辻調グループ

コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
辻調グループ 最新情報はこちらから
Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
西洋料理TOPへFood風土エスパーニャ コラム一覧へ
連載コラム Food風土エスパーニャ
ここ数年、世界のグルメたちが注目しているスペインの食事情。進化するヌエバ・コシーナ・エスパニョラ(新スペイン料理)、スペインワインのイメージを一新するボデガ(ワイナリー)、変容するタパス(ピンチョス)と、話題には事欠かない。先頭を切るのは若い世代のニューリーダーたち。しかし、器は変わってもそこにはいつもスペインのエスプリが潜んでいる。いまやフランスやイタリアにまで強い影響を及ぼし始めたスペイン料理、その今を取り上げる。レシピでは、筆者がおすすめするスペインの代表的な家庭料理を紹介。
プリオラートワインの誕生
ルネ・バルビエ氏 バルセロナから海岸沿いの高速自動車道をタラゴーナ方面へ150キロほど南下する。そこから内陸に入って行くのだが、岩また岩の渓谷。県道に入るなり細い2車線の曲がりくねった坂道が永遠に続くかと思われる。かなりのスピード・ダウン、約束の時間に大幅に遅れてしまった。プリオラート地区に入ると崖にへばりつくような段々畑にブドウは育てられていた。

 スペインのワインと言えばリオハ州リオハ、ガリシア州リベイロ、カスティーリャ・イ・レオン州トロやルエダ、ナバラ州ナバラ、カタルーニャ州ペネデスやタラゴーナ、バレンシア州アリカンテなどが有名だが、1980年代の終わり頃から、無名に近かったカタルーニャ州のプリオラート(PRIORATO)が、世界中が注目するワインに生まれ変わった。
 プリオラートとは、フランス語のプリウレと同様、《修道院》の意味である。夏は酷暑、冬は厳冬、年間降雨量550mmという過酷な環境で育ったガルナッチャ(フランスのグルナッシュ)種やカリニャン種からは頑強でアルコール度数の高い、色の濃い赤ワインが作られていた。かつては、色付けやアルコール度数を増すためのブレンド用として用いられた時代もあった。他の地域より遅れて襲ってきたフィロキセラに被害を受けたブドウ畑は誰も再耕せず、打ち捨てられてきた。それが突然世に出たその秘密は、4人のワイン革命児*にあった。

プリオラートのワインを初めて瓶詰めしたのが彼の祖父だったその1人《ルネ・バルビエ氏》は、父親もブドウ栽培をしていた。彼の曽祖父はフランスのコート・デュ・ローヌにあるワイン産地、ジゴンダスでワインを造っていたが、フィロキセラでブドウ畑は壊滅状態に陥り、1880年タラゴーナにネゴシアンとして事業を起こした。プリオラートのワインを初めて瓶詰めしたのが彼の祖父だった。その後彼の家系は代々ワインに関わり、ルネ・バルビエ氏自身もリオハの名門ワイナリーで働いていた。1970年代、彼はたびたび訪れていたプリオラートに潜在的な魅力を秘めたブドウ畑を発見した。 1979年に数ヘクタールのガルナッチャの畑を買い、家族でガラタヨップス村に移住。ワインを通して知り合った友人たちにブドウ栽培と醸造技術の革新を呼びかけ、ワイン造りを始めた。これが、現在に至る「プリオラート伝説」の第一章である。

*モダンスペインワインのパイオニア、ワイン革命を起こした4人とは?
アルバロ・パラシオス、ホセ・ルイス・ペレス、パストラーナ夫妻、ルネ・バルビエの4人。アルバロ・パラシオスは《レルミタ》、ホセ・ルイス・ペレスは《クロス・マルティネ》、パストラーナ夫妻は《クロス・デ・ロバック》、そして、ルネ・バルビエは《クロス・モガドール》を世に送り出した。これにより、今までテーブルワインでしかなかったプリオラートのワインが一躍世界から注目されるワインへと変身を遂げた。

自分で作った母屋20年でプリオラートを世界中に知らしめることになった立役者であり、モダンプリオラートの父、ルネ・バルビエ。ひげを蓄え、仙人さながらの風貌だが、気難しい頑固さは全くない。挨拶を交わして事務所に入ると、書棚から家族のアルバムを引っ張り出し、当時の様子を振り返りながら話してくれた。
 「初めは自家消費用のワインを試しに造り始めた。住まいは、以前の作業小屋を改造し、横には醸造所(ボデガ)も自分達の手で作った。オリーブや果物の木も植えた。池も作った。子育て、新しいブドウの栽培法、醸造法の研究と大変だった。当時この地域はカタルーニャ地方で一番貧しいといわれるところだったが、おかげで土地は安く手に入れることができた。」

1979年購入のガルナッチャの畑 庭先に駐車してあった四輪駆動に乗り込み、ルネ・バルビエ氏の運転でブドウ畑へ。カベルネ・ソーヴィニョン→シラー→ガルナッチャの畑を順に巡る。山の中腹には、バルビエ氏が最初に手に入れたガルナッチャの畑があった。なんと険しい道!舗装もされていない山道を上下に揺さぶられながら、四駆でなければならないことを身をもって体験した。
段々畑の急斜面では、機械が入る隙もなく全て手作業になる。最近は馬を使った畑作業も復活させているそうだ。クロス・モガドールのエチケットはこの畑の風景だ。化学肥料を使った収穫量重視の時代がなかったこの土地は、幸いにも健康そのもの。今でも化学肥料や除草剤は一切使用せず、有機栽培。そして、月の満ち欠けが生命体に与える力を利用したバイオダイナミクス農法を行っている。例えば、枝の剪定を行うのは、下弦の月の間、つまり満月の後から新月になるまでの間で、そうすると生命が安定するそうだ。

クファン couffin醸造法もこの地域に伝わる伝統的な方法を取り入れている。『クファンcouffin』と呼ばれるナイロン製の紐で編んだ丸い座布団のような袋にアルコール発酵を終えたブドウを入れ、このクファンを数枚重ね、垂直に圧力をかけて絞る。この方法で圧搾すれば、流れ出てくるワインになりかけた果汁を味見することができ、絞り加減を見極めやすいという。絞り始めからだんだん味が良くなり、ピークを迎え、絞り過ぎると味が落ちてゆく。クファンはフィルターの役目も果し、固形物を取り除くことができる。その後230リットルのボルドー型木樽でマロラクティック発酵させる。 新樽で16ヶ月間熟成させ、瓶詰めは5月。フィルターを通さず、コラージュも行わない。瓶詰め後9ヶ月の熟成を経てから出荷している。

Clos Mogador 2001 カベルネ・ソーヴィニョン40%
ガルナッチャ40%
シラー20%
カリニャンは僅少
特徴は、プリオラートとしてはシラーが多い。
ボルドータイプの新樽のみで熟成。濃縮された個性。
2001年はまだ飲むには早いが、既に大物の手ごたえを感じる。


Tel:977 83 91 71
closmogador@terra.es


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ ガスパチョ

辻調グループ校 西洋料理教授
人物 肥田 順
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group