてほしかったお菓子です。
ピュイは井戸、アムール(仏 amour)は愛 の意で、「愛の泉」と訳されている。
こんなロマンティックな名前を持つお菓子。
同じ名前のお菓子がパリの『ストレール』にも有名なお菓子がありますが、
今回のものはノルマンディー地方の『パティスリー・デュポン』の
スペシャルティ『ピュイ・ダムール』を作りました。
ふぁわっとサクサクに焼き上げたパイ生地の器の中に、
フレッシュのフランボワーズとフランボワーズのソースを入れ、
表面には『クレム・ピュイ・ダムール』という、『クレム・ドゥブル』という少し乳酸菌発酵させた
濃厚な生クリームとイタリアンメレンゲを泡立て、
さらにカスタードクリームと合わせたスペシャルクリームをたっぷり絞って、
表面に砂糖を振ってキャラメリゼさせたお菓子です。
パイのサクサクと濃厚なクリームとフランボワーズの酸味のバランスが何とも言えません。
最後に、1年間学習した基礎的な知識や菓子づくりにおける考え方など、授業内容を振り返りました。
どうすれば『美味しく』『きれいな』お菓子をつくることが出来るか?
を追求するには、努力し続ける必要があります。
もっと単純に言うとお菓子づくりが好きであり、大切な人に最高に美味しいものをつくって、
食べてもらって喜んでほしいという気持ちが大切であり、原点ではないかと思います。