N : ちょっと、先生とこは賄いでもええもん食べとったん違う?
先生の研修してたピエモンテ州の料理はすんごいリッチなっちゅーか、グラッソ(脂肪分が多い)なイメージがあるんやけど。
K : とんでもない、賄いはいつも前日の余りもの!
ゆでて余ったパスタを温め直したり、3日くらいたって店で出せなくなった肉料理とか。後は営業中のつまみ食いくらい。でも、たまーにそんじょそこらじゃ食べれないパスタ料理を腹いっぱい食べて日頃の鬱憤をはらしてましたねーっ。これぞ究極の賄い料理、白トリュフのパスタ!
N : えっ、ええ、まぁ。エミーリア=ロマーニャ州でも特にロマーニャあたりの料理は素朴っちゅうか、かなりポーヴェロ(質素)な感じやけど、店の料理、特に賄いはよかったよ。昼はがっつり、夜は軽く食べるって感じやったねーっ。それぞれの担当ポジションからだいたい1〜2品出してくるんやけど、例えばアンティパスト(前菜)からはインサラータ(サラダ)、プリーモ(パスタ、スープ、米料理)からは昼がパスタか米料理で、夜がパスタかスープ。セコンド(肉か魚のメイン料理)からは昼が肉料理と付け合せの野菜料理。
タッキーノ(七面鳥)をよく食べてたような気がするなあ。で、夜は卵料理と野菜料理。夜はセコンドが軽い分、アンティパストの担当が生ハムとかサラミをスライスしてくれてたなあ。後は必ず付いてくるのがフルーツとワイン!
店では料理に合わせてワインのグラス売りもやってたんで、栓の開いた残ったワインなんかが僕らの食卓に登場してたねーっ。
K : へぇー、ほんまかいなぁ。フルコースでめちゃめちゃ豪華な賄いやん。
N : 特にプリーモはうちの地方は手打ちパスタがメインで、このパスタを近所のおばちゃんが作りに来る。おばちゃんて言うたら怒られるけど、このオルネッラさんという人がまさにマエストラ(巨匠)!
まぁ、日本の蕎麦打ち名人のおばちゃんみたいな感じかなぁ。そのオルネッラさんが賄いに作ってくれた料理で特に印象に残ってるのがじゃがいものニョッキ。うわぁー、地味って思うけどこれが抜群。じゃがいもと小麦粉と卵を混ぜ合わせてこねただけのニョッキを、バターとセージ、それにエミーリア=ロマーニャ州特産のパルミジャーノ・レッジャーノ(パルメザン・チーズ)で和えるだけ!
簡単なんやけどうまいっ! 愛情がこもってるんでしょうなぁ。昼の賄いでよく食べたけど、僕にとってこれこそがイタリアでのマンマ(母親)の味やね。でも他のスタッフに言わせると、全員が「自分のマンマが作るのが一番!!」と口を揃えるんやけどねーっ。